平泉町、奥州市と共に放射性物質汚染状況重点調査地域に指定

福島第1原子力発電所の事故による放射能汚染で、市は平泉町、奥州市と共に放射性物質汚染対処特別措置法に基づく「汚染状況重点調査地域」に指定されました。
これにより、国からの財政支援を得て除染することが可能に。
市は、必要な除染計画の策定に着手しました。

除染計画策定に着手 24年度から除染開始へ

文部科学省が行った航空機モニタリングで空間線量率(地上1メートル)が毎時0.2~0.5マイクロシーベルトの地域があることが分かった当市。
年間1ミリシーベルト(毎時0.23マイクロシーベルト)以上の地域がある場合は特別措置法に基づく重点調査地域の対象となるため、市は「汚染状況重点調査地域」指定を環境省に希望していました。

これを受け環境省は昨年12月28日、指定する市町村を正式に決定。
当市と同様に指定を希望していた平泉町、奥州市と共に全域が重点調査地域に指定されることが決まりました。

市は、年明け早々から除染計画の策定に着手。
23年度中に国、県の指導を受けながら計画を立て、24年度から除染に取り組む予定にしています。

計画では▼いつまでに生活圏の放射線量をどの程度まで低減させるかという目標▼子供たちの生活環境の除染を優先するなどの優先順位▼実際に除染する地区▼除染の方法―などを定めることになります。

重点調査地域に指定されたのは全国で102市町村。
当市に隣接する宮城県栗原市(全域)も含まれています。

学校などの低減対策と給食・食材などの測定

市は、9~10月に実施した学校などの一斉測定の結果を踏まえ、局所的に毎時1マイクロシーベルト以上の値が検出された92施設の低減対策を行っています。

さらに、児童生徒の安全確保に向け12月13日、給食、地場産の野菜や果物などの食材に含まれる放射性物質の測定を開始しました。
これまで食材は、県が行うサンプリング検査を基に安全性を確認していましたが、保護者らの「より多くの品目の検査を」という強い要望に応えたもの。

市は、国の暫定規制値の5分の1(1キロ当たり100ベクレル)を食材の使用の目安に設定。
この目安を超える食材は使用せず、別食材での対応やメニューの変更などの措置を講じます。

学校などにおける低減対策、給食および食材の測定結果については、市公式ホームページなどを通じて随時公表し、保護者の不安を取り除くことにしています。

窮境打開へ一歩前進

一関地区広域行政組合は12月10日、同組合が管理・運営する大東清掃センターの公害防止対策協議会を開催。
10月に実施した試験焼却の結果を踏まえて策定した「放射性物質を含む牧草の焼却計画」を示しました。

協議会の冒頭、一関地区広域行政組合管理者の勝部修市長は「試験焼却の結果、安全な焼却が可能と判断した。市全体の問題でもあり、計画に理解いただきたい」とあいさつしました。

計画には▼放射性物質の除去に有効なろ過式集塵じん機を備えた同センターの焼却炉を使う▼1日5トンを目安とし、作業期間は2年間をめどとする▼焼却炉は24時間体制で監視し、異常事態が生じた場合は直ちに焼却を中止する▼焼却灰の放射線濃度は国の基準の半分(4000ベクレル)となるよう調整し、東山清掃センター最終処分場に埋め立てる―ことなどが盛り込まれています。

また、汚染牧草の運搬の方法、一時保管・裁断などを行う作業場を設置する計画も併せて説明したほか、排出ガス、排水に加え、空間線量などの環境モニタリング、市民への情報提供の方針などについても説明しました。

これに対し委員からは、計画全般に関する質問や意見が相次ぎ「情報提供はホームページだけでなく、誰もが確認できる方法は考えられないか」といった要望も寄せられました。
勝部市長は「放射能問題に関する情報は在庫を持たず全て開示する」と述べ、これまで通り情報開示を徹底する姿勢を強調しました。

同組合と市はその後、両センター周辺の住民に対する説明会を開催。
計画に対する理解を求めました。
今後、作業場の準備ができるのを待って焼却を開始することにしています。

大槌のがれき受け入れ

大東清掃センターは12月9日、県の委託を受けて東日本大震災に伴う津波で甚大な被害を受けた大槌町のがれきの受け入れを開始しました。

受け入れるのは、同町大槌地区の仮置き場の災害廃棄物で、長さ30センチ、太さ5センチ以下に破砕した可燃ごみ。
このがれきに含まれる放射性セシウムの濃度の範囲は、木質廃棄物の不検出から最大でもプラスチック(組成比0.9%)の1キロ当たり182ベクレルとなっていて、約240トンほどを3月末まで受け入れます。
県からは、25年度末まで継続して受け入れるよう要請されています。

汚染牧草の焼却計画まとまる

汚染牧草を視察した平野達男復興担当相(右)
汚染牧草を視察した平野達男復興担当相(右)

一関地区広域行政組合は、試験焼却の結果を踏まえて策定した「放射性物質を含む牧草の焼却計画」を公表しました。
焼却する牧草の量は1613トン。
関係住民に対する説明、作業場の準備を経て、早ければ1月末から2年間をめどに進める計画です。
焼却灰に含まれる放射性セシウム濃度は埋め立て処分が可能な国の基準値(1キロ当たり8000ベクレル以下)の半分、4000ベクレル以下を目標にしています。

◎問い合わせ先

一関市災害対策本部、tel0191-21-2111

東京電力、市と平泉町の緊急申し入れに回答

一関市と平泉町は昨年12月14日、東京電力に対し東日本大震災に伴う原発事故補償について次の申し入れを行いました。
▼損害賠償請求への対応▼放射線量測定、除染、安全安心な給食確保などに係る経費負担▼健康不安を訴える住民に対する相談体制の整備や検査の実施▼産業分野における賠償や風評被害の防止―などに迅速で誠意ある対応を求めました。

これに対し東京電力福島原子力被災者支援対策本部東北補償相談センターの小松日出夫所長らは22日、市役所を訪れ、西沢俊夫社長名の回答書を勝部修一関市長と菅原正義平泉町長に手渡しました。

回答書には、▼農林業者への賠償金や肉用牛価格下落の差額補てんは、関係団体との調整を経て支払い手続きを進める▼その他の各種賠償や、両市町に発生した経費負担については、事故との因果関係が認められ、必要かつ合理的な範囲内で対応する▼健康不安や損害賠償などの相談などについては同相談センターが当地を訪問して対応する―ことなどで、具体的内容に踏み込んだものではありませんでした。

回答書を受け取った勝部市長は「さまざまな制約があるのは理解できるが、満足できる内容ではない」と不満を表明。
菅原町長も同様の見解を示しました。
さらに勝部市長は「汚染稲わら一時保管問題を含め、農家の窮状はもうぎりぎりの状態。積極的な情報開示と情報交換を行い、農家の現状をしっかり見た上で誠意を持って賠償査定に臨むこと、県南地区に相談窓口を設置することを強く申し入れた」と語り、「放射性物質汚染重点調査地域」に指定された平泉町、奥州市とも引き続き協議しながら対応していく考えを示しました。

回答書を受け取る勝部修一関市長(中央)

いちのせきの広報誌「I-Style」 平成24年1月15日号