市民の不安解消へ向けた新たな取り組みをスタート

福島第1原子力発電所の事故で放出された放射性物質による放射能汚染で、
市は新たに簡易型放射線測定器250台、放射性物質を測定する機器を4台購入。
これらの機器を活用し、市民の不安解消へ向けた新たな取り組みを始めました。

放射線測定器の無料貸し出しを開始


市はこのほど、行政区・自治会などに対し、簡易型放射線測定器を無料で貸し出すことにしました。
身近な生活空間、通学路や地区内でよく子供たちが遊ぶ広場などの線量を市民自らが測定し、日常の生活行動に役立ててもらうものです。

貸し出しする測定器は、市が空間線量の測定に使用している機器と同じもので、新たに250台購入しました。

対象は、行政区、自治会と市内に所在する事業所で、行政区や自治会は1週間、事業所は半日、自由に測定してもらっています。
測定器を返却する際には、測定した区域や世帯の測定結果を市に報告してもらい、市内の詳細な状況把握に役立てることにしています。

貸し出しは、事前予約が必要です。行政区長・自治会長は電話予約した上で、貸し出し当日、申請書を記入し機器を受け取ります。
貸し出し窓口は▼本庁震災相談総合窓口(0191-21-2111)▼花泉支所地域振興課(0191-82-2211)▼大東支所地域振興課(0191-72-2111)▼千厩支所市民課(0191-53-2111)▼東山支所市民課(0191-47-2111)▼室根支所地域振興課(0191-64-2111)▼川崎支所市民課(0191-43-2111)▼藤沢支所市民課(0191-63-2111)―です。

学校給食の食材などを測定へ

資料:給食調理施設資料:配膳の様子

福島第1原子力発電所の事故で放出された放射性物質がもたらす人体への影響、特にも子供の健康に対する不安を少しでも和らげようと市は、学校給食に使用される地元食材と提供した給食のサンプリング測定を開始することにしました。

市は、食品などに含まれる放射性物質を測定する機器4台を独自に購入。消費者庁から借りた1台と合わせ5台の機器を北部・南部農業技術センターなどに設置し、測定の準備を行っています。

測定の対象は、学校給食に使われる地元食材と、市内13カ所の給食調理施設で提供された給食(毎週1食)。機器の準備ができしだい12月中にも測定を開始することにしています。

食材の測定結果は、その食材を使用した給食が提供される前に、給食の測定結果は提供日の翌月にそれぞれ学校を通じて保護者お知らせするほか、市のホームページにも掲載します。

また、この測定機器は今後、清掃センターの焼却灰、産直で販売される野菜、井戸水などの測定にも活用することにしています。

 

  (画像は資料)

農家の現状はぎりぎり。計画策定を急ぐ

福島第一原子力発電所の事故に伴う汚染稲わらの一時保管に関する住民説明会を行った市は、寄せられた意見や要望を集約。あらためて保管計画を地元に提案するための作業を進めています。
一方、一関地区広域行政組合は、汚染牧草の焼却についても試験焼却結果の説明会を開催。
本焼却に向けた計画策定を急いでいます。

汚染稲わらの一時保管

原発事故で放出された放射性物質による汚染稲わらの一時保管について市は、保管候補地に想定する市内4カ所の地区住民への説明会を行いました。

説明会で市は、これまでの経緯、保管期間や方法を説明。農家の経営や健康が懸念される現状を踏まえ、一日も早く隔離保管していく必要があることに理解を求めました。
説明に対し住民からは、汚染稲わらを運び込むことで広がる風評被害や一時保管施設の安全性への懸念の声が多く寄せられました。

保管施設の安全性などについて市は「東日本大震災クラスの地震にも耐えられる構造。(放射線の)低減策については、コンクリートで囲むことにより遮へいする」と説明。地元農産物などへの風評被害については「食品に含まれる放射性物質の測定機器を購入して測定する。測定結果を生産者が理解し、正しい情報や安全性をしっかり発信していくことで防ぐことができると考えている」と理解を促しました。

