市内の各医療機関は連携しながら
「インフルエンザ」などの感染対策に力を入れています

インフルエンザ感染の脅威

インフルエンザは死に至る危険性がある怖い病気だということを認識していますか―

インフルエンザは咳、鼻水、のどの痛みに加え、高熱、関節痛、倦怠感などの全身症状が表われるのが特徴です。
感染力は強く、「飛沫感染」(咳やくしゃみの飛沫が口から体内に入り込んで感染)が主です。
高齢者や基礎疾患のある人は肺炎などの合併症を、小児はまれに脳炎を引き起こすことがあり、重症化したり、死亡したりする危険性が増します。

インフルエンザは毎年、世界各地で流行します。
日本では低温、乾燥が続く12から2月にかけて流行します。
大流行の年はインフルエンザだけでなく、肺炎や各種慢性基礎疾患で亡くなる人も増え、全体の死亡者数が増加することが明らかになっています。

医療機関が感染対策で連携

感染管理に従事する医師などを中心に「感染対策チーム」(ICT)を設置する医療機関があります。

感染対策マニュアルや抗菌薬適正使用ガイドラインなどが整備され、ICTによる病棟回診など院内の感染管理が行われています。
職員の予防接種にも積極的に行い、感染予防に取り組んでいます。

昨年4月に発足した「一関地区感染連携協議会」は、※感染防止管理加算1を取得している県立磐井病院(加藤博孝(ひろたか)院長)を中心とした10医療機関が連携する組織です。
各医療機関のICTが合同で会議を開いたり、情報を共有したりしながら、垣根を越えて感染対策に努めています。

協議会に所属する医療機関で感染症が流行すると他の医療機関のICTが現地に出向いて相談を受けたり、治療に当たったりすることもあります。
「スタッフの手洗いはできているか」「院内環境はきれいか」など、互いにチェックしたり、意見を出し合ったりします。
問題点があれば、連携する全ての医療機関の課題として把握し、改善に向けて取り組みます。

磐井病院の加藤院長は「一関地域の感染対策活動は、県内でも先進的。
連携活動は感染対策の底上げにつながり、地域全体のレベル向上に結びついています」と見え始めた効果を実感しています。

地域の医療機関が連携して感染対策を講じる中、利用者である市民のみなさんの協力も必要不可欠です。

不要不急の来院は危険大

医療機関の入院病棟は、患者が安静に過ごせる場所、治療に専念できる環境でなければいけません。
協議会に所属する医療機関は院内感染を防ぐため、▼熱の有無を確認する▼感染症患者を隔離する▼入院患者に薬を投与する―などの対策をとっています。
患者の中には免疫が低下し、感染しやすい人も少なくありません。
感染して亡くなる人もいます。

このような事態を防止するために、感染症の流行期に入院患者への「面会制限」をすることがあります。
外部からのウイルス侵入を防ぐためです。
院内対策をしているにも関わらず院内感染が広がるのは、外部の人から入院患者に感染している可能性が高いと考えられています。
仮に感染していなくても、ウイルスを持ち込む可能性があります。

一関管内の今期のインフルエンザの流行は、1月中旬がピークでした。
患者は例年よりも多く、県立磐井病院では、面会を禁止したり、熱を計測して面会許可証を発行したりしました。
ある日曜日の面会希望者数は450人にも上り、制限するにも大変だったそうです。

「面会対応は各医療機関共通の悩み。『せっかく来たのに』と怒って帰る人もいます。院内感染を防ぐために必要な対策であることを理解してほしいです」

入院患者を励ますお見舞いも、時として脅威に代わります。
感染症の流行期はもちろん、普段から不要不急な来院は控えてください。

治療や治療に専念できる環境づくりには、市民の皆さんの支えや協力が必要です。
今年のインフルエンザの流行は終息に向かっていますが、まだまだ油断はできません。
日頃から感染に関心を持ち、予防を意識した暮らし方を心掛けましょう。

1医療機関当たりの平均インフルエンザ患者数推移   「岩手県感染症情報センター」感染症週報から抜粋

1医療機関当たりの平均インフルエンザ患者数推移
市内7つの医療機関から報告された1医療機関当たりの平均報告数
1.0を上回ると流行入り、10.0以上で注意報レベル、30.0以上で警報レベルにあると判断される

県立磐井病院 加藤博孝院長

県立磐井病院 加藤博孝院長

※感染防止対策加算1

専従で感染担当医などを配置し、委員会を組織する医療機関に与えられ、5千円程の診療報酬を加算できる。
ただし、感染防止対策加算2の医療機関と年4回以上の研修会などを行うことが条件。
感染防止対策加算2の医療機関は、専任の感染担当医などを配置し、委員会を組織している医療機関

一関地区感染連携協議会

2012年4月発足。
県立磐井病院を中心に県立千厩病院、県立大船渡病院、県立高田病院、県立南光病院、一関病院、岩手病院、ひがしやま病院、国保藤沢病院、昭和病院、西城病院―の10院のICTで構成。
各医療機関が垣根を越えて連携、情報を共有しながら活動を展開。
感染対策は県トップレベル

県立磐井病院ICT

加藤博孝院長をリーダーに医師、看護師、臨床検査技師、薬剤師で「磐井病院感染対策チーム」(ICT)を組織。
感染管理の資格を有する医師、看護師、臨床検査技師がそろうのは県内でも数少ない
県立磐井病院ICT

インフルエンザなどを予防しよう

すぐにできる感染予防
  1. 手洗い、うがい
    手洗い、うがいは感染予防になります。
    普段から習慣付けて行うようにしましょう。
    冬季はインフルエンザやノロウイルスが流行します。
    流行期はそれらをこまめに行うことが効果的です。
    ※擦り込み式のアルコール消毒剤は、液を手に取り、手全体に擦り込んでください。
    ハンカチやティッシュで拭きとったり、洗い流さないでください。
  2. 不要不急の面会制限
    インフルエンザやノロウイルスの流行時期は不要不急の面会は遠慮してください。
  3. 咳エチケット
    熱や咳などの症状があり、病院を受診する際は、ティッシュで口を覆ったり、マスクを着用したりするなど「咳エチケット」を行いましょう。
  4. 処方された薬は全て飲み切る
    インフルエンザを発症し、内服治療した場合は症状がなくなっても処方された日にち分、飲みきってください。
    症状がなくなっても、ウイルスを排出している場合があります。
    周りに広げないためにも、薬を飲みきってください。
  5. インフルエンザ予防接種
    ワクチン接種でインフルエンザに軽く罹って、本当のインフルエンザに感染した時の体内対応を練習する働きがワクチン接種です。
    重症化や合併症の発生を予防する効果があります。
    決して、インフルエンザに罹らないためではありません。
    高齢者に対するワクチン接種は、接種しない場合に比べて、死亡の危険を約1/5に、入院の危険を約1/3まで減少させることが期待できます。
  6. 栄養と睡眠
    十分な栄養や睡眠をとるなど、体調を管理してください。
    症状がある場合には、感染拡大防止のためにも無理をして学校や職場などに行かず、早めに医療機関を受診しましょう。
  7. 人込みを避ける
    流行期に人込みを避け、感染しないようにしましょう。
    避けられない場合などはマスクを着用してください。

広報いちのせき「I-Style」 平成25年4月1日号