③伝統的なもち食文化の伝承~もちのルーツ~

平成8年の「全国もち文化フェスティバル」で展示されたもの。「しとぎ」の原型をとどめている

当地方のもち文化伝承事業の一端として、まず日本のもち文化の起源について考察してみたいと思います。
滋賀県の琵琶湖西岸のまち、志賀町に小野神社があります。そこでは日本で初めてもちつきが行われたとされ、米餅搗大使主命(しとぎつきおおかみぬしのみこと)というもちの神様が祭られています。今でも11月2日には、もちの原型と言われる「しとぎ(粢)」を作って神に捧げるお祭りが行われています。
よく洗って一晩水に浸したもち米をきねで少しずつつき、十分な粘りが出たら丸めて稲わらの包みに入れ、わらの両端をあざなってつるしたものが「しとぎ」。これを、神様に奉納するのです。
古代、水稲栽培の技術が次第に進歩し、全国に広がっていくことで稲作が国の経済基盤の一翼を担うようになると、稲作を中心とするさまざまな暮らしの行事なども生まれ、当地方の年中行事の中にも、もち暦・もち歳時記として色濃く伝承されてきたものと考えられます。

(広報いちのせき平成20年8月1日号)