神楽好きが集まって結成、伝統の舞を習得し伝承を

いずみの国弥生まつりで上演する白浜神楽会(同会提供)
いずみの国弥生まつりで上演する白浜神楽会(同会提供)

昭和45年に神楽好きの8人が集まり、花泉町の大門神楽に教わり活動を始めた同町の白浜神楽会(千葉良夫代表)。
南部神楽の真髄を伝授された同会は、「見やすく、聞きやすく、分かりやすい」舞台を目指し、せりふを書いた紙を客席に配布し、初めて神楽に触れる人にも楽しく鑑賞できるように観客の立場に立って神楽の魅力を伝えています。

南部神楽とは、世界無形遺産に指定された早池峰神楽(花巻市)と法印神楽が交雑してできた、全国にもまれな劇神楽。
「元々は豊作の感謝や翌年の平穏を願う神前での祈祷舞だった神楽。その余興として、各地の伝説や神話に基づいた物語を演じたものが、現在では主流になっている」と話す同代表。
せりふもなく緩やかに演舞する祈祷舞よりも、せりふがあって物語の展開により踊りに緩急がある劇神楽が好まれてきたそうです。

地元神社での祭りで初舞台を踏んで以来、研さんを積み重ね、近隣市町村の神楽大会では常に上位入賞を果たし、神社のお祭りで1週間連続公演するなど出演機会も増えてきました。
発足当時は、「道具がそろっていないので、風呂敷を幕代わりに使ったり、面は見よう見まねで彫って作製した」と当時を振り返る同代表。
今では演目も20を数え、その場に合った演目を披露しています。

近隣市町村だけではなく、北海道や東京など全国の神楽大会や伝統芸能にまつわるお祭りにも招待されるようになりました。
平成16年には、大阪府和泉市で催された「いずみの国弥生まつり」に出演。
安倍晴明千年祭の一環として、晴明出生を描いた演目「葛の葉子別れ段」を1300人の前で披露しました。

また、今年3月には和泉市の公演会場に震災で活動が出来なくなった神楽団体のための募金箱が設置され、同会にも活用してほしいと義援金が届けられました。
「地震で壊れた面の修復に活用したい」と遠く離れた地からの温かい気持ちは、今後の活動の励みにもなりました。

神楽好きの親に感化され、自分も神楽を好きになったと話す千葉さん。
今でも、親に肩車をしてもらって神楽を見たことを覚えているそうです。
物語を暗記し、足を使って踊ることは、自身の健康の秘けつにもなっています。

先人たちが、自然の神様への感謝の念を込めた神楽「祈祷舞」を習得し保存する機会は今しかないと語る同代表。
先人からの地域伝統を受け継ぎ、なお一層の努力を惜しまない同会の思いは、しっかりと後世へと伝承されようとしています。


 

(広報いちのせき 平成23年9月1日号)