より魅力あるまちを目指して今年度から本格的に進められている「協働のまちづくり」。
それは、新しい支え合いの仕組みを構築し、できることから実践すること。
地域の元気を引き出し、伸ばす その主役は、わたしたち一人一人です。

京津畑老人クラブ主催で11月16日行われたふれあいグラウンドゴルフ大会には子ども10人と保護者、会員合わせて約40人が参加。地域のお年寄りが「先生」となり、大切な“孫たち”と温かな交流が行われました

地縁を見直す

地域の共同体の一番の基本は、自治会など、地縁でつながる「コミュニティー」。
地域の将来像を自分たちで描き、目標達成に向けて活動しているコミュニティーを紹介します。

京津畑自治会

「『おいしい』と認められうれしい」 郷土食と神楽をきっかけに地域の良さを再発見

自慢の菓子や弁当を地域に供給する郷土食研究会「やまあい工房」

市役所大東支所から車で約25分、市の最北端に位置する京津畑自治会。標高約330メートルの山あいで、冬の積雪や寒さはひとしお。住民自らが「陸の孤島」と呼んでいます。現在56世帯で人口164人。地元の京津畑小は平成18年3月に閉校し、高齢化率は46パーセントに達します。

少子高齢化が進む厳しい状況の中にも、「地域に元気を」とさまざまな活動を進める同自治会。「県いきいき中山間賞」「県元気なコミュニティ100選」に選ばれ、注目を浴びています。
「きっかけは神楽と郷土食」と振り返る菊池建自治会長。中断していた地区の祭りを平成6年、神楽保存会の設立を機に「京津畑神楽まつり」として実施。8年の祭りでは、女性たちがおやつとして振る舞った「がんづき」が大好評を博しました。祭りは徐々に進化し、12年からは各家庭が自慢の料理を持ち寄って自由に試食ができる食のイベント「京津畑・食の文化祭」として定着しました。
「ほかの人たちに『おいしい』と認められるとうれしい」と菊池会長の妻、カネ子さん。家族のための料理とはまた違うといいます。「春から、『今年は何を出そうかな』と考えて山菜を塩漬けにしたり、野菜を植えたり。地区の女性たちの大きな張り合いになっています」と語ります。口コミで評判が広がり、次第に地区外からも多くの人が訪れるように。19年に「思い出のおふくろの味、郷土の味、大集合!」のテーマで行った同文化祭には、遠くは仙台市からなど約600人が集まりました。
旧京津畑小の利用について検討するプロジェクトチームの会議同文化祭での「こんなにおいしいんだから、売らないともったいない」との声から郷土食研究会「やまあい工房」(懸田等代表、会員13人)が13年に発足。山菜の漬け物からスタートし、げんべた、大福、おはぎといった昔のおやつが加わりました。16年からは仕出しも手がけ、大東町内を中心に、地域のイベントなどに弁当を提供しています。「仕出しの需要がこんなにあるとは」と驚く懸田代表。既成の加工食品は一切使わず、すべて手作りが飽きない味の秘けつ。毎週火曜は、注文を受けて地区内の高齢者世帯におかずの配達も行い、喜ばれています。
これまで地区の拠点だった旧京津畑小校舎を、グリーンツーリズムと地区の集会所機能を持った施設に整備しようと、現在プランを作成中。地区内の若手を中心とした19人が施設整備プロジェクトチームとして、地区の将来の夢や構想を踏まえた整備案を検討中です。
9月に中学生以上の全住民を対象にアンケートを行ったところ、回答率80パーセント以上、120人もの人たちから地域への願いが寄せられました。「関心の高さと住民の地域に寄せる熱い愛着の思いを改めて感じた」と同プロジェクトチームの伊東光浩リーダー。「地域の将来について真剣に考え、提案して参加する姿勢がこれからの地域づくりの必須条件であり、本当に大きな力になると気付かせられた」
長年住民の心のシンボルだった校舎は地区の新たな拠点として、23年の利用開始を目指して生まれ変わろうとしています。

