八幡神社算額はちまんじんじゃさんがく(復元)
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千葉胤秀(ちばたねひで)門人ほか奉納 天保9年(1838)12月 縦110cm、横195cm 2面 |
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一関市釣山にある八幡神社に奉納された算額です。 算額とは、神社仏閣に奉納した数学の絵馬で、多くは数学の問題とその答え、答えを出す方法を書いています。17世紀中ごろには各地に算額が奉納されていたようで、現存する最古のものは、星宮神社(栃木県佐野市)の天和3(1683)年のものです。 何日かかってもできなかった問題が、ある日突然パッとひらめいて解けたとき、これを神や仏が暗示を与えてくれたおかげと考え、感謝の気持ちや学業成就を祈願して算額を奉納したと思われます。人の集まる寺社に掛けられた算額は、多くの人の目に止まり、奉納した人の数学の実力を広く知らしめることになります。算額は研究発表の手段でもあったのです。全国を旅して算額の問題を研究する人が現れ、算額の問題集も出版されています。算額は知的好奇心をくすぐり和算発展の原動力となりました。 和算には、いろいろな問題がありますが、算額の問題は図形に関するものが圧倒的です。人目につくことが大切な要素ですから、美しく目立つことが重視されたためと思われます。文章はできるだけ短く簡潔にし、問題の条件は図の中に入れられています。解法も書かれていますが、簡潔すぎて、それだけを手がかりに答えを導きだすのは困難です。 岩手県内の算額の問題をみると、中学生でも解けるものも若干ありますが、高校生以下で解けるものは一割位といいます。 この算額は、千葉胤秀の門人22名によって奉納されたもので、各人が1問ずつ、11問で1枚をなし、2枚対のものです。胤秀の息子二人を含む、弟子の中でも精鋭たちによる奉納とあって、難問ぞろいで、県内では最も優秀なものと考えられています。残念なことに、火災のために焼失していましたが、和算家が問題を写して解答を書いた冊子がみつかり、それをもとに復元することができました。 現在見ることのできる算額は、年月を経て、色あせ文字も読みにくくなったものがほとんどですが、奉納当初は、この復元算額のように色彩豊かで華やかなものだったことでしょう。 岩手県内にある算額は104枚(2014年2月現在)。これは福島県に次ぎ全国2番目の数です。市町村では全国一の67枚を有する一関市をはじめ、県南部でその約8割を占めます。そのほとんどが千葉胤秀の影響によるものです。 |
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