ゾーニングで機能的な市街地に

県内2番目の面積と人口を誇る一関市。
居住地域も市街地から山間地まで幅広い。
市は、JR一ノ関駅周辺エリアを対象に、中心市街地形成の基本方針となるグランドデザインを描いた。
人と人とを結び、現在から未来へとつながる市街地とは?
中東北の拠点として、世界遺産平泉の玄関口として中心市街地を形成するコミュニティーを考える。

ゾーニング構想を打ち出して中心市街地の再生を

複数のコミュニティーが共存する商店街は、本来、強い生命力を持っている。

一関市は岩手県南・宮城県北の中核都市として古くから発展してきた。
JR一ノ関駅西口から広がる市街地は、多くの店が建ち並び、たくさんの人が往来した。

だが、近年は、郊外型大規模集客施設の立地や商店主の高齢化などにより都市機能が低下し、かつての賑わいは薄れつつある。

このような状況を打開するため市は、JR一ノ関駅から大町、地主町、さらには市役所、県立磐井病院跡地を含むエリアを対象に、中心市街地形成の基本方針となるグランドデザインを描いた。
「一関地域中心市街地ゾーニング構想」である。

ゾーニングの整備は、勝部修市長が掲げる目玉事業。
磐井川の堤防改修事業を機に、公共施設の再配置を含め、市街地を機能別にとらえて活性化を進めていく。
市民で構成する中心市街地ゾーニング検討委員会(畠中良之委員長、20人)と市が協働で検討を重ねたほか、一関商工会議所などからの提言も反映させた。

具体的には、JR一ノ関駅を核にその周辺を「情報発信ゾーン」に、一関文化センター周辺を「ふれあい交流ゾーン」に、旧磐井病院跡地周辺エリアを「保健福祉・行政ゾーン」に設定し、中東北の拠点として、世界遺産平泉の玄関口としてふさわしい風格ある市街地形成を目指す。

大事なことは各ゾーンが役割を果たす機能する市街地

山目町で安政年間から続く老舗「尾上屋呉服店」を営む畠中委員長は、ゾーニング構想の役割について「外に対する戦略的な情報発信と内(ゾーン)に住む人の誇りの醸成」と語る。
市民にすれば、否応なくゾーニングされてしまう、「だったらわくわくするような楽しい地域にしよう」というわけだ。

かつて、柵ノ瀬橋付近は、北上川の舟運の要衝として栄えた。
だが、鉄道の発展とともに舟運は衰退、にぎわいを失った。
山目の商人たちは生き残りをかけて外商に出た。

「『客を待つ』から『売りに行く』商売へと戦略を変えた。外でも商売できる粘り強い店をつくった」と畠中委員長。
屋上呉服店には、150年前のたくましいDNAが今なお、しっかり受け継がれている。

客から愛されて強くなる。
強くなることで集客力はさらに高まる―これが商売の法則だ。「商店を再生させる、商店街のにぎわいを取り戻す特効薬はない。だが、消えた店がある一方で元気に頑張っている店もある。ゾーニング構想が市街地活性化のきっかけになることは理想だが、それとは別に商店個々の努力も必要」と冷静に分析する。

商店、企業、住宅や公共施設が林立する市街地は多面的な機能と役割を担い、複数のコミュニティーが共存する。
言い換えれば、それぞれが機能すれば、相乗効果で飛躍的に発展する可能性を秘めている。

「行政任せではなく、自立することが大事。そこに再生の糸口がある。そのためには、自分たちで予算を立て、執行する仕組みがほしい。行政の支援と理解が不可欠だ」

確固たる決意で明日を見る。

◎保健福祉・行政ゾーン

磐井病院跡地周辺がエリア。
市や県の行政機関の連結した保健福祉サービスが期待される。
磐井病院跡地への保健センター、八幡町・あおば統合保育園、子育て支援センターなど保健・福祉機能を集約・整備する

◎情報発信ゾーン

駅周辺から東北本線沿いの北側がエリア。
多様な情報発信機能や世界遺産「平泉」の玄関口としてのガイダンス機能を発揮する。
「食」、「酒」や「音楽」といった地域資源を活用したにぎわいの創出が期待される。

◎ふれあい交流ゾーン

一ノ関駅から西に伸びる上の橋通りと地主町に挟まれた市街地の中心区域がエリア。
あらゆる世代の市民、観光や仕事で訪れる人との交流、歴史・文化や自然を生かした潤いと安らぎのある空間の創出などが役割。

◎その他

情報発信ゾーンの中には、地域資源を情報発信する「旨(うま)いもん特区」、ふれあい交流ゾーンの中には点在する歴史的建造物などを散策しながら楽しむコースとして「田村歴史の小道」もそれぞれ設定している。

1ふれあい交流ゾーンは市街地の中心区域がエリア。旧ダイエーの建物を利用した「新鮮館おおまち」などがある大町通り商店街はその中核

ふれあい交流ゾーンは市街地の中心区域がエリアだ。
「わくわくするような楽しい地域をつくりたい」と語る中心市街地ゾーニング検討委員会の畠中良之委員長

2磐井病院跡地には保健・福祉機能を集約 3隣接地に移転した家庭裁判所・簡易裁判所の跡地は公園として憩いの場に 
4JR一ノ関駅周辺は情報発信ゾーンとしてインフォメーション機能を担う 5大規模な堤防改修事業に伴い磐井川河川公園も整備 
1_ふれあい交流ゾーンは市街地の中心区域がエリア。旧ダイエーの建物を利用した「新鮮館おおまち」などがある大町通り商店街はその中核/ 2_ 磐井病院跡地には保健・福祉機能を集約/ 3_ 隣接地に移転した家庭裁判所・簡易裁判所の跡地は公園として憩いの場に/4_JR一ノ関駅周辺は情報発信ゾーンとしてインフォメーション機能を担う/ 5_ 大規模な堤防改修事業に伴い磐井川河川公園も整備

INTERVIEW
船生律子さん

船生律子さん Funaoi Ritsuko
中心市街地ゾーニング検討委員会委員
主婦 59歳 三関

市街地に機能を持たせることはとても良いことです。
特徴あるゾーニングは市民意識の醸成につながるし、観光客にも説明しやすくなります。
まちづくりに市民の気持ちを向かせることもゾーニングの大きな役割。
同じ方向に気持ちが向けば、自ずとコミュニティーがまとまり、市街地も賑わっていくと思います。
玄関口の駅を中心に東西自由通路が実現すれば、多くの人が行き交うようになり、新しいコミュニティーの誕生も期待できます。

いちのせきの広報誌「I-style」1月1日号