手すき和紙のぬくもりを多くの人に感じてほしい

山谷自治会

平泉文化と東山和紙のかかわりについて学ぶ会員

東山町長坂の山谷地区に伝わる東山和紙づくり。

今から約800年ほど前に始まったといわれ、戦のない平和な世の中になることを望んだ藤原清衡の時代、写経用の和紙が大量に必要になったため、紙すきの技術を取り入れ、東磐井地域一帯で作られるようになったと考えられています。
平泉文化と深いかかわりのある東山和紙。

長い歴史の中でも特に、江戸時代末期から明治時代にかけて盛んに行われました。

近代化ともに西洋紙が普及し、和紙の需要が減少。

山谷地区では現在、職人は3人だけで、後継者育成と和紙の普及が課題となっています。
地域の伝統産業である東山和紙を後世に伝え、普及と需要拡大につなげたいと、山谷自治会(鈴木英一会長)が主体となり、市の地域おこし事業の補助を受けて、山谷手すき和紙伝承事業に取り組んでいます。
紙すきに必要な清流を守るための山谷川周辺の環境整備活動や和紙づくりの体験学習、和紙を題材としたお面やあんどん、紙布織の小物づくり、和紙作品展の開催など、和紙に親しんでもらうためのさまざまな取り組みが予定されています。
事業の第一弾として、6月、山谷地区の入り口にある「和紙の里」看板の塗り替え作業が行われました。

7月10日には「藤原文化と東山和紙」と題し、いわて東山歴史文化振興会の佐藤育郎会長が講演。参加した住民らは東山和紙の歴史と平泉のかかわりについて、認識を深めました。
「東山和紙の魅力は、とにかく丈夫なこと。年数を経るごとに色が白くなる。そして何より、和紙ならではのやさしさとぬくもり」と語るのは山谷自治会地域おこし部会の佐藤時雄さん。

「和紙の魅力を知ってもらい、身近に感じてもらうことが、伝統産業を守る第一歩になる」。和紙を使った物づくりや紙すき体験を通じて、たくさんの人に東山和紙について理解を深めてもらいたいと、参加を呼び掛けています。
「和紙は、工夫すれば生活の身近なものに利用できる。今は何でもお金を出せば買える時代。そんな時代でも、人々は何か生活に潤いを求めている。柔らかで独特の風合いを持った和紙を生活に取り入れることで、少しでも心が癒されれば」と願う佐藤さんです。

(広報いちのせき 平成22年8月1日号)