一関16東区

小さなあいさつの積み重ねで安全安心な地域をつくる

ごみステーションでの声掛けは大切なコミュニケーション

「引っ越しで転入してきた世帯には、必ず翌年班長になってもらいます」と一関16東区の河島一男区長は語ります。下之橋の南側に位置する同区は約250世帯。古くからの住民と新しい住民が混在する、典型的な都市型の自治会です。
「班長になれば自然と地域も人も覚える。転入してくるのは若い子持ちの人たちが多いので、子どもたちを地域の人に知ってもらうきっかけにもなる」と効果を語ります。
通学路の途中にあるごみステーションでは、ごみ当番の役員が毎朝子どもたちに声掛けをしています。「時には注意することもあるが、知っている大人からなら、しかられても子どもは素直に聞いてくれる」。また、同区の防犯活動の費用は、ごみ資源の分別を徹底し捻出しています。
同区の活動で特徴的なのが企業と連携した災害への備え。地区内のスーパーマーケットの倉庫に同区用の水と食料を常時置かせてもらい、災害時にそれを使えるようにする、という契約を準備中です。今後は災害時の機動力を高めるため、地区内の企業の重機を使わせてもらえるよう話し合う予定です。
防犯・防災は安心して暮らすための大切な基盤。「大げさな活動は行っていないけれど、顔の見える関係を築くための小さな積み重ねが、いざというときの安全につながるはず」と河島区長は語ります。

志縁をつなぐ

今や地域課題を解決するために欠かせない力となったボランティアや市民活動など特定の目的の下に集まった人たちで構成される志縁型共同体、「アソシエーション」型組織の活動事例を紹介します。

市街地に人を呼び込もうと11月9日、千厩町のまちの駅で行われた「自慢の鍋フェスタ」には、地元食材を使った9種類の鍋料理が勢ぞろい。来場者は熱々の品を食べ比べました

協同組合千厩新町振興会

“商店街に人を呼び込みたい”JaJa馬プラザを核にイベントでにぎわいを創出9月13日行われたJaJa馬ミュージックフェスタには15組のバンドが出演。ライブを楽しむ若者が集った街はいつもと違う表情を見せました

モータリゼーションの進展と郊外型大型店の進出などにより、中心市街地はかつてのにぎわいを失いつつあります。そんな中、市街地に人を呼び戻そうと季節ごとにさまざまなイベントを企画しているのが協同組合千厩新町振興会(金野茂人理事長、組合員33人)です。
同会は、平成17年12月にオープンしたまちの駅「新町JaJa馬プラザ」を指定管理者として管理運営。まちの駅には地元産直グループとイタリア料理店がテナントとして入居し、乗用車約20台の駐車が可能です。
「中心市街地に核店舗がほしかった」と金野理事長。「千厩には以前、本町の東愛デパートという核店舗があったが閉店。今はまちの駅が核店舗として機能している。駐車場をイベント会場として使えることは大きい」と続けます。
同日には荷車市も行われました同会は今年度、まちの駅3周年に合わせて、市の地域おこし事業を活用しせんまや夜市とタイアップしたイベントを実施。若者を呼び込んだ9月のJaJa馬ミュージックフェスタ、市内の食の匠らを招いた10月のスローフード市、地産地消を進めようと行った11月の自慢の鍋フェスタなど5事業を行いました。食がテーマのイベントは、「まちの駅のテナントで組合員でもある、農家の皆さんでつくる『せんまや青空市組合』があるからこそ」と金野理事長。まちの駅が「まち」と「さと」の交流拠点となっています。
平成12年、街路の区画整理が完了した新町商店街。その区域内で「シャッターが下りている店は1軒もない」と胸を張る金野理事長。「商店街の売り上げは、この景気だし、落ちていると思う。しかし新町は落ち方が緩やかなのではないか。まちの駅建設も、区画整理したからこそ実現できた」と分析します。
自らは事務用品店を経営する金野理事長。「商売を行っている者として、とにかく商店街に人が来てくれることが一番うれしい。昭和57年にスタートしたせんまや夜市、そして季節ごとのイベントは確実に起爆剤になっている」と語り、「若者が楽しめる商店街に」と将来を描きます。

