美しい景観や環境は想像以上
もっと広めたい、人に寄り添う暮らし方 

渡邉亜里沙さん
大東町の京津畑集落に派遣されている緑のふるさと協力隊
渡邉亜里沙さん 23 大東町中川

50世帯、150人が暮らす大東町中川の京津畑集落。
この小さなコミュニティーに今年4月、「緑のふるさと協力隊」の渡邉亜里沙さん(23)がやってきた。
NPO法人地球緑化センターは、少子高齢化や過疎化に負けず、地元を元気にしようと頑張っている全国の農山村に同協力隊を派遣している。
亜里沙さんは隊員の一人。
「京津畑で、人に寄り添った生活を経験したい」と瞳を輝かせる。

愛知県出身の亜里沙さん。
福祉大を卒業後、1年間、高齢者福祉施設に勤めた。
そこで、おばあちゃんたちから田舎の良さや農作業の魅力を口々に言われたという。
「おばあちゃんたちが経験した農業をやってみたい。震災後、報道されなくなった内陸の様子も自分の目で確かめたい」。
こんな思いから「岩手行き」を希望した。

「日本に、こんなきれいな所があったんだ」。
自然豊かな農村風景、小鳥や虫の鳴き声、美しい星空など想像を超えた景色や環境に驚いた。
ここでの暮らしは、何もかもが新鮮だった。

仕事は主に、地域の人たちの手伝いだ。
農作業を手伝って農家の大変さに気付いた。
天候に左右される農業の難しさを知ることができた。
同時に、何でも手に入る都会の生活は、便利で恵まれていると、自分の暮らしを見つめ直すきっかけにもなった。

古里を離れ、一人で暮らす。
不安がないとは言い切れないが、いつも誰かが声を掛けてくれるから寂しくない。
一日中、誰とも会わない生活はここにはない。
人との関わりが深い京津畑で、それはごく自然なことなのだ。

今の生活には仕事も休暇もないが、自然と触れあい、人と関わる毎日の中で、小さな喜びにも大きな幸福感を得られるようになった。
「普通の遊び方を忘れてしまったみたい」とほほ笑む。
決して便利とは言えないが、「昔から変わらないすてきなものがたくさん残されている」とも。

一人で「岩手行き」を決めた時、告げられた家族は驚きを隠せなかったという。
そんな家族も、今では京津畑の大ファン。
正月には家族を呼んで、「京津畑産の小豆を使ったあんこ餅を食べたい」とにっこり。

「生きる基礎を作る農業ってすごい。みんなに京津畑のほっと落ち着く、ぬくもりある風景を知ってほしい」

京津畑に訪問者が来ると、集落のみんなが喜ぶ。
そして、心からもてなす。
「もっと農山村と都市との交流機会が増えればいい」と願う。

派遣期間は1年。
雪国の冬を経験しながら、残る半年も全力で向き合う。

やまあい工房「山がっこ」
農作業などがないときは、やまあい工房「山がっこ」で調理の手伝いなどをする。
ここで提供するものはすべて会員の手作り。
毎週火曜日は、手作り惣菜の訪問販売日。
楽しみにしている人も多い。
11月11日(日)には「京津畑まつり食の文化祭」が行われる。

Profile

1989年生まれ。
愛知県名古屋市出身。
NPO法人地球緑化センターが主催する緑のふるさと協力隊として、今年4月から大東町中川の京津畑集落へ1年間派遣されている。
農業体験をしながら、一日一日を全力で、人に密着した生活を送る。
大東町中川在住。
23歳

広報いちのせき「I-style」11月1日号