鉄五輪塔地輪 花泉町

涌津八幡神社に現存する鉄五輪塔地輪。正面に2頭の狛犬が刻まれている。昭和55年6月、国の有形文化財に指定。

五輪塔とは、鎌倉時代後期から現在まで造られている仏塔の一種で、上部から宝珠、半月形、三角形、球形、方形の5つの部材を組み合わせて形成されています。それら5つのおのおのは、宇宙の構成要素として考えられた古代インドの五大思想に基づく「空・風・火・水・地」を表現しています。
この涌津八幡神社に所在する鉄五輪塔地輪は、106.0センチ四方、高さ78.2センチ、正面に阿吽の2頭の狛犬、側面には銘文が刻まれており、鉄製の地輪としては国内で最大のものです。この銘文中には、建長6(1254)年10月に40余人の衆徒が発願し、文永5(1268)年5月25日に沙弥西信という僧がこの塔を造立勧請したことや、仏法の道を描き僧としての誠を施すために1丈1尺(約3.33メートル)の五輪塔をつくったなどの五輪塔建立の趣旨(願文)が漢字で書かれており、鎌倉時代に建立されたものであることをうかがい知ることができます。
もともとは涌津の市街地から約500メートル東方の田んぼの中の森「五輪堂」の地に建立されたこの五輪塔は、後に地輪のみが発見され、これを正徳年間(1711~1715)に現地に移したもの。明治28(1895)年の神社の火災による焼損や、経年劣化により表面にさびが生じたため、昭和47年文化庁の指導により防湿処置を施しました。その後、53年の宮城県沖地震で大破しましたが、翌年東京文化財研究所修復技術部によって修復され、現在に至っています。
弁慶が背負った笈(修験者などが仏具・衣服・食器などを収めて背に負う箱)であるとも、蒙古襲来に当たってそれを防ぐための祈願であるとも言い伝えられるこの文化財は、現在も地域の宝として継承されています。

問い合わせ先
花泉支所教育文化課 電話0191-82-2909


(広報いちのせき 平成22年2月1日号)