NPO法人北上川サポート協会

清掃、釣り、ボート― 楽しみ通し川の大切さ伝える

船を使っての北上川の清掃を続けている北上川サポート協会 川崎といえば北上川、そしてEボート大会。平成7年から続く同大会を主管として支えているのがNPO法人北上川サポート協会(吉田達男理事長、会員52人)。指定管理者として市の川崎防災センターを管理し、河川調査船「ゆはず」を運行しているほか、砂鉄川の釣り大会、ほたる探偵団、川の清掃など、行政や地域と連携しながら川に親しむ活動を展開しています。
「川で遊ぶのは面白い。この楽しさを子どもたちに伝えたい、というのが活動の原点」と同会の齋藤一公事務局長。Eボート大会では約150人のボランティアスタッフを束ねますが、この大会が続いているのも「楽しいから」。「川崎には参加型の祭りがなかった。何かしたい人がスタッフに加わっているし、自治会や職場など、大会参加の半分は地元川崎のチーム」と胸を張ります。
地道な活動も続ける同会。船を使っての北上川の清掃はこの5年間、春秋の年2回行い、川面から木に引っ掛かっているビニール袋や水際の空き缶などを回収しています。
清らかな水のシンボルといえるホタル。同会は7・8年、13・14年、19・20年にほたる探偵団を結成し、子どもたちと調査を行っています。「門崎にはホタルがいなかったのに、10年の水害以降に河川改修した風呂川などで17年ごろから多く発生している。コンクリート護岸でない多自然型工法は、効果があるようだ。今後も見守り続けたい」と齋藤事務局長は川への思いを語ります。
地元川崎中では、3年生がEボート大会に出場し卒業するのが恒例に。舞川中、大原中など、市内の他の地域の学校やPTAのEボート、カヌー体験も受け入れています。川の面白さを知る子どもたちが将来、この川の大切さを次世代に伝えてくれるに違いありません。

NPO法人いわて発達障害サポートセンター「えぇ町つくり隊」

商店街と連携して自閉症の人に優しい街づくり
自閉症の子どもたちが商店街での買い物を体験する「えぇ町探検隊」

自閉症の子どもたちが地域の中で豊かに自立して暮らせる町をつくりたい―との願いから15年に設立された「えぇ町つくり隊」(熊本葉一代表)。19年9月にNPO法人の認証を受けました。現在教育、医療、福祉に携わる約20人で活動しています。
同会は▽自閉症児者が地域社会で暮らす技術の獲得▽地域社会の自閉症への理解と支援―が必要と15年秋、保護者との協働でポスター「自閉症のことをわかってください」を制作しました。大町商店街でポスターを張ってもらい、その結果保護者と商店から「ポスターの店には安心して入れる」「安心して来店くださる人や興味を持って眺める人など、よい効果がある」との反響を得ました。
大町商店街との協働で19年作成したポスター。6枚組のうちの1枚19年には第2弾となるポスター「自閉症の子どもたちにはたくさんの親が必要です」を大町商店街との協働で制作。商店の人たちと子どもたちが一緒に登場するポスターを制作する過程で、子どもたちとお店の人たちが顔見知りになり、自閉症への理解が一層深まりました。
 17年から年数回ずつ行っている「えぇ町探検隊」は、子どもたちがボランティアとともに商店街で買い物をするプログラム。協力してもらう店には入り口にステッカーを張ってもらいました。現在では協力店が100店舗近くに増え、子どもたちも店の人と顔見知りになって、日ごろの買い物などができるようになりました。
「活動を通じ、自閉症への理解、そしてその子どもたち自身を分かってもらえるようになった。商店街の皆さんからも『自閉症だけでなく、どんな人も一層優しく受け入れられる商店街にしていきたい』と語っていただいています。この信頼関係を築けたことが何よりの成果」。熊本代表は穏やかに語りました。

協働を知る

市は本年度、より魅力あるまちを目指して市民同士が共に考え行動する「協働のまちづくりへ」への取り組みを進めています。
市が考える「協働」のイメージをお伝えします。

協働の必要性と重要性について共通認識を持ち、その在り方を一緒に考えていこうと6月から行われている市民協働推進懇談会。29カ所で実施済みで、あと1回の開催を予定しています。8月29日、千厩公民館で行われた懇談会には約80人の市民が参加し、活発な意見が交わされました。

なぜ今「協働のまちづくり」?

今、わたしたちの社会は、人口減少や少子・高齢化、国際化、環境への意識の高まりなど、大きな変化の中にあります。また、地方分権改革により、国主導の画一的な行政システムから、地方自治体の自主性・自立性を確保する行政システムへの転換が進められています。さらに、市民の価値観の多様化・高度化、自己実現意欲の高まりなどから、市民自らが地域の問題を認識し、自発的な活動で解決しようと、さまざまな分野でボランティアや民間非営利組織(NPO)による活動が活発化しています。
こうした時代を迎え、地域の特性を生かした個性的なまちづくりを進めるためには、多様な主体がそれぞれの責任を自覚し、役割を適切に分担しながら、相互に話し合い、共に行動する「協働のまちづくり」に取り組んでいく必要があります。

わたしたちがしなければならないことは?

