地域の産業を支えた駅

真滝駅

11月中旬、JR大船渡線「真滝駅」を訪ねた。
同駅は1925(大正14)年7月26日、摺沢、陸中松川、陸中門崎の3駅と同時に開業した。

駅から徒歩1分、35(昭和10)年創業の小岩豆腐店の店主小岩一重さん(83)が今回の案内人。
「かつて駅前は6つの雑貨店、桶屋と酒屋が軒を連ね、にぎわっていた」と振り返る。
真滝地区の土壌には亜炭が豊富に含まれている。
石油が流通する前は盛んに採掘が行われ、同駅から出荷された物資の8割が亜炭だったという。

また、山間部は林業が盛んで、まきや材木が大量に出荷された。
最盛期には駅前広場にまきの山ができたという。

昭和初期の農業恐慌では、同地域で生産された「わら工品」が脚光を浴びた。
藩政時代から続く紙すきにあっては、52(昭和27)年まで駅前で「紙市」が開かれるなど、大勢の人でにぎわった。

さて、駅から車で10分ほど北へ走ると国営農地開発事業で整備された「須川パイロット」がある。
真滝の人たちは、ここで20ヘクタールのブドウ栽培に取り組んだこともあった。

時代の変遷と共に産業も変わっていった真滝地区。
唯一不変だったのは「いつの時代も地域産業の中心は真滝駅だった」と一重さん。
同駅を発車した上り列車は、終点一ノ関駅へと向かう。

案内人 小岩一重さん

小岩豆腐店店主 一関市滝沢字館下 
小岩一重さん
駅を盛り上げるために、地区内の6つの行政区が、さまざまな催しを開きました。
当時は、米と交換しようと、沿岸部から魚を持って来る人も多かったですね。

駅前には商店街が広がる98年に新築した駅舎
左_駅前には商店街が広がる。駅前広場には、かつてまきの山ができたという
右_98年に新築した駅舎。駅舎の脇には開業時から真滝を見守ってきた樹齢約90年のスギの木が凛と立つ

沢地内のカーブを曲がると一関の市街地が見えてくる対岸のホームへ渡る構内踏切の上から
左_終点、一ノ関駅へ向かう。沢地内のカーブを曲がると一関の市街地が見えてくる。車内から撮影
右_対岸のホームへ渡る構内踏切の上から

広報いちのせき「I-style」12月1日号