文様の美 アイヌの着物 カパラミ

カパラミプ(木綿衣) 製作者 かとうまちこ 伝統性を踏まえつつ、新たな文様を取り入れ、作者の個性を表現しています。 アイヌ文化を象徴するものとして、例えば、精神文化では「イオマンテ―飼熊の霊送り」、物質文化では「文様」などが挙げられます。特に、「文様」は、アイヌの人たちが日常使用する用具類や晴れ着などに施され、男性はマキリという小刀一丁で、女性は針一本で、独特の文様を創造しました。
 その文様を着物に見ると、例えば写真の着物は木綿で作られており、アイヌ語でカパラミプと呼ばれていますが、このカパラミプは、明治以降、アイヌに白木綿の反物が大量に入るようになってから作られたもの。それまでの着物とは違って、白木綿がふんだんに使われています。
 江戸時代後末期、蝦夷地を歩いた和人がアイヌの文様に注目し、木彫品が「蝦夷細工」「蝦夷土産」として売買され、下北半島大畑辺では、アイヌの伝統衣服アットゥシ(厚司)の着用が流行しました。1809(文化6)年9月、「晦日蝦夷産木皮衣着用は素より細工場等も音物に用いる事を禁セり…」と、アイヌ文化の受容を禁ずる触れが出ているように、蝦夷地および東北地方北部の和人もまた、その「美」を大いに楽しみました。
 明治以降、アイヌに対する同化政策により、伝統文化の伝承が困難な時代が続きましたが、現在、北海道を中心に、若い世代がその伝統を受け継ぐとともに、新たな創造の世界を広げています。
(アイヌ文化振興・研究推進機構 秋野茂樹)
*和人…特に江戸時代、蝦夷地に居住するアイヌ以外の人たちのことをいいます。

(広報いちのせき平成19年6月1日号)