博物館だより

戊辰戦争にも従軍した藩士が鍛えた 脇指 銘 明弘(市指定文化財)

明治40年代の宍戸明弘幕末から明治にかけて活躍した刀工、明弘が鍛えた脇指銘「明弘」常設展示室「舞草刀と刀剣」で展示しています

脇指とは、刀身の長さ(鋒と呼ぶ刀の先端から刃の部分と手に持つ部分(茎)の境(区)までの直線の長さ)が30センチ以上60センチ以下の刀剣をいいます。
この脇指の作者明弘は天保12(1841)年、一関藩士大山次郎右衛門の二男に生まれ、通称を登之輔といいました。作刀の師匠は藩士であり刀工の久保田宗明で、刀工名の明弘は宗明の一字をいただいたものと思われます。
入門の時期は不明ですが、宗明自身は安政3(1856)年に刀工免許を江戸で受け、また現存する明弘の刀剣に「一関士大山明弘作元治元年八月吉日」と銘があることから、宗明が江戸から一関に戻って活躍を始めた早い時期に明弘は入門を果たし、元治元(1864)年には刀工として活動していたことが確認できます。宗明そのままの備前伝(平安後期以来岡山県地方で活躍した一大流派の特徴を受け継いだ作風)を得意としました。
慶応4年の戊辰戦争時には、一関藩の甲三番隊銃士として秋田藩との戦争に従軍しましたが、戦後も作刀を続け「明治四年」(1871)の銘を切った刀剣も残されています。明弘はこのころ宍戸家に養子として入り、明治5年に刀工名の明弘を用いて宍戸明弘と名乗りました。
この脇指は、長さ38.3センチ、刀身に角度のついた筋(鎬)がない平面的な姿(平造り)で、刃の反対側(棟)は山形(庵棟)、身幅は広く重ねも厚く、鋒の方まで反りがついています。地肌には細かな板目模様が見え、刃文は碁石が連なった格好(互の目)の中に沈丁花に似た華やかな乱れ刃(丁字)が交じっています。
作刀の時期は不明ですが、師匠宗明作の刀剣に迫る出来を示した一振りです。昭和61年、一関市指定文化財となりました。

一関市博物館だより

テーマ展2 一関藩の戊辰戦争

戊辰戦争から140年目の今年。一関藩と戊辰戦争とのかかわりを諸資料により展示し、郷土と戦争、戦争に巻き込まれた武士・庶民の実情・心情を紹介します。
■会期…11月3日(月)まで

市民放談 一関藩の戊辰戦争

■日時…10月13日(月)13時30分~15時30分

■定員…100人

展示説明会

■日時…10月18日(土)14時~15時

※入館料が必要

館長講座「シルクロードの仏教と伝播」

現地への旅で考えたこと、特に人の動きを考慮して、シルクロードの仏教と伝播について話します。
■日時…11月2日(日)13時30分~15時30分

■定員…50人

あなたも刀鍛冶修業

刀鍛冶の道具を使い、五寸釘からペーパーナイフを作ります。
■日時…10月11日(土)13時~16時

■講師…早坂正義さん(刀匠)

■定員…20人(小学5年以上)

■参加費…200円

化学分析から見た日本刀の成立

「いわての博物館交流セミナー」として、他館との交流により提供します。
■日時…10月26日(日)13時30分~15時30分

■講師…赤沼英男岩手県立博物館上席専門学芸員

■定員…50人

※講座などの申し込みは電話で先着順

問い合わせ先
一関市博物館 TEL0191-29-3180

 

(広報いちのせき平成20年10月1日号)