千厩駅

お待たせしない駅

千厩駅を訪れたのは、春の日差しが降り注ぎ始めた3 月下旬。
景色も日ごと春めいてきた。
同駅は1927年7月に開業。
かつては、18人ほどの駅員が勤務し、貨物の取り扱いもあった。
70年9月に駅舎が改築され、現在の姿になった。

2010年6月から駅長を務める皆川正助さん(61)が今回の案内人。
「当駅の自慢は、お客さまをお待たせしないこと。JR なら全国どこの切符でも買えるんですよ」と胸を張る。

1日の平均乗車人員は288人(2010年統計)。
利用者は年々減少傾向にあったが、震災後は少し増えた。
仮設住宅に住む人や被災地へ向かうボランティアに利用してもらっているという。
沿岸被災地の支援に一役買っている駅でもある。
一方で、「2011年春からこの駅で一緒に勤務することになっていた同僚が、震災で帰らぬ人に。残念です」と皆川駅長は表情を曇らせる。

震災から1年あまり。
ゆるやかにカーブした島式ホーム(※1)に滑り込むキハ(※2)と行き交う人々の表情は皆、穏やかに見えた。
暖かい陽光が差し込む待合室は明るく、地元の人が生けた季節の花が乗降客を迎える。
千厩駅を出ると上り列車は一路北へ。
摺沢駅に向かう。

※1…両側が線路に接しているホームのこと
※2…キハ100 型。大船渡線、北上線などで使用されている

ホームが緩やかにカーブする駅

摺沢へ向かう車窓から

摺沢へ向かう車窓から。
千厩の街を後にする

大きく弧を描く線路

大きく弧を描く線路。
その線形を竜に見立てて「ドラゴンレール大船渡線」の愛称が付けられた

皆川正助さん案内人
皆川正助さん 千厩駅駅長

子供の頃に見た蒸気機関車をよく覚えています。
「旅」や「物流」を支える国鉄の力強さにあこがれ鉄道マンに。
モットーは「安全の先に信頼がある」。

広報いちのせき「I-style」5月1日号