900年の時空を越えて“平和の心”を世界に

戦から生き残ったものの、7歳の清衡を連れ自害しようと刀を振り上げる母・由加(M7)戦から生き残ったものの、7歳の清衡を連れ自害しようと刀を振り上げる母・由加(M7)
このミュージカルの案内役を務める中尊寺の華蔓から飛び出した架空の鳥、「迦陵頻伽」このミュージカルの案内役を務める中尊寺の華蔓から飛び出した架空の鳥、「迦陵頻伽」
戦いのない平和な世を築いていこうという清衡と自在坊蓮光の呼びかけに応じていきいきと働く民(M16)戦いのない平和な世を築いていこうという清衡と自在坊蓮光の呼びかけに応じていきいきと働く民(M16)
敵将の側室となった母とともに清原邸で暮らす清衡。父の違う三兄弟は一緒に遊ぶものの不穏な空気が漂う(M12)敵将の側室となった母とともに清原邸で暮らす清衡。父の違う三兄弟は一緒に遊ぶものの不穏な空気が漂う(M12)
炎の精が激しく踊り、兵士や民が入り乱れる、前九年の役(M6)炎の精が激しく踊り、兵士や民が入り乱れる、前九年の役(M6)
仙台を拠点に活動する8人の演奏家が上田亨さん作曲のオリジナル曲を時にひそやかに、時に激しく奏でた仙台を拠点に活動する8人の演奏家が上田亨さん作曲のオリジナル曲を時にひそやかに、時に激しく奏でた
時空を超えて美しく開花した中尊寺ハスを表現したテーマソング「枯れない祈り」を全キャストで歌い上げた(M20)
感動の舞台に惜しみない拍手を送る観客感動の舞台に惜しみない拍手を送る観客
舞台を終え、客席に感謝のあいさつを述べる阿部興紀実行委員長(右)舞台を終え、客席に感謝のあいさつを述べる阿部興紀実行委員長(右)
それぞれのキャストが最高の笑顔を見せたカーテンコール

平泉文化の平和思想を発信しようとミュージカル・平泉「夕焼けの向こうに」は3月21、22の両日、一関文化センターで上演されました。市内外から公募で集まったキャスト62人、舞台スタッフ21人らが感動の舞台を作り上げ、約2300人の観客を魅了しました。
この世を浄土にしたいと平泉を築いた藤原清衡を中心に展開された物語は、生演奏の音楽で幕開け。「前九年の役」を母とともに生き延びた清衡は異父弟との争い「後三年の役」を制し、陸奥の国の覇者に。戦いの無益さを感じた清衡は僧・自在坊蓮光ととも中尊寺を建立します。藤原氏は四代泰衡で滅びますが、泰衡の首桶から見つかったハスの種が時空を超えて開花するイメージをテーマ曲「枯れない祈り」にのせ、現代に、平和を祈る浄土思想を力強く伝えます。
二日間とも、前売券は売り切れ大ホールは満員。歴史を伝えるメッセンジャーでありたいというキャストの熱演は観客に届き、「ブラボー」の声援や大きな拍手が送られました。
自在坊蓮光を演じた千葉秀明さん(38)=地主町=は「合唱、ダンスなど一関にはそれぞれ素晴らしいグループがあるが、このような形でまとまったのは素晴らしいこと。まちを明るくする材料になれば」と満足そうな表情でした。
公演は、市内外の文化関係者らによる実行委員会(阿部興紀実行委員長)が主催。仙台市在住の演出家・梶賀千鶴子さんが脚本、演出、振り付けを手がけました。音楽、美術、照明などはプロが手がけ、地元出身のキャストや舞台スタッフを側面から支えました。20年1月の実行委員会発足後、キャストを公募し同4月から練習を開始。約1年、ダンスや歌などのレッスンを積み重ねてきました。
梶賀さんは「世界遺産登録後の公演だったら、単にお祭りで終わったかもしれない。逆に熱い気持ちで取り組むことができた。このミュージカルを、浄土思想を理解する道具として活用してほしい」と願いを込めました。 
これまで劇団四季の公演や第九演奏会、東日本合唱祭などの運営に携わってきた阿部実行委員長。「公募キャストだけでの公演は冒険だったが、平泉のDNAを持つ地域民で演じることに意義があると感じていた。素晴らしい指導者に出会えたから実現できた。(財)地域創造、県、市からの補助金と地元からの協賛金に助けられた」と振り返ります。「この公演を機にミュージカルが市民の文化として根付いてくれれば」と期待を込めます。
8月23日には、本市と交流の深い東京都豊島区での公演も決まっています。浄土思想の平和への祈りが、さらに多くの人に届くように―と関係者は願います。

(広報いちのせき 平成21年5月1日号)