小菅正晴教育長が令和3年2月22日、令和3年一関市議会定例会第83回2月通常会議で述べた教育行政施策の要旨をお知らせします。

1.はじめに

◆今日の教育を取り巻く社会環境は、急激にグローバルに変化してきております。

 そのような時代を生き抜く人材の育成を目標として、キャリア教育の推進、ICT活用能力の育成、特別支援の充実、いじめや不登校への対策、幼児教育の振興、持続可能な開発目標(SDGs)の理念をふまえることなど、教育の質の向上が一層求められております。
 また、市民の学習意欲の高まりに応じた多様な生涯学習機会を提供することや、先人からの文化を受け継いでいくこと、文化財を保護し、活用することが求められております。
 これらの教育への社会的要請に応え、一関の持続的な発展を支えていくためには、生涯学習の機会を促進するとともに、将来を担う心身共に健やかな人材の育成が欠かせません。
 子どもたちが、ふるさと一関に誇りと愛着を持ち、知徳体の資質を兼ね備えた地域を支える人材に成長するよう、教育行政を推進してまいります。 

2.重点的に取り組む施策(重点プロジェクト等)

◆令和3年度は、教育振興基本計画後期事業計画の初年度であり、計画の目標に掲げた「学びの風土を礎に 心豊かにたくましく 郷土の誇りを未来につなぐ 一関の人づくり」、この実現に向けて、四つのプロジェクトを重点としながら、計画を着実に推進してまいります。

 それでは、四つの重点プロジェクトから、申し上げます。

(1) ことばを大切にする教育プロジェクト

◆ 一つ目は、「ことばと読書」、「ことばの響き」、「ことばの先人」を柱として、子どもたちに、語彙の豊かさ、ことばの感性、心の豊かさを育むことを目指す「ことばを大切にする教育プロジェクト」であります。
 「ことばと読書」については、学校図書館の一層の充実のため、これまで東地区に限られていた学校図書館のネットワーク化を市内全域に広げ、バーコード読み取りによる貸出しと蔵書管理の一元化を図ります。
 「ことばの響き」について幼稚園等では、「ことばの時間」に響きやリズムのよい諺などに楽しみながら触れさせてまいります。
 小学校では、市が独自に作成し、この度改訂した「ことばのテキスト『言海』」を用いて、音読・素読に取り組み、一層の質の向上を目指しながら、ことばの感性を高めてまいります。
 「ことばの先人」については、「ことばのテキスト『言海』」の先人ページを取り上げること、また博物館学芸員が小中学校において、ことばを通じて人々に大きく影響を与えた先人を学ぶ授業を行うことにより、郷土の歴史に対する理解を深め、郷土への誇りを育んでまいります。

(2) グローバル人材育成プロジェクト

◆二つ目は、グローバル化していく現代社会に対応できる人材の育成を目指す「グローバル人材育成プロジェクト」であります。
 キャリア教育については、「地域に学び、地域で育てる」という視点に立って、全ての中学2年生が5日間の社会体験学習に取り組んでまいります。
 また、中学生最先端科学体験研修や小中学生を対象とした英語の森キャンプの実施、外国語指導助手(ALTや英語学習指導専門員)の派遣などを進めてまいります。加えて、英語検定料補助を通して、英語の力を高めようとする中学校生徒の意欲を支援します。
 さらに、GIGAスクール構想に基づき、学校のICT環境を充実させ、小中学校の授業において1人1台タブレット端末の活用を推進してまいります。
 併せて、グローバル化する社会にあっても土台となるアイデンティティを確立させるため、郷土の先人や歴史・文化を題材にした学習を進めてまいります。

(3) 学校と地域の協働推進プロジェクト

◆三つ目は、地域とともに歩む学校を目指す「学校と地域の協働推進プロジェクト」であります。
 学校の情報や活動の様子をホームページ等で発信するとともに、学校運営に保護者や地域住民が学校評議員や学校運営協議会として関わるなど、地域社会全体で子どもたちの健やかな成長を育む取組を進めてまいります。

(4) 世界遺産拡張登録推進プロジェクト

◆四つ目は、骨寺村荘園遺跡の世界文化遺産拡張登録を目指す「世界遺産拡張登録推進プロジェクト」であります。
 拡張登録の実現に向け、研究者など専門家の助言をいただきながら、重点的に文献研究や発掘調査を行うとともに、県・関係市町と連携して取組を進めてまいります。
 また、重要文化的景観「一関本寺の農村景観」の保全活用に地域住民と協働で取り組むとともに、骨寺村荘園遺跡の理解を深めるため、骨寺大学や講演会を開催してまいります。

