焼いても、揚げても、凍らせてもうまい。
ごはんにも、おかずにも、おやつにも、つまみにもなる。
わんにも、皿にも、どんぶりにも合う。
一言では語れないその魅力、一口でわかるそのうまさ。

一関の人たちは、古くからもちを食べてきました。年中食べてきました。
長い歴史の中で単なる「食」としてだけではなく、「文化」として育んできました。

そのもちを含む「和食」が、ユネスコの無形文化遺産に登録されることになりました。
一関のもち食文化が、世界に認められたのです。

「くるまる」「かたまる」など、もちには人がつながったり、地域がまとまったりする言葉が宿っています。
もちがあるところには人が集い、活気が生まれます。
さあ、「もちの聖地」へ向け、前に進んでいきましょう。
今号は、人ともちとのすてきな関係に迫ります。

ハレの日に食べるもち

古くから一関地方では、節目や年中行事など、「ハレの日」にもちを食べてきました。
そのもちを含む「和食」が、ユネスコの無形文化遺産に登録されることになりました。
今、一関地方の「もち食文化」の普及・発展に、追い風が吹いています。

農水省の「日本食・食文化の海外普及」(2013年6月)によると、「外国人が好きな外国料理」の1位は日本料理、海外の日本食レストランは約5万5千店に上り、和食が空前のブームになっています。
人気の理由は▼旬の味覚を生かしている▼四季の移ろいを味覚と視覚で表現している▼「一汁三菜」で理想的な栄養バランスを実現している―などです。

国連教育科学文化機関(ユネスコ)は13年12月4日、アゼルバイジャンの首都バクーで開いた第8回政府間委員会で日本政府が推薦した「和食・日本人の伝統的な食文化」を無形文化遺産に登録することを決定しました。
無形文化遺産は、世界遺産や記憶遺産と並ぶユネスコの遺産事業の一つです。

食分野での登録は「フランスの美食術」「地中海料理」「メキシコの伝統料理」「トルコのケシケキ(麦がゆ)の伝統」に続く5件目。
江戸前寿司や京料理と共に和食の代表に挙げられた「一関地方のもち食」が世界に認められたのです。
伝統的な習わしとして受け継がれていること、年中行事の中で育まれていること、家族や地域のつながりを深めてきたことなどが評価されました。

一関地方のもち。ルーツは江戸時代にさかのぼります。
当時、仙台藩は、平安息災を祈って、毎月1日と15日にもちを神仏に供える習わしを推奨していました。
また、米のほかにもさまざまな農産物がとれた豊かな食文化を背景に、多彩なもちの具が生まれました。
その食べ方は300種以上といわれ、土産土法のもち料理は、郷土食となって広がり、今日に伝えられてきました。

もち料理と共に受け継がれてきたのが「もち食儀礼」です。
祝儀にも不祝儀にも「もち本膳」を振る舞う伝統は一関地方ならではです。
市内でもち食儀礼を普及する佐藤育郎さんは「人生の節目に食べるもちは最高のごちそう。この世に生を受けた喜びに始まり、七五三、入学、卒業、結婚、そして終局まで、もちで始まり、もちで締めくくったのです」と教えてくれます。

「和食」の無形文化遺産登録決定を祝って、市内では記念イベント、企画展や公開講座などが行われました。
登録決定は「もちの聖地」を目指す一関にとっても大きなチャンス。
一関が誇る「もち食文化」の普及・発展に、今、追い風が吹いています。

もちの起源

江戸時代、仙台藩は国内有数の米どころでした。
当時、仙台藩には毎月1日と15日にもちを神仏に供え、平安息災を祈る習わしがありました。
また、米のほかにも農産物が豊かで、こうした地域の食文化を背景に多彩なもち料理が広がりました。

ハレとケ

ハレは折り目や節目を指す概念で、語源は「晴れ」。
「晴れ舞台」や「晴れ着」など、現在もよく使われています。
儀礼、祭り、年中行事など「非日常」をハレというのに対し、ケは「日常」を表します。

無形文化遺産

世界遺産や記憶遺産と並ぶ、ユネスコの遺産事業の一つです。
無形文化遺産保護条約に基づいて登録される芸能、社会的な習慣、儀式・祭事、伝統工芸技術などで、日本では和食のほかに、能楽と文楽などが登録されています

もち食儀礼

仙台藩の武家社会の儀礼として「もち本膳」があります。
礼儀作法は「小笠原流」、盛り付けや味付けは「四条流」の流れをくんだものが格調高い正式の儀礼とされてきました。
祝儀にも不祝儀にも「もち本膳」を振る舞う伝統は一関地方ならではです。

県や県立大学と連携した公開講座 一関のもち食文化を学ぶ

記念公開講座「岩手県一関地方のもち食文化」は1月11日、蔵元レストラン世嬉の一で行われ、県内各地から参加した30人が伝統儀礼の「もち本膳」を体験し、「もち食文化」について理解を深めました。

「和食」のユネスコ無形文化遺産登録を記念した講座は全3回。
最終回の同日は、一関もち食推進会議の佐藤晄僖(こうき)会長が「もち食文化」のルーツや「もち食」の普及活動について説明したほか、佐藤育郎文化部長が小笠原流の礼儀作法を伝授しました。
参加者は、メーンの「もち本膳」のほか「もちつきうた」や「果報もち」を体験し、古くから伝わる一関地方のもち食文化を楽しく学びました。

佐藤光代さん 滝沢市

佐藤光代さん

実家(奥州市)の母は毎日もちを食べています。
もちを勉強したくて参加しました。
「もち本膳」や「果報もち」など、歴史や伝統が根付く一関のもち食文化はとても興味深いですね。

 

 

 

 

 

佐藤育郎さん 東山町

佐藤育郎さん

古くからもちは、人と人のつながりを象徴する食べ物として愛されてきました。
作法が伴うもち食文化は一関の誇り。
ユネスコが認めた古里の文化を後世へ継承していくことが私たちの使命です。

 

 

 

 

無形文化遺産登録を記念して東京でもち振る舞い

東京でもち振る舞い

「和食」の無形文化遺産登録を記念したもちつきイベントは12月7日、JR 一ノ関駅西口前広場で開かれ、観光客や市民ら約150人がつきたてのもちを味わい、登録を祝いました。

同日は、東京・銀座の「いわて銀河プラザ」でも、来場者に紅白もちが配られました。

 

 

図書館で「和食」をテーマに企画展を開催

図書館でテーマ企画展

一関図書館の企画展「和食~日本の食文化」は1月27日~23日に開かれました。
「もち食文化」に関する資料のほか、精進料理や寿司など「和食」に関する図書の展示、貸し出しなどが行われました。
花泉図書館では、テーマ展「和食の魅力、再発見」を開催しました。


 

 

 

 広報いちのせき「I-Style」 平成26年3月15日号