「自分たちの地域は、自分たちで支える」という地域社会づくりの共通意識を持ち、住んでよかったと思える活力ある社会を再構築していくことです。
地域の個性や特性が継続的に発展成長するように、それぞれの地域の事情に見合った事業をつくり出すことが必要です。
「地域のことは、地域で考え、地域で解決する」という自立性の高い住民自治が構築されることで、市民と行政との新たなかかわりのしくみ、「新しい公共」がつくられることになります。そのイメージは左ページ上の図のとおりです。

協働推進の骨格と方策

協働のまちづくりの目的を達成するため、市は次のような取り組みを進めていきます。]

①人材の育成・確保と意識改革

専門家などの協力を得ながら、協働を担う人材を発掘育成していきます。

職員の意識改革を進めるとともに、市民との協議を前提に仕事をする協働型職員の育成に努めていきます。

②各種団体のネットワーク化と拠点づくり

協働の活動を実践している自治会などや各種団体が、目的に応じて連携することができる柔軟な体制を推奨します。
協働パートナーの相互交流、情報交換の場としての役割を想定しながら、活動拠点の具体的な設置と運営手法について検討します。

③参画の拡大

市民が自発的に参画することのできる環境を整備します。
市民の多様な知識や技術などを適時に市政に反映する仕組みとして、あらかじめ各種分野における人材情報を登録する「まちづくりスタッフバンク制度」を引き続き開設していきます。

④市民の意見が市政に反映される仕組みづくり、情報の共有の推進

情報公開条例の趣旨に沿って情報公開を推進するとともに、広報紙やホームページを通じて積極的な情報公開に努めます。
政策決定や事業計画の決定過程において、市民の意見が的確に市政に反映され、市民の皆さんの納得と合意を得ながらまちづくりを進めていくため、審議会やパブリックコメント(意見公募)などの制度を活用していきます。

協働推進のメリットは?

住民、企業、団体、行政などが入り口段階から相談し、互いに良くなる地域を思い描くことで、目標の統一(共通意識) ができます。
みんなで相談し、手段を決めることで納得性の高い地域社会をつくることができます。
具体的な活動をすることで、自分の住んでいる地域に興味や関心を持ち、まちづくりがより身近に感じられます。
行政が実施する事業に対する理解が深まります。
市政運営全般に対する相互理解が進みます。

具体的には何をすればいいの?

まずは、地域づくりについての話し合いから始めましょう。
【話し合い参加のルール】

1.量が大切です

一般的な考え方・アイデアはもちろん、あらゆる提案を歓迎しましょう。

2.批評・批判をしないように

多くのアイデアが出そろうまでは、批評・批判はしないようにしましょう。

3.思いつきが大切です

論理的で、正当性の高いアイデアも大切ですが、奇抜な考え方やユニークで斬新なアイデアも大事にしましょう。新しい発想は、最初は笑いものにされたりすることも多いものですが、そういった提案も重視することが大切です。

4.アイデアをつないで発展させましょう

別々のアイデアをつないだり、一部を変化させたりすることで、新たなアイデアを生み出していくことができます。

新しい公共のイメージ

従来の公共のイメージこれからの公共のイメージ

問い合わせ先
本庁協働推進課 電話0191-21-8671

参画を進める

「まちのためにできること」「みんなのためにできること」を身近な分野で実践している皆さんを紹介します。
「協働のまちづくり」に参画することは難しくありません。
すぐに取り組めることから始めてみませんか。

「養子縁組」で公園管理

公園整備時にはのり面に住民と社員が一緒にシバザクラを植えました

施設を養子と見なし、住民や企業が『里親』となり、定められた施設を責任を持って維持管理を行う「アドプト」(養子縁組)制度。千厩町で貴金属を中心とした資源リサイクル業を行っているニッコー・ファインメック(株)は平成19年9月、市と協定を結び、「千厩おくたま親水公園」の草刈りや清掃などの維持管理を行っています。
「創業から35年、地域に育てていただいた恩返し。企業市民としての社会貢献活動であるとともに、社員が地域の一員であると実感できる場にもなっています」と同社の小野寺司代表取締役は語ります。

キャンドルの炎に願いを

19年夏至の日、花と泉の公園で行われたキャンドルナイト

「でんきを消して、スローな夜を。」をキャッチフレーズに、夏至と冬至の日に電気を消して過ごそうと呼び掛ける「100万人のキャンドルナイト」。この全国的に行われているイベントが、市内ではNPO法人グリーンハート(高橋利巳理事長)の呼び掛けで、平成17年から行われています。
「地球温暖化防止を考えるきっかけにしてほしいと行っています。環境だけでなく家族、平和など、暗闇の中で大切なことを考えてもらえれば」と高橋理事長。今年の冬至、あなたも参加してみませんか。

