一関市内には数々の郷土芸能がある。
このうち藤沢地域で30年以上も続く「藤沢町子ども郷土芸能発表会」は、郷土芸能を守り、伝え、紡ぐ取り組みだ。
藤沢の伝承活動から見えるものは。
新春の舞台を追った。
1「楠正成桜井の駅の父子別れ 湊川の合戦」

古里の技と誇りを次代へ伝承
1、継ぐ

郷土芸能の発表を通して古里の技を継ぎ、心を伝えた新春の舞台をリポート

「第31回藤沢町子ども郷土芸能発表会」

「第31回藤沢町子ども郷土芸能発表会」(一関市教委主催)は1月13日、藤沢文化センター「縄文ホール」で開かれ、藤沢地域の6団体が伝承活動の成果を発表した。

今年は▼藤沢ばやし保存会▼ 徳田(とくだ)田植え踊り保存会▼ 増沢(ますざわ)神楽保存会▼ 黄海源大鶏舞(きのみげんだいとりまい)継承会▼ 下大籠(しもおおかご)南部神楽保存会▼ 本郷(ほんごう)神楽保存会―の6団体が7演目に出演。
冬休み中、それぞれの地区で学び、技を磨いてきた児童たちは、勇壮な舞いや息の合った演奏で、元気いっぱいの舞台を見せた。

このうち、昨年創立80周年を迎えた下大籠南部神楽保存会(高橋義男(よしお)会長)の児童たちは神楽「楠正成(くすのきまさしげ)桜井の駅の父子(ふし)別れ 湊川(みなとがわ)の合戦(かっせん)」を発表。
兵力に劣り、勝ち目のない戦と知りながらも出陣する父とそれを見送る息子の最後の別れや激しい合戦の様子を約50分にわたって情感たっぷりに演じた。

会場には大勢の保護者や地域の人たち

会場には大勢の保護者や地域の人たちが駆けつけ、各団体の舞台に盛んな拍手を送っていた。

下大籠南部神楽保存会の及川竜一君(藤沢小6年)は「本番が一番よくできました。毎晩遅くまで練習した成果が出ました。神楽は難しいけど、互いに教えたり、教わったりしながら上手になっていくところが好きです」と息を弾ませた。

指導者として神楽を継承する下大籠南部神楽保存会の高橋義男会長(84)は「保存会には親子で参加している人もいる。(私の)後継者となり、指導する人材も育っている。地域には時代を超えて継承すべき宝がたくさんある。神楽もその一つ」とにっこり。

この晴れ舞台をJスタッフ(縄文ホール舞台操作技術者)と共に支えたのは、Jスタッフ協議会(及川隆司会長)が主催する養成講座で舞台の「いろは」を学んだJキッズ(ジュニアオペレータースタッフ)たち。
照明、舞台、場内アナウンスなど、それぞれの持ち場でしっかり舞台を支えた。

Jキッズとして舞台裏を支えた山口大樹君(藤沢小6年)は「初めて参加しました。とても楽しかったです。機会があれば、また次も参加したいです」と充実感をにじませていた。

30年以上も前から郷土芸能の伝承活動に力を入れてきた藤沢地域には、親子二代にわたって同発表会に出演する人も多い。
かつて、新春の舞台で演じた子どもたちは今、親として、わが子の晴れ舞台をサポートしている。

下大籠南部神楽保存会で神楽を舞った

及川竜一君及川竜一君 藤沢小6年

ぼくは足利尊氏の役。
保存会結成80周年記念事業で舞うために、いつもよりたくさん練習してきました。
本番が一番上手にできたと思います。
舞台は緊張するけどやりがいがあって大好きです。
 

Jキッズとして裏方で舞台を支えた

山口大樹君山口大樹君 藤沢小6年

舞台の準備は、いろいろな作業があって忙しかったです。
ライトは一つ一つが重くて、光の向きを調整するのが大変でした。
ピンスポットで人の動きに合わせてライトを動かす作業が楽しかったです。

 

2本番前の楽屋で子どもたちに衣装を着せる母親たち3照明を操作するJキッズ4増沢神楽保存会の「五大領四節分」
5本郷神楽保存会の「天の岩戸開き」6藤沢ばやし保存会の「藤沢ばやし」7徳田田植え踊り保存会の「徳田田植え踊り」
8増沢神楽保存会の「鶏舞」9わが子の晴れ舞台を客席から撮影する母親たち10黄海源大鶏舞継承会の「鶏舞」

1_ 下大籠南部神楽保存会の「楠正成桜井の駅の父子別れ 湊川の合戦」
2_ 本番前の楽屋で子どもたちに衣装を着せる母親たち
3_ 照明を操作するJキッズ
4_ 増沢神楽保存会の「五大領四節分」
5_ 本郷神楽保存会の「天の岩戸開き」
6_ 藤沢ばやし保存会の「藤沢ばやし」
7_ 徳田田植え踊り保存会の「徳田田植え踊り」
8_ 増沢神楽保存会の「鶏舞」
9_ わが子の晴れ舞台を客席から撮影する母親たち
10_ 黄海源大鶏舞継承会の「鶏舞」

広報いちのせき「I-Style」 平成25年2月1日号