交通事故や暴力行為など、第三者(加害者)の行為によって負った傷病の治療に保険証を使う場合は、保険者(市)への届出が義務付けられています。

 第三者行為による傷病では、その医療費の全額を加害者が負担することになります。しかし、治療を受けるのは被害者(被保険者)本人であるため、一時的にご自身で医療費を立て替えなければならない場合があります。このとき、自費診療となると費用が高額になってしまうため、届出により保険証を使用することも可能としています。保険証を使用した場合、医療機関の窓口でお支払いいただく一部負担金以外の医療費(保険給付分)は医療機関から保険者(市)に請求されますので、保険者(市)が加害者の代わりにいったん立て替えて支払い、後日、その分を加害者へ請求します。

【注意点】

  • 届出より前に、既に加害者から治療費を受け取っている場合は、国民健康保険を使用できないことがあります。
  • 自転車やバイクでの事故も必ず届出が必要です。
  • 自損事故や自殺未遂などは第三者行為ではありませんが、保険給付を受けるためには届出が必要です。
  • 「乳幼児・小学生・中学生・妊産婦・重度心身障害者・ひとり親家庭等医療費受給者証」は使うことができませんのでご注意ください。

【根拠法令】

  • 国民健康保険法第64条
  • 国民健康保険法施行規則第32条の6

【次の場合は国民健康保険が使えません】

  • 雇用者が負担すべきもの、労働災害・通勤災害の対象となる傷病
  • 犯罪行為や故意の事故による傷病
  • 飲酒運転や無免許運転などの法令違反の事故による傷病

 上記の原因による傷病の治療に国民健康保険を使用した場合、あとからその分の医療費を返還していただくことになります。国民健康保険を使用する前には、必ず国保年金課までご連絡をお願いいたします。

【医療費は加害者負担が原則】

 第三者の行為による医療費は、被害者に過失がない限り、加害者が全額負担することが原則です。被害者にも過失があったときは、その過失割合によって医療費の負担金額を計算します。

【示談をする前に】

 加害者との話し合いにより示談が成立すると、示談の内容が優先されるため、国民健康保険が立て替えて医療機関に支払った医療費を加害者に請求できなくなることがあります。その場合、被害者へ請求いたしますのでご注意ください。なお、示談するときは、事前にご連絡をいただくとともに、示談書に国民健康保険からの求償分を加害者が別途支払う旨の内容を盛り込むようにしてください。また、示談が成立したときは、速やかに示談書の写しを提出してください。
※示談後の治療についても届出が必要となる場合がありますので、お問い合わせください。

【届出に必要な書類】

 【交通事故の場合】

  • 第三者行為による被害届

 事故の状況は、「交通事故証明書」を参考に記入してください。保険に関する事項は「自動車損害賠償責任保険証明書」や「任意保険証書」を参考に記入してください。

  • 交通事故証明書(人身事故扱い)

 原本を1通提出してください。

 ※発行手続きは、交通事故の起きた都道府県の自動車安全運転センター事務所へお問い合わせください。

  • 人身事故証明書入手不能理由書

 人身事故扱いの事故証明書が入手できない場合に提出してください。

  • 事故発生状況報告書

 図や説明は、詳細を正確に記入してください。

  • 自賠責証明書・任意保険証書の写し

 加害者側の「自動車損害賠償責任保険証明書」や「任意保険証書」の写しを添付してください。

  • 念書

 被害者が作成してください。本人が記入できない場合は、代理の方の署名・押印が必要です。

  • 誓約書

 加害者に作成していただいてください。誓約者は原則として加害者本人となりますが、未成年者や学生等の支払不能者である場合は、その親権者等になります。

 【交通事故以外の場合】

  • 第三者の行為による被害届

 被害の状況は、詳細を正確に記入してください。

  • 個人賠償責任保険証書の写し

 加害者が個人賠償責任保険等に加入されている場合に必要です。

  • 念書

 被害者が作成してください。本人が記入できない場合は、代理の方の署名・押印が必要です。

  • 誓約書

 加害者に作成していただいてください。誓約者は原則として加害者本人となりますが、未成年者や学生等の支払不能者である場合は、その親権者等になります。

 【自損事故の場合】

  • 負傷原因報告書 

 受傷の状況は、詳細を正確に記入してください。

 【各種様式】

 届出に必要となる各種様式は、以下のリンク先にある岩手県国民健康保険団体連合会のホームページに掲載されています。

【負傷原因の照会について】

 国民健康保険を使用してケガの治療をされた場合、その負傷原因について文書で照会させていただくことがあります。報告の内容から第三者行為による負傷であることが判明した場合には、後から被害届の提出をお願いすることになります。

【第三者行為Q&A】

1.なぜ届出が必要なの?

