2012 年は「地域を守る」年だ一関市長 勝部修

東日本大震災、平泉文化遺産の世界遺産登録、藤沢町との合併など、2011年は激動の一年だった。
「絆」、「コミュニティー」など人と人とのつながりやその大切さを再認識した年でもあった。
新たな年の幕開けに、勝部市長が2012年を展望する。

―東日本大震災の復興で特に意を配したことは?

2010年12月に新祭畤大橋が完成し、08年の岩手・宮城内陸地震の復旧工事が終わった。
ようやく本格的な復興に向け、取り組んでいこうとしていた矢先に、東日本大震災が発生した。

市内でも住宅宅地、亜炭抗、農地などに甚大な被害が出た。
被災者の住環境を第一に考え、民間の賃貸アパートを仮設住宅と同等に取り扱えるよう国などに要望した。

被害を受けた家屋は6千棟を超えた。
市職員だけで調査するには限界があり、東京都豊島区、兵庫県赤穂市、和歌山県田辺市から駆けつけた職員に応援してもらった。
延べ100人にも及ぶ支援に心から感謝している。

―沿岸被災地の後方支援をいち早く開始した当市。今後の支援は?

陸前高田、気仙沼両市と一関市は古くから交流が盛んで、特別なつながりがある。
陸前高田市の皆さんには震災発生後、大東町へ避難してもらった。
大原公民館では炊き出しや入浴などの支援をした。
興田公民館には一関市医師会の協力を得て医師を派遣、医療を必要とする人を診療した。

気仙沼市内の避難所には人工透析が必要な人がいた。
送迎バスを出して県立千厩病院で処置をしてもらった。
両市への後方支援は、隣接自治体の使命であると考え、決断した。

職員には、身内が被災したという気持ちで何をすればいいのか考えるよう話し続けている。

今後は「3つのつながり」を考えている。
共通するのは「お互いさま」の関係。
一つは「住民と住民」のお互いさま。
震災直後は、住民の皆さんが沿岸被災地へ出向き、炊き出しをしたり、救援物資を提供したりした。
現在はイベントを催したり、仮設住宅に足を運んで交流したりと、互いに触れ合う活動などが行われている。

2つめは「行政と行政」のお互いさま。
職員の派遣もその一つ。陸前高田市には、常時11人の職員を派遣している。
それぞれが市役所で中心的な存在として頑張っている。

3つめは「企業と企業」のお互いさま。
企業同士のお互いさまが広がっていけば、復興は加速していくと信じている。

―東京電力福島第一原子力発電所の事故に伴う放射能汚染に対し、最優先で取り組むことは?

まず、一関の放射線量が高いことを裏付ける信頼できる初期情報が得られにくかった。
稲わらから非常に高いセシウム値が検出され、一時、肉牛が出荷できなくなるなど深刻な状況になった。

最優先すべきは、子供たちの健康を守ること。
学校関係を中心に測定を始めた。
測定高も1センチメートルまで下げた。
高い数値が出るのはやむを得ない。
大事なことは、高い数値が出た場所を徹底的に除染して、一関の子供たちが安心して生活できるようにすることだ。
線量計の貸し出しもしている。

公共施設や地域の集会施設も測定した。
除染が必要な場所は、地域と協力しながら進めたい。

放射能汚染の問題は、長い取り組みになるだろう。
正しい知識を身に付けて適切に対処していくことが重要だ。
市民の皆さんにも理解と協力をお願いしたい。

―防災を考える上で最も重要なことは何か?

地域コミュニティーだ。
コミュニティーがしっかりしていること、それ自体が防災対策だと思う。
「自助、共助、公助」という言葉がある。
日本は公助に頼る部分が多い。
自助を高めるためには、自主防災組織の実効性ある活動が大切だ。
それぞれのコミュニティーで、ぜひ話し合ってほしい。

東日本大震災では、沿岸部の情報収集にコミュニティFM放送が活躍した。
停電時にはテレビも電話も使えない。
災害時に地域の情報を詳しく発信できるコミュニティFM放送は大変効果がある。

春に開局する一関コミュニティFM放送には、防災分野でも期待している。
市の施策の一つ「災害に強いまちづくり」を進める上でも大きな柱になる。
このほか防災情報伝達システムのネットワーク化、消防関係の施設の整備も前倒しで進めていく。

―世界遺産「平泉」の玄関口の一関市。中心市街地の形成をどのように進めていくか。

一関市長 勝部修私が以前から関わってきた平泉の文化遺産が世界遺産に登録された。
大変うれしいニュースだ。

「中心市街地ゾーニング構想」は、現在ある施設の再配置を含め、市街地を機能別にとらえて活性化していこうというもの。
平泉という、この地方のブランドを中心に、「一関の市街地形成をどう進めたらよいのか」を、構想策定当初から市民の皆さんと協働で検討してきた。
今年は、この構想が具体的に動き出す。

―藤沢町と合併しパワーアップした一関市。市民の皆さんへメッセージを

藤沢町と合併し、面積、人口共に県内2番目の規模になった。
旧藤沢町は住民自治に支えられた独自の施策を進めてきた。
地域医療など見習うべき部分が多い。
早々に移動市長室で住民の皆さんと懇談したい。

2012年は「地域を守る」年だ。
災害から地域を守る、人口減少から地域を守る、高齢化社会から地域を守る。

「挑む」という字は、「兆し」をつかんで「手」を打つと書く。
逃げずに「挑む」スタンスでまちづくりを進めたい。

地域を守る一年に。兆しをつかみ挑む
Profile

かつべ・おさむ
1950 年一関市千厩町生まれ。
亜細亜大学法学部卒。74 年岩手県庁入庁。
総合雇用対策室長、総合政策室長、県南広域振興局長などを歴任し、09年10月の市長選で初当選。
市内在住。61 歳。

いちのせきの広報誌「I-style」1月1日号