永澤寺石仏三十三観音像(千厩町)

鮮やかに彩色された永澤寺の石仏三十三観音

千厩町磐清水字荻生田の永澤寺本堂には、江戸時代中期の享保年間(1716~1736)の作と伝えられる石仏三十三観音像が安置されています。これらの観音像は、高さは59.7~64.2センチ、幅は24.7~28.8センチ、厚さは11~20.4センチで、いずれも石灰岩前面の縁を面取りして平滑に仕上げ、観音像を浮き彫りにしています。形状は舟形、彫りは薄肉彫りで朱・緑青・金を用いて鮮やかに彩色されており、その保存状態も比較的良好です。
三十三観音信仰は、「三十三応現身」の教えに基づくもので、観音菩薩があまねく衆生を救うために変化した三十三の姿であるといわれているもの。この石仏群も楊柳観音や龍頭観音をはじめとした多様な三十三体の観音で構成されています。
千厩町と隣接する室根町においても、安永5(1776)年に奉納された「室根山石造三十三観音」が現存していることから、江戸中期に日本に広まったとされるこの信仰が、当地方にも息づいていたことをうかがい知ることができます。
平成11年、旧千厩町教育委員会が岩手県立博物館に調査を依頼し、詳細な調査が行われました。その結果、全国的にもあまり類例のない石仏群であるとともに、美術的な面でも石彫彩色仏として貴重なものであることが判明し、12年3月、千厩町有形文化財として指定されました。現在は、市の指定文化財として引き継がれています。

問い合わせ先
千厩支所教育文化課 電話0191-53-3979

(広報いちのせき 平成22年3月1日号)