平成17年11月23日、一関市総合体育館で行われた合併記念式典。新市の誕生を祝い、発展を誓い合いました

平成17年9月20日に7市町村の合併による新しい「一関市」が誕生してから、約3年半が経過しました。
合併で私たちの暮らしがどう変わったのか、その検証には中長期的な観点が必要ですが、現時点までの効果について整理しました。

市民生活の利便性向上を目指した取り組み

効果1 市民サービス窓口の増加

○合併により、本庁・各支所のどの窓口からでも住民票などの各種証明書の発行を受けることが可能となりました。
○市内のどの図書館からでも図書の検索や予約、受け取り図書館の指定が可能となり、インターネットからもサービスを受けられるシステムを、19年10月から運用開始しました。

効果2 専門職員の充実

専門職員を効率的に配置・増員することが可能となりました。また、今まで配置の困難だった分野に専任の職員を配置することができました。
合併で新設や拡充した主な専門職員は、次のとおりです。
▽家庭児童相談員…3人配置
▽障害児保育専門員…障害児保育を実施する園に6人配置
▽ケースワーカー…福祉事務所設置により9人配置
▽就職アドバイザー…ジョブカフェ一関に1人配置
▽幼児ことばの教室専任指導員…市内小学校3校に配置
▽ことばの力を育てる指導員…推進校3校に配置
▽学びの支援員…小学校4校に配置
▽外国語指導助手…市内小中学校に9人を派遣
▽図書館司書…6人配置

効果3 情報通信網の整備と行政基盤の確立

○公共施設間を光ファイバーで結び、地域間の情報格差を是正するための基盤整備を行いました。今後は、その基盤を活用して地上デジタル放送難視聴地域の解消や携帯電話の不感地域の解消に取り組んでいく予定です。
○新市として、自立した行政基盤の確立と住民サービスのさらなる向上を目指し、県からの権限の移譲を積極的に進めています。20年度現在では、パスポートの交付事務をはじめ、各種届け出の受理・認可など815事務の移譲を受けています。
○新市全体を所管区域とする福祉事務所を新たに設置(従来旧一関市以外の地域は県所管)。それに伴い、ケースワーカーを含む社会福祉主事を配置増員し、福祉の充実を図りました。

効果4 子育て支援・高齢者支援

当地域は、少子高齢化と人口減少の進行の度合いが県内でも高い地域であることから、子育て環境の整備や高齢者福祉の充実が求められています。
こうした中、新市としてサービス水準の一層の拡充を図り、安心して子育てができる施策の展開や高齢者支援の取り組みを行っています。

効果5 新規・拡充事業

前記のほか、市民生活の利便性向上を目指したシステムなどの整備、健康づくりに関する事業や雇用創出に向けた企業立地促進事業、安全で快適な道路交通網の整備、農業者に対する支援、次代を担う子供たちの教育環境整備など、新市としての新たな取り組みや、対象・内容を拡大しての取り組みを行うことが可能となりました。

効果4・5に掲げた主な事業などは、下記のとおりとなります。

新規・拡充事業の状況(主なもの) ※新規事業…色文字、拡充事業…黒文字
高齢者支援

○寝たきり高齢者家族介護手当給付(要介護4および5の高齢者の自宅介護を行う者に対し、手当を給付)
○福祉乗車券の交付(独居高齢者(非課税者)などに対し、バス・タクシー券を交付)
○配食給食サービスの展開(おおむね65歳以上の一人暮らし高齢者などに食事サービスを提供)
○家庭訪問歯科診療の実施(在宅の寝たきり者を家庭訪問し、歯科検診を実施)

教育環境などの整備

○義務教育施設整備
○学校給食センター整備
○奨学金貸し付けの拡充(高校生・高専生・大学生などを対象とし、奨学金を貸し付け)

農業者に対する支援

○一関のめぐみブランド化推進(一関の農畜産物のブランド化を進めるため、JAおよび生産者団体が実施する販売促進活動に対し支援)

○骨寺村荘園地区特産品開発(地域資源を生かした特産農産物、加工品等の商品開発)
○繁殖牛生産振興対策(繁殖素牛導入、自家保留に対する補助)
○酪農振興総合対策(優良乳用牛導入、優良受精卵購入、優良精液購入、搾乳施設整備に対する補助)
○肥育素牛地域内保留対策(地域内一貫生産によるブランド化を図るため、素牛導入経費に対し補助)
○担い手育成 (認定農家への助言、指導を行う農業経営指導員を配置増員)
○野菜花き生産振興(振興作物の種苗や資材などの購入経費に対する補助)
○新規就農者支援 (新規就農に必要な研修費用の一部を貸し付け)