 保険証を使って治療を受けると、かかった医療費のうち、窓口でお支払いいただく分以外は医療機関から国民健康保険に請求が来ます。第三者の行為による傷病の治療費は、被害者に過失がない限り加害者が全額負担することが原則ですので、国民健康保険が立て替えた治療費を加害者へ請求するために届出が必要となります。次の行為に該当するときは、必ず届出をしてください。

  • 交通事故(自損事故を含む)
  • 暴力行為(けんか)
  • 他人の飼い犬に咬まれた
  • 自殺未遂、自傷行為
2.ケガをしたのに保険証が使えないの?

 飲酒運転や無免許運転、故意に負傷したときなど、ケガの原因によっては保険証が使えない場合があります。

 ※医療機関の診療報酬明細書にはケガの原因までは記載されません。傷病名から判断し、「負傷原因報告書」を郵送してケガの原因を確認させていただくことがありますので、ご協力をお願いいたします。

3.病院の窓口で「保険証が使えるか市役所に確認してください」と言われた。

 第三者行為による傷病の治療に保険証を使用するときは、保険者へ届け出ることが義務付けられています。傷病の原因によっては使用できない場合があり、医療機関ではその判断ができませんので、必ず届出をお願いいたします。

4.保険会社に全部任せている。

 国民健康保険で治療を受ける場合は、保険者への届出が義務付けられています。保険会社が代理で届出することもできます。

5.相手のいない事故だけど。

 自損事故の場合でも、保険給付を受けるためには届出をしてください。

 ※医療機関の診療報酬明細書にはケガの原因までは記載されません。また、個人情報ですので医療機関への問い合わせも難しくなります。自損事故であっても、本人の過失・事故の原因によっては国民健康保険が使えないこともありますので、必ず届出をしてください。

6.自分が悪いので、相手には請求してほしくない。

 保険証を使って治療を受ける場合には、保険者への届出が義務付けられています。加害者へは、届出の内容に基づき、過失割合等に応じて請求することになります。

7.その場で話し合って別れたから、相手の名前などはわからない。

 その場合、示談成立とみなし、国民健康保険で治療を受けることはできません。安易に「大丈夫」と言わず、今後治療が必要になる事態も想定して、必ず相手の氏名・住所・連絡先・保険会社(任意保険等)などを確認しましょう。

8.仕事中の怪我では保険証は使えないの?

 仕事中のケガは労働災害保険(労災)の対象となるので、国民健康保険で治療を受けることはできません。ただし、自営業の場合、又は仕事中であっても労災の対象とならない場合には、届出をしていただくことで国民健康保険で治療を受けることができます。

9.示談後も病院に行きたいが、保険証を使ってもよいか?

 今後の治療を含む示談を結んだ場合、国民健康保険で治療を受けることはできません。

 ※示談金には窓口で支払う分と国民健康保険で立て替える分が含まれている場合があります。示談後に国民健康保険を使って治療を受けた場合、国民健康保険で立て替える分を二重に取得したことになりますので、その分の医療費を返還していただきます。

【注意】示談成立前に国民健康保険が立て替えた医療費は加害者へ請求しますが、示談後に立て替えた分は被害者へ請求します。示談をする前に、必ず連絡をいただくとともに、完治していない場合には、示談書に「保険者負担分の医療費を加害者が保険者に賠償する」等の但し書きを盛り込むようにしてください。

10.自転車同士、自転車と歩行者の事故も届出が必要なの?

 自転車同士、自転車と歩行者の場合でも相手がある事故になりますので、届出が必要です。その場で安易な判断をせず、今後治療が必要になる事態も想定して、必ず相手の氏名・住所・連絡先・保険会社などを確認しましょう。