(5) 教育環境の充実

◆そのほか、児童生徒数の推移や学校施設の老朽化の状況などを踏まえ、より良い教育環境の確保のため、学校規模の適正化を進めております。
 今後の計画としては、令和4年度に室根地域の2つの小学校を1校に、令和5年度に花泉地域の6つの小学校を1校に、令和6年度に大東地域の3つの中学校を1校に統合する予定であります。
 室根小学校については、令和2年度に引き続き新校舎及び屋内運動場の建設に取り組んでまいります。花泉地域統合小学校についても、新校舎及び屋内運動場の建設に取り組んでまいります。大東地域統合中学校については、統合推進委員会の設置及び校舎改修に係る実施設計を進めてまいります。
 また、令和2年度に実施した耐力度調査の結果を基に、一関小学校の改築について検討してまいります。
 他の地域においても、今後の児童生徒数の推計などを示しながら、地域の方々や保護者等とともに、学校規模の適正化を考えてまいります。

 以上は、令和3年度において特に重点的に取り組む内容ですが、現在の新型コロナウイルス感染症の流行下において、事業の実施については状況を見ながらの判断となります。
 以降は教育行政の具体的な施策について、教育振興基本計画に定める施策の基本方向に沿って申し上げます。 

3.教育行政の具体的な施策

1.社会を生き抜く力を育む学校教育の充実
 一つ目に「社会を生き抜く力を育む学校教育の充実」について申し上げます。
(1) 確かな学力の育成

◆確かな学力の育成については、算数・数学を重点教科に位置づけ、学習支援員の配置による指導を行うほか、基礎計算力、集中力を高めるために、百ます計算に代表される「隂山メソッド」を取り入れるなど、児童生徒の基礎学力の向上を図ってまいります。
 また、「ことばの時間」での音読・暗唱や漢字力の重点化を通して、国語の基礎学力向上に努めてまいります。

(2) 豊かな心の育成

◆豊かな心の育成については、あらゆる教育活動の土台となるものであり、人としての在り方、考え方を常に意識させ指導にあたってまいります。その中心となる道徳教育においては、新学習指導要領で示された「考える道徳・議論する道徳」を推進してまいります。
 このほか、積極的に自然体験、社会体験活動を取り入れ、SDGsの理念とも関連させながら、福祉やボランティア活動などを通して社会に関わる心構えや姿勢を培ってまいります。 

(3) 健やかな体の育成

◆健やかな体の育成については、保健面からは、児童生徒がバランスの取れた食事や規則正しい生活など、望ましい生活習慣について考え、実践していく取組を推進してまいります。
 運動面からは、体育授業の充実のほか、家庭と協力しながら1日60分以上の運動、いわゆる「60(ろくまる)運動」など、日常的に運動の機会を確保する取組を推進してまいります。
 なお、中学校の部活動については、教育委員会と校長会で定めた「部活動の在り方に関する方針」に基づき、引き続き各学校では平日週1日と日曜日を休養日に設定し、体力や競技力の向上とともに健康や生活とのバランスにも配慮した活動を推進してまいります。 

(4) 学校給食

◆学校給食については、安全・安心な給食の提供に努めるとともに、地場産品や「もち」などの郷土食の提供のほか、望ましい食習慣の形成に向けた食育指導を充実してまいります。 

(5) 社会の変化に応じた教育

◆社会の変化に応じた教育については、職業観・勤労観の育成を図りつつ、変化に柔軟に対応する力を育むためのキャリア教育を、発達段階に応じて推進してまいります。
 また、児童生徒1人1台タブレットなどのICTを活用した授業を有効に展開し、学力の定着や、情報活用能力を育成してまいります。そのために、ICT指導員を中心に、教員のICT機器活用能力の向上を図ってまいります。

(6) 特別支援教育

◆特別支援教育については、幼児期からの就学相談体制の充実を図るとともに、幼稚園には、きめ細かな指導支援員を配置し、小学校には学校サポーターの配置を行い、一人ひとりに応じた支援を充実してまいります。

(7) 学校適応指導

◆学校適応指導については、不登校児童生徒の割合が増加傾向にあることから、各学校では新規の不登校児童生徒を出さないことを重点に取組を進めます。
 また、不登校児童生徒に対しては、適応支援教室「TANPOPO(たんぽぽ)広場」における学習支援と交流体験活動などを充実させるとともに、一人ひとりの状況を踏まえながら、ICT機器活用による指導と交流についても研究してまいります。

(8) いじめ対策

◆いじめへの対策については、各学校の「いじめ防止基本方針」に基づき組織的に対応し、いじめの早期発見・早期対応・未然防止に努め、関係機関との情報共有や連携を強化してまいります。

