布佐神楽保存会

海外公演もこなす実力派 伝承者が舞い継ぐ技と心

勇壮に「御神楽」を舞う歴代継承者たち

川崎町門崎の布佐児童遊園地付近に「布佐神楽の里」と書かれた石碑が建っています。
布佐神楽の歴史は長く、文久3(1863)年にさかのぼります。千葉忠之丞初代伝承者ら17人が、旧相川村(現一関市舞川)の二人の神楽師から法印神楽の伝授を受けたのが始まり。その後140年以上にわたり、当時のままの形で守られてきました。
「布佐神楽を永久に保存しなければ」と立ち上がった地元の人たちが昭和47年、布佐地区の全世帯を会員とした布佐神楽保存会を結成。昭和53年には旧川崎村の無形民俗文化財第1号の指定を受け、現在は、市の指定無形民俗文化財になっています。
多くの公演を行う同会ですが、一番力が入る舞台は毎年春に行われる地元、石蔵山の熊野神社例大祭です。地元の小学生らは1月から4月まで週1回、石碑の隣の「布佐神楽伝承館」で舞を教わり、例大祭で鶏舞を奉納するのが恒例。4月29日に行われた今年の例大祭では、アトラクションとして神楽発表会が催されました。小学生らは、歴代伝承者が奏でる太鼓や鉦の音に合わせて、見事な舞を堂々と披露しました。
毎年催される岩手県南・宮城県北神楽大会にも参加し、今年5月の大会では2度目の優勝を飾りました。海外公演も積極的に行う同会。平成8年のハワイを皮切りに、11年はシドニー、13年は北京、16年にはパリで演舞をしました。
「神楽大会への参加だけでなく、毎年さまざまな出演依頼があり、来年の予定もすでに入っている。今、太鼓をたたけるのは自分だけなので、伝承していかなければ」と保存会会長の千葉仁一さん。「現在、台本には50本の演目があるが、実際われわれが舞える演目は、20程度。今後師匠の指導を受けながら、演目を増やしていきたい」と意気込みを語ります。
保存会の顧問である9代目伝承者・鈴木光男さんと10代目伝承者・千葉昭男さんは、今も現役で神楽を教えています。歴代伝承者たちは、「車のない時代、隣り町の祭り場まで道具を担いで舞を奉納し、家に帰るころは夜が明けたものだ」と当時を振り返ります。
この日、伝承者たちは「御神楽」を披露してくれました。千葉会長がたたく太鼓の音と、歴代伝承者が鳴らす鉦の音が、会館いっぱいに響き渡りました。

(広報いちのせき 平成21年7月1日号)