国の史跡と重要文化的景観①

 中世に描かれた絵図さながらの農村景観が広がる市内本寺地区。色鮮やかな紅葉の時期を過ぎると、絵図に溶け込むようなモノトーンの墨絵の世界へと移り変わります。ここを訪れた人の多くは、自然と人間が織りなす古き良き日本の農村の原風景に、懐かしさと安らぎを感じることでしょう。
 その本寺は「骨寺村荘園遺跡と農村景観」という名称で、来年夏の世界遺産登録を目指す『平泉―浄土思想を基調とする文化的景観―』の構成資産の一つとなっています。文化庁は世界遺産登録に向け、史跡と重要文化的景観という保護の網をかけ、将来にわたってその価値を伝えようとしています。
 骨寺村荘園遺跡は「陸奥国骨寺村絵図」そのままに寺社などが現存。環境や景観が良好に保たれ、現地に立って絵図の世界を体感できる大変まれな遺跡として評価され、そのなかで歴史的裏付けや発掘の成果に基づいた9カ所が、17年3月、国の史跡に指定されました。国内に残っている中世の荘園絵図で、絵図に描かれている景観が良好に保たれているのは、全国でも本寺地区だけです。
 また文化庁は、文化的景観が世界文化遺産登録の主流となってきたことに合わせ、文化財保護法の一部を改正。地域の人々の生活や生業・風土により形成されてきた景観で特に大切なものを重要文化的景観として選定できることとしました。
 本寺地区は時代に応じた緩やかな変化を加えつつも、土地の風土と一体となりながら、日本の伝統的な農村景観を維持している数少ない場所であることが評価され、18年7月、全国で2例目の重要文化的景観に選定されました。

問い合わせ先本庁骨寺荘園室

  (広報いちのせき平成19年12月15日号)