博物館だより

一通の手紙より 妻の戊辰戦争15

         

慶応4(明治元=1868)年は、江戸幕府崩壊後の政権を巡って、明治新政府と東北諸藩などとが戦った戊辰戦争の年でした。一関藩は本藩の仙台藩に従って「奥羽越列藩同盟」に加盟し、同盟を離脱した秋田藩へ攻め入り、秋田来援の薩摩藩などと戦いました。藩兵、庶民の徴発者合わせて84人の戦死者を出して敗れた、江戸時代の終焉を告げる戦争でした。
ここに一通の手紙があります。戦陣に赴く夫のために金策を依頼した妻の手紙です。
諸役所目付八重柏小左衛門の息子半之丞は、同年5月、太平洋岸の盛岡藩境にある仙台藩領唐丹(現釜石市唐丹町)に国境警備兵として派遣されました。八重柏家は本俸・役料を合わせても、玄米に換算して年13石2斗の実支給しかない下級藩士でした。出兵前の諸々の出費に困っても、連日夜遅くの帰宅では金策も構じかねていました。出兵前々日に至り、万策尽きた妻のたへは、知人の有壁佐藤家に借財を依頼するため使いに手紙を持たせ、5両の借用を願いました。
今年は内職の蚕のできが良く、生糸の売却代で以前の江戸勤務の際の借金とも返済できる。「かねて病身の私どもゆへ、熱事(お灸)絶えじ候あへだ(間)、金ばかりもよけへ(余計)あづ(預)けたく候まま、ぜひぜひ御めぐみ下されたく」(病弱の夫ゆえに金だけでも余計に持たせたいので何とか貸してもらいたい)「たとえはだか(裸)になり候とも八月までにはさしあげ参らせ候」(裸になっても8月までには必ず返済する)と懇願しました。また、夫へは「出じゅん(出陣)で(出)がけにわた(渡)したく候まま、しら(知)せたくなえ(無い)」、また、「こころよく出じゅん(出陣)いたさせたく候まま、おや(親)へしら(知)せじに御か(貸)し」くだされと、夫や親にはくれぐれも内緒でと、繰り返し願いました。佐藤家では家にある金をかき集めて使いに渡し、たへのもとに届けました。
半之丞は、引き続き秋田戦争に藩主の護衛兵として出兵し、生還しました。

一関博物館案内    

テーマ展2 一関藩の戊辰戦争

戊辰戦争から140年目の今年。一関藩と戊辰戦争とのかかわりを諸資料により展示し、郷土と戦争、戦争に巻き込まれた武士・庶民の実状・心情を紹介します。

■会期…9月20日(土)~11月3日(月)

市民放談 一関藩の戊辰戦争

■日時…10月13日(月)13時30分~15時30分

■定員…100人

展示解説会

■日時…10月18日(土)14時~15時※入館料が必要

館長講座「角塚古墳と古墳時代」

岩手県にまで前方後円墳の造営が及んでいたのかと驚かせた角塚古墳。これまで未解明だった歴史的背景に再検討を迫ります。
■日時…9月7日(日)13時30分~15時30分

■定員…50人

市内史跡めぐり気仙沼街道①

金沢宿を基点として気仙沼宿へ通じる気仙沼街道。旧金沢村から富沢村、楊生村へと、街道の面影を探します。
■日時…9月21日(日)9時~15時30分

■定員…25人

■バス乗車…市役所または一ノ関駅前

あなたも刀鍛冶修業

刀鍛冶の道具を使い、五寸釘からペーパーナイフを作ります。
■日時…10月11日(土)13時~16時

■定員…20人(小学5年生以上)

■参加費…200円 

*講座などの申し込みは、電話で先着順

問い合わせ先
一関市博物館 電話 0191-29-3180
ホームページ http://www.museum.city.ichinoseki.iwate.jp

 

 

(広報いちのせき平成20年9月1日号)