徹底した地元千厩へのこだわり 地域の文化や歴史に触れてほしい

菅原正憲さん
千厩地域の住民が作り上げる市民劇場「どっから座」座長
菅原正憲さん Sugawara Masanori 46 自営業 千厩町千厩

千厩地域市民劇場「どっから座」で座長を務める菅原正憲さん。
街の活性化に一役買おうと、2000 年の第1回公演から携わり、座長に就任して5年目になる。

初めは、演劇なんてしたことのない素人集団。
白紙からスタートした。
まずは、10回公演を目標に掲げ、手を取り合った。
機材の整った施設がなく、道具も衣装もない中で、かつら一個から手作りした。
音響や照明も全て地域住民が担った。
藤沢、大東両町民劇場との交流の中で、互いに刺激を受けながら、切磋琢磨して前に進んだ。

今では、「どっから座」の知名度は高まり、千厩地域ではよく知られる劇団になった。
毎回楽しみに来てくれる人も多い。
千厩地域でこれほど長く続いている文化事業は少ない。
「まずは、目標の10回公演を何としてもやり遂げたい」と使命感に燃える。

座名の由来はおもしろい。街でよく、知らない人同士が「どっから来たのっしゃ?」と声を掛け合う。
そこから取った。
堅くなく、親しみやすい。
劇の原作は、千厩地域に伝わる伝説や昔話に基づいて創作。
郷土芸能も織り交ぜるなど、徹底的に地元にこだわった。

一方で、苦労も多い。
常にキャスト、スタッフ、ボランティアなどの人手不足に頭を痛めている。
施設には特に苦労してきた。
前回までは暖房設備のない千厩体育館が会場。
ジェットヒーターなどで館内を暖めるが、演劇が始まると音響に配慮して止める。
「楽しみにしているけど、寒いのが欠点」と言われ続けてきた。
そのたび「冷蔵庫のような所で演劇を見るのも楽しみでしょ」と自分を励ました。

昨年3月13日は9回目の公演日だった。
その前々日、あの大震災が起きた。
本番まであと2日。
いよいよだとキャスト・スタッフの気持ちが高ぶってきている中での災害。
自然には勝てない。
会場は被災し、演劇どころではなかった。
中止を決めた。

今年の公演は3月11日。
生涯忘れられない日だ。
震災から教わった命の尊さや絆を中止になった昨年の演題にプラスして公演する。
入場料は1,000円(中学生以下は無料)。
昨年のチケットも使用できる。
初めて暖房設備のある千厩農村環境改善センターで、多くの人に元気とやすらぎの時間を提供する。

Profile

1965年千厩町生まれ。家業の酒店を継いで25 年。
街の活性化に協力しようと「どっから座」が設立された2000年から所属。
演題、キャスト・スタッフなど徹底的に地元千厩にこだわる。
人手不足に頭を痛めながら、裏方に徹する「どっから座」座長。
妻、父と3 人暮らし。千厩町千厩在住。46歳。

「新・キツネにだまされた男の話―ギャ~ンGYA~N」の台本「新・キツネにだまされた男の話―ギャ~ンGYA~N」の台本
千厩地域市民劇場どっから座第9回公演「新・キツネにだまされた男の話―ギャ~ンGYA~N」の台本。
人間と動物の共存と命の尊さをテーマに3月11日、千厩農村環境改善センターで初の2回公演を行う。
「見てもらう人に、千厩地域の歴史や文化をわかってもらえるはず」と自信をのぞかせる。

いちのせきの広報誌「I-style」2月1日号