花菜油の会

景観形成と安心な食文化 花は観光、油は特産品に

養蜂業者と協力して菜の花畑に巣箱を設置しています

当地方でも古くから栽培されてきた菜の花。花や葉は食用に、種から搾る菜種油は食用、灯火に使われてきました。一面黄色に群生して咲く花が市民の連帯と協調を表していると市の花にも制定されています。
この菜の花を地域づくりに活用しているのが、大東地域を拠点に活動する「花菜油の会」(石川シゲ子代表、会員86人)。新市合併後には同会が中心となって新たに「菜の花ネットワーク一関」も組織。全国的に展開されている取り組み「菜の花プロジェクト」に賛同し、菜の花の栽培、菜種油の生産、菜種油粕肥料の生産、油粕肥料を活用しての菜の花栽培と地域内での資源循環システムを構築しています。
活動は、現在の会員の一人が栽培していた菜の花に着目したことがきっかけ。「田を荒らすよりは」と栽培に手間がかからず、花がきれいで、おいしい菜種油が採れる菜の花を栽培する取り組みが平成13年に始まり、15年に同会が設立されました。
菜の花の栽培は9月、種をまくことからスタート。寒い冬を経て3月から4月上旬にかけて、花のつぼみが見え始めます。4月下旬から5月にかけて、花が開花。棚田沿い、リンゴ畑沿いなど、景観に配慮して作付けしているので、満開時には絵のように美しい農村景観を作り出します。花の季節には同会主催の菜の花写真コンテストに応募しようと、菜の花マップを手にした人たちが市内外から訪れます。
昨年からは、養蜂業者と協力し、菜の花畑にハチの巣箱を設置。菜の花の香りがするはちみつ「菜の花」を販売しています。
初夏の7月に刈り取り、9月下旬ごろまで乾燥・調整した菜種を、10月上旬ごろから地元の搾油所「工房地あぶら」で搾油。瓶詰めした菜種油の半分は生産者が自家消費し、残りは市内外の産直施設などで販売しています。
菜種油を使った料理講習会も行う同会。事務局を務める熊谷繁弘さんは「菜種油はさらっとしていて、胃にもたれない。とてもおいしい油なのでぜひ食べてみてほしい」と呼び掛けます。本年7月には市の地域おこし事業を活用し、食品に含まれる添加物について食生活と健康を考える食育講演会を開催し、好評を得ました。
岩手県食の匠でもある石川代表は「菜の花の栽培と菜種油の生産は、食の安全・安心、食の豊かさにつながる。自分たちの活動が広がることで、農村の活性化推進の手伝いになれば」と思いを語りました。


(広報いちのせき 平成21年11月1日号)