4地区の説明会を終えた市は今後、寄せられた多くの意見や要望、不安の声を集約し、地域の状況を勘案した中であらためて一時保管計画を地元住民に説明するなど、早期の一時保管実施に向けた取り組みを行っていくことにしています。

汚染牧草の焼却

10月に5日間にわたって行われた汚染牧草の試験焼却結果がまとまりました。

試験焼却で出た灰の放射性セシウムの濃度は1キログラムあたり最大で2500ベクレルと一関地区広域行政組合が設定した推定目標値をクリア。
排出ガスから放射性物質は検出されませんでした。

焼却灰の精密検査の結果によると、灰の放射性セシウム濃度は20日焼却分が最大の2500ベクレル、24日焼却分が最小の1990ベクレルで、いずれも国が示した埋め立て処理可能な8000ベクレル以下の基準と同組合が定めた4000ベクレルの推定目標値を大きく下回りました。

また、試験中に大東清掃センター周辺で測定された空間放射線量にも大きな変化はありませんでした。

これを受け同組合は、焼却を行う大東、灰を埋却する東山の両清掃センター周辺の5会場で試験焼却結果の説明会を開催。
試験焼却の結果を踏まえ、本焼却の計画を策定した上で再度説明会を開催することなどを説明しました。

説明に対し住民からは「国が定めた基準ではなく、一関独自の厳しい基準を設けてほしい」「万一事故があった場合の対応は」などの要望・質問が出されました。
同組合は「焼却には国の基準ではなく推定目標値の4000ベクレルを基準としたい」「何らかの事故があった場合にはすぐに炉を止める。定期補修など安全管理も十分行いたい」と回答。「何より情報公開が大切。いい情報も悪い情報も包み隠さず提供していきたい」と強調しました。

市内の農家が保有する汚染牧草は約1600トンに上り、同組合は「市内の汚染牧草は量が多く、実現性があるのは焼却処分。本焼却の計画を早く策定し再度説明会を開催したい」と早期の焼却処分実施に向け準備を進めています。

被ばく線量減少へ。公共施設などでも除染

公共施設など一斉測定

公共施設などの一斉測定は10~11月にかけて、市内の公共施設291施設、公園131施設、自治集会所など413施設の計835施設で行われました。

測定の結果、各公共施設などの玄関前や駐車場の中央付近で毎時1マイクロシーベルトを超えた施設はありませんでした。
一方、比較的高い放射線量が示される地点として測定した雨どいの排水口付近などの地表面(測定高1センチ)で、局所的に毎時1マイクロシーベルトを超える部分がありました(353施設。測定値の最高は毎時10・8マイクロシーベルト)。
この結果を踏まえ市は、毎時1マイクロシーベルトを超える測定箇所がある公共施設や公園で洗浄や表土を剥ぎ取り、同敷地内に埋設するなどの低減対策を開始しました。

また、毎時1マイクロシーベルトを超える箇所がある自治集会所などについては、状況や方法の説明、必要な物品の手配を市が行った上で、地域住民の協力を得ながら低減対策を実施することにしています。
除染までの間は、子供たちが近づいて遊んだりしないようお願いしています。

市は、今後もきめ細かい測定を行い、簡易型放射線測定器の貸し出しに伴う報告と併せて市内の空間線量の詳細な状況を把握し、対策に役立てることにしています。 

問い合わせ先
一関市災害対策本部 TEL0191-21-2111

市内における放射能汚染状況調査および低減対策の取り組み状況

■第1回一斉測定

6月に実施。市立小・中学校、私立を含む幼稚園・保育園の全111施設の校園庭の中央部1カ所の放射線量を測定(測定高1、50)。

■継続測定

7月から実施。市消防本部内の各消防署では毎日、各地域1校(園)・公園2施設・体育施設1施設では毎週測定。

■第2回一斉測定

7月に実施。対象施設は第1回と同じ111施設。雨水の集まる軒下や雨どいの排水口などを測定(測定高1、50)。測定高50で毎時1マイクロシーベルトを超える値が検出された4施設では、表土の入れ替えなどの低減対策を実施。