(9) 幼稚園

◆幼稚園については、新教育要領で重点とされている「幼児期の終わりまで育ってほしい10の姿」を念頭に、小学校との連携を密接にし、就学前教育を充実してまいります。

(10) 学校安全

◆学校安全については、放射性物質による汚染対策として、引き続き、学校施設や給食食材等の放射線量を測定してまいります。
 また、スクールガードの巡回指導や地域ボランティア等の見守り活動の協力をいただきながら、登下校時における児童生徒の安全を確保するとともに、災害等の緊急時における行動について指導してまいります。 

(11) 教職員の働き方改革

◆教職員の働き方改革については、業務内容の見直しや勤務時間を意識した働き方を進めるなど長時間勤務の是正を図り、教職員がいきいきと仕事に向かうことができるよう改善を進めてまいります。 

2.ともに学び、まちとひとをつくる社会教育の推進
 二つ目に「ともに学び、まちとひとをつくる社会教育の推進」について申し上げます。 
(1) 社会教育

◆社会教育については、市民が生涯にわたって自ら学ぶことができるよう、ニーズに対応した市民センター等での講座を企画するなど、多様な学習機会を提供してまいります。
 また、これらの取組や地域づくり活動に活かすため、指定管理を行っている市民センターの職員が社会教育主事講習を受講する際の費用等について支援してまいります。 

(2) 家庭教育

◆家庭教育については、家庭での教育やしつけなどを通して子どものモラルの土台が育まれるものであることから、「いちのせきの家庭教育10か条」の普及を図り、教育の原点である家庭教育を支援してまいります。
 また、昨今スマートフォンやゲーム機などの通信機器の利用については、依存やトラブルなどの弊害が多く見られることから、小学生では午後8時以降、中学生では午後9時以降にはそれらを居間に置いて使わない運動(居間8(イマハチ)ルール、居間9(イマキュウ)ルール)を子ども、家庭、学校と協力して進めてまいります。

(3) 図書館

図書館については、市全体の貸出冊数が県内市町村で最多となっており、多くの方々に利用されているところであります。
 今後も、図書館サービスの向上に努めるとともに、令和2年度に導入した電子書籍やデータベースの充実による多様な読書方法の提供に努め、市民が集う地域の情報拠点としての役割を一層高めてまいります。
 また、市内8館が地域の特色を生かした運営を進めるとともに、学校図書館への支援や、乳幼児健診等での読み聞かせの実施、移動図書館車による高齢者施設への訪問など、館外サービスにも取り組んでまいります。          

(4) 博物館

◆博物館については、市民はもとより、周辺市町村をはじめとして全国各地からの入館者もあるなど当地方における歴史や文化に対する関心が高まっていることから、更なる運営の充実に努めてまいります。
 令和3年度は、令和2年度に新型コロナウイルス感染症の影響で開催できなかった企画展、棟方志功展のほか、奥の細道サミットin平泉・一関関連事業として、松尾芭蕉などの当地域を旅した人々とその影響を紹介する特別展を開催してまいります。
 また、テーマ展や各種講座、体験学習など事業の充実に努めるとともに、スマートフォンを活用した展示ガイドを導入してまいります。併せて、民俗資料館、芦東山記念館、石と賢治のミュージアム及び大籠キリシタン殉教公園についても、企画・展示の充実を図るなど、身近な場所で地域の歴史・文化が学べる場を提供してまいります。

3.誇りと愛着を醸成する文化の継承
 
三つ目に「誇りと愛着を醸成する文化の継承」について申し上げます。 
(1) 文化財の保護    

◆文化財の保護については、文化財の修繕や保護活動への助成等により、地域の文化財を良好な形で後世に伝えてまいります。
 また、文化財等の標柱解説板整備により、当市の歴史や文化の理解促進と文化財保護意識の啓発に努めてまいります。 

(2) 地域文化の伝承

◆地域文化の伝承については、民俗芸能の調査研究を進めるとともに、郷土芸能団体の活動を支援するほか、地域ゆかりの偉人・先人たちについての調査研究に努めてまいります。 

4.おわりに   

 以上、令和3年度の教育行政施策の概要を申し上げましたが、令和3年度は、一関市教育振興基本計画後期事業計画の初年度にあたります。向こう5年間の教育の方向性を見据えつつ、計画的にその初年度に取り組んでまいります。
 なお、現在進めている施策や業務について、スクラップアンドビルドの原則に立ち、より効果的で真に必要なものに精選していく、不断の見直しの視点も大切にしてまいります。

 各施策の推進にあたっては、学校、家庭、地域、企業、行政が共通理解のもと、当市の教育行政に携わる全ての関係者の連携・協働が必要であります。

 教育委員会といたしましては、地域資源を活かした教育行政施策を進め、郷土の誇りを未来に引き継ぎ、新たな創造を加えてまいりたいと考えておりますので、議員各位並びに市民、教育関係者の皆さまのご理解、ご協力、ご指導を心からお願い申し上げます。