農業者は主役を輝かせるマネージャー
ノウハウさえあれば農業は希望だ

佐藤修司さん
手掛ける商品に絶大なる自信を持ち提供する農業者
佐藤修司さん Sato Syuji 48 農業 一関市厳美町

「葉っぱ一枚増えるだけでこんなに人生が変わると思わなかった」。
こう話すのは、幸運の四つ葉のクローバーを栽培する佐藤修司さん。 

転機が訪れたのは、山野草屋の店内。
黒いクローバーを見つけ、パッとイメージが浮かんだ。
「しあわせみぃつけた」と。
しかし、これは園芸家なら誰でも知っているただのクローバー。
「そんなもの売れるか」と批判を受けたりもしたが、2月のバレンタインから5月の母の日シーズンに的を絞って市場を確立。
今年で10年目を迎えた。

クローバーの他にシクラメンやラベンダーなども栽培する。
「競争することで誰かが不幸になるのは嫌」と誰もやっていないことをしてきた。
初めに取り組んだのはシクラメンの小売販売。
お客さんを前にする手前、手抜きはできない。
自分の目で確かめて直接売ることで、販売の喜びを知った。
他にも今までにない新たな手法を生み出した。
「うちのシクラメンを買ったらよそからは買えないよ」と言い切る。

修司さんが考える物作りのコツは、決まった量しか作らないこと。
作り過ぎた瞬間に商品の魅力が減るという。
腹八分目が丁度いいのだ。

保証がない園芸品を作るだけに、東日本大震災時にはかなりうろたえたそう。
農業をする限り、自然災害は付き物。
自然とうまく付き合いながら、いろいろな条件をクリアしていかなければいけない。

「農業は見方を変えればやりようがある。地域の再生だってできるはず。農業はパンドラの箱に残った一つの希望。物を作る力があっても売る能力がなければやっていけない。それが分かれば産業は回るはずだ」と語る。
「ノウハウは知りたい人には教えるよ。自分の役割は次の世代にどう残すか」と未来を見つめる。

農業は一筋縄ではいかない。
植物は都合があって生きている。
それをうまく取りこんで世話しなければいけない。
「農業は作ったものが主役。自分の思いだけでやると絶対失敗する。生産者は、その都合に合わせながら主役が輝く方法を常に考える。そして、伝えたいことは全部商品にする」それがポリシーだ。

強気の修司さんだが「かわいい商品が作れなくなった時の自分の精神状態が怖い」と不安をのぞかせた。
自ら決めている定年は55歳。
それまで勢いは加速し続ける。

Profile

1963年一関市厳美町生まれ。
サラリーマンを経て30歳でシクラメン栽培を始める。
人と競争することを嫌い、誰もやっていないことに価値を見いだしてきた。
手掛けたものは絶大なる自信を持って提供する。
妻、子2人、両親の6人暮らし。一関市厳美町在住。48歳

出荷最盛期のクローバー「しあわせみぃつけた」
10万ポットを手掛ける、出荷最盛期のクローバー「しあわせみぃつけた」。
葉が小さくて四つ葉が出やすい「クロバツメクサ」という品種だ。
金運の五つ葉が出ることも。
夜は葉を閉じて眠り、5月頃には清楚な花が咲く。

いちのせきの広報誌「I-style」3月1日号