歴史・文化の保護、保存

○文化的景観の保全(国の補助制度を活用した重要文化的景観を構成する重要建物の修理修景)
○骨寺村荘園遺跡整備(骨寺村荘園遺跡の史跡および重要文化的景観としての価値の保存などに関する各種施設の整備など)
○ことばを大切にする事業の実施(「ことばの地元学講座」や「ことば」をテーマに絞った事業や講座の展開)
○学びの土曜塾の開設(地域の歴史、文化、自然などを学ぶ学習活動を通じた生涯学習基本態度の養成)
○文化財展開催(旧7地域の県指定有形文化財を中心にした文化財展開催)

市民生活の利便性向上

○携帯電話版市ホームページ制作
○公金コンビニ収納の実施(全国のコンビニエンスストアで納税が可能:21年度開始)
○地域イントラネット基盤施設整備事業

子育て支援

○おやこ広場の開設(乳幼児を持つ親とその子どもが気軽に集い、交流する場の設置)
○病後児保育の実施(仕事等の都合で家庭での看護が難しい病気の回復期にある児童の一時保育を実施)
○AED(自動体外式除細動器)の充実整備(市内全小中学校、市立幼稚園、保育園などへ整備するとともに、法人幼稚園、保育園へ整備費補助を実施:21年度予定)
○特定不妊治療費を助成(特定不妊治療を行った場合にその治療費の一部を助成)
○第3子以降の保育園、幼稚園保育料を無料化(21年度予定)

○乳幼児医療費助成の充実(保護者の所得制限を撤廃し、就学前の乳幼児の医療費を無料化)
○妊婦健康診査の充実(妊婦健康診査の公費負担を14回(現在5回)に拡充:21年度予定)
○産後サポーターの派遣(産後の母親の体力回復と育児を支援するため、サポーターを派遣)
○小児成人夜間救急当番医体制の整備(夜間における小児救急医療体制を整備)

健康づくり

○基本健康診査の拡充(基本健康診査受診者の対象年齢を19歳以上に引き下げ)
○前立腺がん検診の拡充(全地域で実施)

協働のまちづくり

○地域おこし事業(活力ある地域づくりに取り組む団体を支援)
○自治会等活動費総合補助金(コミュニティー組織の地域課題解決に向けた取り組みなどを支援)
○市民活動推進事業(NPO法人との連携により市民活動センターを開設し、相談支援や交流の場を提供)

企業立地促進および支援

○次世代ものづくり人材育成(新入社員などを対象とした人材育成事業)
○岩手県南技術研究センター内に貸し研究室を整備
○人材育成の補助支援(若手技術者の育成支援)

○企業立地促進奨励事業補助金(市内に工場などを設置した企業の設備投資に対し助成)
○企業設備投資奨励補助金(設備投資を行った企業に固定資産税の課税免除、不均一課税を行う)
○中小企業振興資金貸し付け(融資枠拡大、保証限度額拡大および利子、保証料を補給)

安心・安全のまちづくり

○木造住宅耐震診断事業(一般木造住宅などに対する耐震診断を実施)
○木造住宅耐震改修費の助成(一般木造住宅などに対する耐震改修費の助成)

○道路橋梁整備(各道路・橋りょうの新設、改良整備)
○災害備蓄用非常食整備(災害備蓄用食糧の整備)
○自主防災組織育成事業(自主防災組織配布用防災資機材の整備など)

※新規事業…色文字、拡充事業…黒文字

合併に伴う財政支援

効果6~10 合併に伴う財政措置

新たなまちづくりなどの経費への地方交付税措置のほか、まちづくりのための事業に対しての合併特例債や新市全域が「みなし過疎地域」に指定されたことに伴う過疎対策債など、有利な起債が活用できることになりました。
また、新市建設計画に基づき実施する事業や新たな行政課題などに先導的に対応するため必要な取り組みに対しては、国や県から補助金が交付されます。

効果11 各種施設などの整備推進

合併関連財源を活用し、▽道路網や上下水道施設の整備▽子育て支援施設の整備▽教育施設の整備▽歴史・文化の保存活用整備―など、各種施設やネットワークの整備を進めています。

