200年前の農村を克明に表現~南小村絵図(旧千厩町)

南小梨村絵図昭和50年代に撮影された航空写真

この絵図は、年号や村の概要を示す記述部分が欠けていますが、佐藤勇右衛門(一関藩士・上油田村出身)が文化14(1817)年に作成したものと考えて、ほぼ間違いありません。

絵図作成の事由を記した文字が一部残っており、他の村の絵図と比較して同じ内容であることと、絵柄の表現が同じだからです。

絵図の部分的欠損は、伝来するなかで生じたものでしょう。

絵図には、狼川原宿(宮城県登米市東和町)から藤沢宿、南小梨村、北小梨村、釘子村、新城村を経て気仙沼宿への街道が記されています。

また気仙沼街道の千厩宿から分岐して北小梨村、南小梨村、津谷川村を経て津谷の宿に通ずる街道が記されており、千厩みなみ交流センター付近は二つの街道の交差点となっていました。

村の中心に位置するこの場所は、東から西に延びる丘陵上に「志の舘」「中舘」「西舘」と三つの郭を持つ中世の城館があり、南小梨城跡と呼ばれています。

「西舘」の西隣には「常楽寺」があり、現在に至っています。

元禄11(1698)年の東山絵図にも、「古舘」と「常楽寺」が記されています。

勇右衛門の描いた絵図は、村内の屋敷、寺、神社、仏閣などを細かに拾い出して記載している点が大きな特徴といえます。

一関藩の他の村々においても、同様の描き方をしています。

昭和50年代後半に撮影された航空写真(中心部)と比較してみると、部分的に街道をたどることが可能で、中世の館跡も確認できます。

現在の集落の並びと当時の屋敷の配置が、大きく違わないことも見て取れます。

航空写真に撮影された範囲を、推測しながら絵図に表示してみると、大きく形がゆがんでいます。

村の情報は豊富であるものの、縮尺や面積といったものを重要視したのではなく、「村にあるモノの情報」を重点的に記録したものと推測されます。



一関市博物館案内

電話0191-29-3180 ホームページhttp://www.museum.city.ichinoseki.iwate.jp※講座などの申し込 みは、電話で先着順

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(広報いちのせき 平成22年8月1日号)