登山道整備で内外と交流

ツツジの名所大森山の登山道整備を行う上津谷川自治会

室根町の大森山(760メートル)は気仙沼湾や室根山などが眺望できる、ヤマツツジの名所です。
ヤマツツジが満開を迎えるころ、県内外から多くの観光客が訪れる同山。地元の上津谷川自治会(及川晴道会長、67世帯)は、平成5年から自治会員総出で山頂の下草刈りや登山道の整備を行っています。中腹にはあずまや、山頂に花見やぐらを設置するなど、訪れる観光客に配慮。自治会はもちろん、他地域からも多くの参加があり、交流の機会になっています。

未来につなげる

「協働」という言葉に対するイメージはさまざまです。
市民と学識経験者からそれぞれが考える「協働のまちづくり」を聞きました。
これをヒントに、皆さん一人一人の行動につなげていきましょう。

前田眞さん
失敗を恐れず行動に移し地域を面白くできれば

前田眞さん

協同組合産直センターひがしやま理事長
平成3年東山町にIターン後、リンゴ園を経営。束稲自治会長。まちづくりスタッフバンクに登録し市行財政改革推進審議会委員など務めている。

社会とかかわるのは面白いことです。東山町に住んで以来、「周りが良くならないと、自分も良くならない」と農業や地域のさまざまなことにかかわってきました。生まれは関西ですが、大阪では百貨店でも値切るのが当たり前。東北の人は、失敗を恐れて我慢しているような気がします。
地域を運営する上で、年配の方はどうしても昔からのしがらみがあります。わたしはよそ者なので、あえて波風を立てて新しいことに挑戦するきっかけになればと思い行動してきました。
産直にかかわっていますが、産直は努力が目に見えます。工夫を重ねることで、70歳のおばあさんでも、時には1日10万円稼ぐこともあります。
地域のことに関しても同じ。これまでは行政に大きく頼ってきましたが、今後は自分たちが考えて行動しなければならないことが増えるでしょう。最初から完璧な結果を求めず、失敗しても学んだことを次に生かせばいいはずです。楽しみながら、さまざまなことにアンテナを張ることで、地域を面白くしていければ―と考えています。

櫻井常矢さん
新たな社会の豊かさをはぐくむ協働のまちづくり

櫻井常矢さん

高崎経済大学地域政策学部准教授

当市の協働のまちづくりの「市民講演会」やワークショップで講師を務めているのをはじめ、各自治体で協働のまちづくりをサポート

“協働”は、近年各地が模索しているまちづくりの手法です。現在の私たちの暮らしに目を向けてみると、過疎と高齢化、一人暮らし高齢世帯の増加、子育て、災害、環境問題、地域産業の衰退など難しい課題に直面しています。そしてこの中には、行政だけでは解決できないものが多く含まれています。ご近所の人間関係こそが力を発揮しそうなもの、志縁といわれるNPO、あるいは事業者などの力を借りることによって解決できるものなど、住民相互のさまざまな関係づくりが可能性を広げていきます。また、一関市のような合併自治体では、その多様な地域性に照らした時、行政と地域・団体との新たな関係も求められます。各地では、住民、行政双方によるこうした協働への高い関心と実践が進んでいます。
こうした関係をつくるには、自分の組織・団体として「できること」と「できないこと」への認識が不可欠です。自らの課題や特性を理解していなければ、周囲と力を合わせようとは思わないでしょう。地域も同様です。自分たちの地域の課題や魅力を、まずは住民自らの言葉で語り合える地域にしていくことが協働への第一歩です。従来からの地域リーダーに加え、若者も女性もよそ者も、皆が地域のこれからを自由に語ることのできる場づくりが重要です。それはまた、実に楽しいプロセスでもあります。地域にまだ顔を出さずにいる多様な意見やアイデア、人材、情報などを見いだしながら、地域づくりを新たな段階へと進めることを意味するからです。
まちづくりは、行政だけで進めるものでもありません。かといって、住民やNPOだけで担うものでもありません。だれかの独占物ではないのです。「まちはみんなでつくるもの」。とてもシンプルで分かりやすい、しかしそう簡単には実現できないこのことを、今の時代に生きる私たちだけではなく、この一関を担う次の世代にも引き継いでいこうではありませんか。
そうした地域への愛着と誇りを、世代を超えて積み上げていくその厚みこそが、これからの社会の豊かさの一つとは言えないでしょうか。ともに楽しくこの歩みを進めていきましょう。

 

(広報いちのせき平成20年12月1日号)