これらの財政支援上の効果をまとめると、下の表のとおりとなります。

合併関係財政措置の状況

区分項目内容期間20年度までの効果額主な活用事業(効果11の一部含む)
効果6地方交付税普通交付税合併直後の臨時的経費への財政措置18~22年度9億8372万円
合併による規模拡大に伴って本来減少する交付税について、合併後10年間は別々の市町村が存在するものとして算定された額が保障(合併算定替)18~27年度95億3456万円
特別交付税合併による新たなまちづくりなどへの財政措置17~19年度9億8001万円
合併の準備に要する経費に対する財政措置17年度129万円
合併市町村の一体性の速やかな確立を図るため合併前に要する経費に対する財政措置17年度1億6962万円
効果7合併特例債等合併推進債合併前の市町村が一体的に実施する公共施設等の整備事業に要する経費の財源として借り入れできる起債(充当率90%、交付税措置50%)17年度2億7350万円○新市電算システム統合
○本庁会議室棟整備
合併特例債(建設事業)新市建設計画に基づいて行う事業などに要する経費の財源として借り入れできる起債(充当率95%、交付税措置70%)17~27年度54億3890万円○大東学校給食センター整備
○小中学校耐震改修
○図書館システム統合
○道路橋りょう整備
○都市計画街路整備
○公園整備
合併特例債(基金造成)市民主体のまちづくり推進のための事業に要する財源とする基金造成を行うもの(充当率95%、交付税措置70%)20~27年度4億7500万円○地域振興基金造成
効果8過疎対策債過疎地域自立促進計画に基づき事業を実施する場合、財源として借り入れる起債(充当率100%、交付税措置70%)17~21年度85億2640万円※上記のうち、みなし過疎により新たに対象となった一関・千厩・東山地域分 35億2120万円○地域イントラネット基盤施設整備
○弥栄・真滝統合中学校建設
○東山中学校屋内運動場改築
○農業農村整備
○道路橋りょう整備
○消防設備整備
○奥玉保育園改築
○上下水道整備
効果9市町村合併推進体制整備費補助金新市建設計画に基づき実施する事業に対し、合併市町村の人口に応じた合算額を市町村建設計画の期間内に補助金交付されるもの18~27年度7億9942万円○内部情報システム整備
○教科書統一による教諭用指導教科書 購入
○災害備蓄用非常食整備
効果10合併市町村自立支援交付金自立に向けた新たな行政課題等に先導的に対応するために必要な取り組みに対し、岩手県が補助するもの18~22年度6億0000万円○地域おこし事業費補助金
○骨寺村荘園遺跡整備活用
○自主防災組織育成

行政運営の効率化

効果12 人件費の削減

合併により三役や議会議員、各種行政委員(農業委員、選挙管理委員、教育委員など)、一般職員などの減少により人件費が削減されました。
合併前(16年度)の旧7市町村(室根高原牧場組合、両磐地区消防組合を含む)と合併後(20年度)を比較すると、約17億872万円の減少となっています。

効果13 物件費の減少

賃金や旅費、需用費などの物件費についても、合併に伴う事務事業の見直しや経費の一括管理などによる効率化が進み、合併前(16年度)と合併後(19年度)を比較すると、約7億8481万円の減少となっています。
人件費、物件費の状況については、それぞれ下の表のとおりとなっています。

効果14 行財政改革の推進

限られた財源の中で、社会情勢の変化と市民ニーズに対応した施策、事業を展開するためには、財政基盤を確立することが重要です。このため市は、市民と行政の連携・協働によるまちづくりと足腰の強い行財政基盤の確立を目指し、18年12月に「一関市行政改革大綱」と、これを着実に実行していくための具体的な実施計画である「一関市集中改革プラン」を策定し、行財政改革を積極的に推進しています。
18~20年度の取り組みによる行財政改革効果額は、集中改革プランでの見込み額を7億7千万円ほど上回る約40億円になる見込みです。その主な取り組みと、見込まれる財政効果額(17年度との比較)は下の表のとおりとなっています。

人件費の状況

区分合併前(16年度)合併後(20年度)比較
特別職首長など37人3人△34人
2億7432万円4741万円△2億2691万円
議会議員(欠員を含む)162人39人△123人
5億3359万円2億4668万円△2億8691万円
農業委員122人48人△74人
3336万円1861万円△1475万円
選挙管理委員28人4人△24人
541万円170万円△371万円
固定資産評価審査委員21人3人△18人
23万円10万円△13万円
監査委員18人3人△15人
682万円533万円△149万円
教育委員(教育長を除く)28人4人△24人
1110万円450万円△660万円
一般職1536人1316人△220人
125億8541万円114億1719万円△11億6822万円
合計134億5024万円117億4152万円△17億0872万円

※いずれも予算ベース。一般会計分のみ計上

物件費の状況

合併前(16年度)合併後(19年度)比較
58億0209万円50億1728万円△7億8481万円

※いずれも決算ベース。

行財政改革の主な取り組みと財政効果額 

こちらからご覧いただけます→行財政改革の主な取り組みと行財政効果額 

(広報いちのせき 平成21年3月1日号)