■第3回一斉測定

8月に実施。対象施設は第1回と同じ111施設。より詳細な状況を把握するため、屋外5カ所(測定高1、50、5)、屋内1カ所(測定高50)と測定箇所や測定高を増やして測定。全ての施設で毎時1マイクロシーベルトを下回った。

■第4回一斉測定

9~10月に実施。対象施設は第1回一斉測定の施設に児童クラブ、無認可保育所、事業所内保育所を加えた138施設。放射線量が局所的に高い値を示す場所を重点的に測定(測定高1と1または50)。92施設489カ所で、局所的に毎時1マイクロシーベルト以上の値が検出された。11月末までに70施設の低減対策を実施した。

■公共施設等一斉測定

10~11月に実施。これまで未測定だった公共施設、公園、自治集会所の835施設が対象。放射線量が局所的に高い値を示す場所を重点的に測定(測定高1、50、1)。353施設820カ所で、局所的に毎時1マイクロシーベルト以上の値が検出された。これらの施設については今後低減対策を実施することにしている。

平野復興担当相が畜産農家を視察

平野達男復興担当相は11月27日、市内花泉町を訪れ、汚染稲わらやたい肥などの処分に苦慮している畜産農家の実情を視察し、勝部修市長と会談しました。

飼育牛の出荷自粛が続き、原発事故後に収集された稲わらがラッピングされて積まれている一方、新たなたい肥を入れられない畜産農家の現状を目の当たりにした平野氏は「このままにしておくわけにはいかない。環境省で処分の工程を作っている」と語りました。

市役所で平野氏は勝部市長と会談。勝部市長は「農家の健康も懸念される。一刻も早く稲わらを隔離したい。最終処分に向けた道筋をはっきり示してほしい」と求め、▼処分方法の指導と財政支援▼学校、保育所における給食食材の安全確保と健康不安への対応▼復興支援道路の整備促進―を求める要望書を平野氏に手渡しました。

会談後平野氏は「できるだけ農家の負担にならないようにやっていきたい。市も一時保管場所確保で苦労されているが、できるだけ早くまとまってほしい。一日も早く処理できるよう環境大臣にお願いする」と述べました。


放射線測定情報はこちらから

●市ホームページ「環境放射能に関する情報」

 http://www.city.ichinoseki.iwate.jp/index.cfm/1,0,157,html

●岩手県のホームぺージ http://www.pref.iwate.jp/

 「環境放射能に関する情報(福島第一・第二原子力発電所事故関係)」
 「一関市における水道水の核種別放射能濃度の測定結果について」など

今後の放射能対策の取り組みについて

9~10月にかけて文部科学省は、原発事故により放出された放射性物質の影響を広域に把握するため航空機モニタリング調査を実施。
11月に発表された調査結果によると、市内には地上1メートルの高さで毎時0.23マイクロシーベルトを超えるエリアがあることが確認されました。
これを受け市は、放射能対策に係る財政支援や指導を国から受けるため、汚染状況重点調査地域の指定を希望し、12月中に指定を受ける見通しです。

指定後、国の指導を得ながら「いつまでに生活圏の放射線量をどの程度まで低減させるか」という目標や、子供たちの生活環境の除染を優先することなどの優先順位、実際に除染する地区などを定めた除染計画策定を年度内に進めます。

除染の取り組みに向けた流れ

放射性物質汚染対処特別措置法
基本方針の閣議決定(11月11日)

重点調査地域の指定
(12月中)

市の除染実施計画策定
(24年3月中)

除染の取組み
(24年4月~)

震災時の乗客対応で市などに感謝状

JR盛岡支社の森崎鉄郎営業部長は10月24日、市役所を訪れ、東日本大震災の際に乗客や駅利用者約2000人に避難場所を提供した市とNPO法人一関文化会議所に感謝状を贈りました。
森崎部長は「大変お世話になりました。観光客、ビジネス客、駅利用者に毛布や食料を提供していただき、本当にありがたかった」と謝意を示しました。
勝部市長は「当然のことをしただけ」と当時の対応を振り返りました。

今後の放射能対策の取り組みについて
左からJR盛岡支社森崎営業部長、小梨一関文化会議所理事長、勝部市長

(広報いちのせき 平成23年12月15日号)