救命立市を

救急救命の第一歩は市民の手から

命を救う方法を学び、繰り返し訓練しよう、いざというとき愛と勇気を持って行動するために

「運命」から「使命」へ
素早い「救命」が「生命」を守る

市消防本部によると、119番通報を受けた救急車が現場に到着するまでにかかる時間は、市平均で9分30秒(全国平均8分6秒)。
出場件数の増加や交通渋滞で、年々所要時間は、長くなる傾向にある。

「救命の可能性と時間経過」によると、心臓と呼吸が4分間停止すると、命が助かる可能性は、胸骨圧迫(心臓マッサージ)やAEDで除細動を行った場合は約40%であるのに対して、何もしなかった場合は約20%に半減することが分かっている。
時間の経過により救命のチャンスは低下する。

バイスタンダー(発見者など救急現場に居合わせた人)の心肺蘇生など迅速で適切な応急手当が重要だと読み取れる。
「救急車の到着を待つ」(運命)から、「自ら手当する」(使命)への意識改革こそ、救命率向上のカギを握っている。

救命の連鎖―命のリレー
第一走者は私たち市民

市は本年度、中学生を対象に、救急救命の知識と技術を習得する「命をつなぐプロジェクト」事業を開始した。
中学生に命の大切さと応急手当の方法を学んでもらい、生徒から家庭、そして地域へと救命の輪を広げようというものだ。

市は市内20の中学校(県立一関一高附属中含む)に成人心肺蘇生訓練用マネキン(CRP)と心肺蘇生の手順を音声で知らせる誘導器(ERV)を配布。
市消防本部や国際医療福祉専門学校一関校から講師を派遣して、人工呼吸や心臓マッサージの方法、自動体外式除細動器(AED)の操作方法などを習得させる。

心臓や呼吸が停止した傷病者を救うためには「予防→119番通報→心肺蘇生・除細動→救命医療」の「救命の連鎖」が、迅速に途切れることなく行われることが重要だ。

「救命の連鎖」の「救命医療」以外の3つは、バイスタンダーの手にかかっている。
尊い命のリレーをスタートさせる勇気ある市民の誕生は、安心のまちづくりに直結するはずだ。

正しい救命処置は、愛する家族や大切な人を守るために学ぶべきものである。
万一の際、一人でも多くの人が応急手当を実践できるよう、積極的に講習会や訓練に参加できる日常が急務だ。

救命の連鎖 ―Chain of Survival―
 救命手当ては連続性をもって行わなければいけません


(1)突然死の可能性ある傷病を未然に防ぐ。小児の不慮の事故を防ぐ。成人の心疾患などの初期兆候を見逃さず治療を開始する-など
(2)早期119番通報などで救急隊がいち早く到着できるよう努める
(3)バイスタンダーによる迅速な心肺蘇生とAED
(4)救急救命士や医師による心拍再開のための処置・治療と社会復帰を目指した高度な治療

安心のまちづくりに
積極的に協力していきたい

一関市の全面的な支援で、物的にも、人的にも恵まれた学習環境が整ったことに感謝しています。

私たちは学生たちに救急救命士の専門知識や技術を指導しています。
同時に、地域や社会との関わりについても大切だと教えています。
学生も教官も、救急救命講習を開いたり、地域行事に参加したりして、積極的に地域の皆さんとの交流を深めています。

市の災害に強いまちづくりの一環である「命をつなぐプロジェクト」は、市内の全中学生に心肺蘇生機材を配布して、救急救命の知識や技術を学んでもらうもので、救命のすそのを広げる素晴らしい取り組みです。

中学生が定着したら、将来的には小学生まで救命のすそのを広げられたらいいですね。
たとえば、総合的な学習の時間などを活用して、それぞれの学年に見合ったプログラムで救命処置を学ぶなど、できるだけ小さい時から救命に対する意識付けをするが重要です。
小学生から高齢者まで幅広い年代の人が救命処置できるシステムを構築できれば、「救命のまち一関」を国内はもちろん世界にアピールすることもできると思います。

一関に住む人たちが安心して暮らせる環境は、一関を訪れる人たちが安心して過ごせる環境でもあります。
そんな安心できる「一関の日常」の実現に、私たちも総力を挙げて協力します。

救命のすそのが広がることは、
安心して暮らせるまちができること
そのための協力は惜しまない

国際医療福祉専門学校一関校
立岡伸章救急救命学科長
Tachioka Nobuaki
立岡伸章救急救命学科長 

PROFILE

1970年埼玉県生まれ。
国士舘大学院救急システム研究科卒、修士号取得。
90年消防士に採用され、埼玉県内の消防本部で18年間活躍。
09年国際福祉医療専門学校千葉校に勤務。
11年4月、一関校開校と同時に同校救急救命学科長に就任。
救急救命士を目指す学生の指導に日夜情熱を燃やす42歳
【資格】救急救命士、JPTECインストラクター、ICLSインストラクター、AHA-BLSインストラクターなど多数
【学位】救急救命学修士
【所属学会】日本救急医学会、日本臨床救急医学会、日本医療教授システム学会

1市内自治会の救命講習会2室根町田茂木自治会員の皆さん

3成人心肺蘇生訓練用マネキン(CRP)4心肺蘇生の手順を音声で知らせる誘導器(ERV)
1_市内自治会の救命講習会で講師を務める立岡学科長
2_心肺蘇生法を実技する室根町田茂木自治会員の皆さん
3_「命をつなぐプロジェクト」事業で市内20の全中学校に配備した成人心肺蘇生訓練用マネキン(CRP)
4_同事業で全生徒に配布した心肺蘇生の手順を音声で知らせる誘導器(ERV)

広報いちのせき「I-style」10月1日号