国際専門家会議でもその価値が高く評価され、国内2番目の重要文化的景観として選定された「一関本寺の農村景観」

 国がユネスコに提出した「平泉―浄土思想を基調とする文化的景観―」の世界遺産登録推薦書が昨年末に受理され、手続き的には一段落した感のある世界遺産登録に向けての動き。

 しかし、骨寺村荘園遺跡という貴重な遺産を、生活の場としての機能を保ちつつ保存していくためには、解決すべき課題も多くあります。

 このため市は昨年11月1日、助役を本部長とする骨寺村荘園遺跡保存活用本部を本庁内に設置。世界遺産登録の推進とともに、遺跡と共生する地域づくりの総合的な推進のため、関係部局が一体となって取り組みを進めています。

 同本部には▽総務(文化振興課)▽産業振興(商業観光課・農地林務課・農政課)▽景観形成(建築住宅課・維持課)の各班を設けた事務局を設置。現在、骨寺村荘園遺跡に係る

  • 世界遺産の登録・管理運営
  • 骨寺村荘園遺跡整備計画
  • ガイダンス施設の管理運営
  • ボランティアガイド
  • 景観農業振興地域整備計画
  • 景観保全農地整備計画
  • 景観計画に係る推進計画

などの項目について検討しています。

 現在、骨寺村荘園遺跡の農村景観を保全するための農地の利用・整備計画や営農方針についてワークショップなどにより地元の意見を取り入れながら作成した「景観農業振興地域整備計画」案を公告縦覧しています(3月9日までの予定)。

 また、長期的な遺跡の整備方針を示す「(仮称)骨寺村荘園遺跡整備活用基本計画」の3月中策定を目指して検討しています。計画では、▽史跡・重要文化的景観としての価値の保存と活用▽水田経営を基盤とする農村集落の持続可能な地域づくり▽見学者を迎え入れ文化財としての価値を伝える機能の確保を主な目的に、遺跡と共に生きるための整備のあり方を示します。

 

問い合わせ先
骨寺村荘園遺跡保存活用本部

 

世界遺産講座Vol.9 危機遺産とは

 危機遺産とは、▽武力紛争▽自然災害▽大規模工事▽都市開発▽観光開発▽商業的密猟などによって重大な危機にさらされている世界遺産のことで、平成18年7月現在、31件あります。

 危機遺産リストに登録されると、国際的な協力や世界遺産基金(※1)からの財政的支援を要請することができます。また、危機的な状況を脱したとみなされる場合は、危機遺産リストから除外されます。

 ドイツのケルン大聖堂は、8年に世界文化遺産に登録されましたが、“都市開発により高層ビルが近くに建設されると、世界遺産としての空間的統合性が損なわれる”という理由から、16年に危機遺産リストに登録されました。

 この例は、アンコール(※2)などのように、遺跡そのものの破損が進んだことにより危機遺産となったものではなく、遺産とその周辺の空間的統合性が問題となり、危機遺産リストに登録されたという珍しいケースでした。ケルン大聖堂はその後、高層ビルの建設計画の規模縮小が示されたため、18年7月にリトアニアで開催された第30回世界遺産委員会で危機遺産リストから除外されました。

※1 世界遺産の保全、修復、技術者の研修などのための基金で、世界遺産条約の締結国の分担金や任意の拠出金、団体や個人などからの寄付金などによって成り立っています。

※2 900年ほど前にカンボジアで栄えた王朝の遺跡、アンコールは、カンボジア国内での度重なる内戦や自然の猛威などで荒廃が進んでいました。4年の世界文化遺産登録と同時に、危機遺産リストに登録されましたが、日本を含めた国際的な支援活動が行われ、16年に危機遺産リストから除外されました。

 

問い合わせ先
骨寺荘園室 TEL0191-21-2111(内線8470・8471)

(広報いちのせき 平成19年2月15日号)