一関のめぐみをブランドに
豊かな自然と環境に恵まれた当市は、豊富な農産物の宝庫。
全国に誇れる品質のこれら農産物を広くアピールしようと、市は「一関のめぐみブランド化」に重点的に取り組んでいます。
取り組みの概要と、一関産のおいしい農産物について改めて紹介します。
「いわて南牛」販売スタート
2枚並んだ金屏風に、北上川を表した水の流れ、そして良質な稲穂が描かれたマーク―これまでJAいわて南管内は「岩手南牛」、JAいわい東管内は「いわて牛」と異なる銘柄となっていた一関地方の肥育牛を「いわて南牛」に統一して販売し、高級ブランドを目指そうとする取り組みが2月、スタートしました。産地がまとまることで年間約1200頭と、毎週出荷できる体制が整い、市場への安定供給が期待されます。
2月7日、「いわて南牛振興協会」の設立総会が開かれ、ロゴマークが披露されたのをはじめ、会長に浅井市長、副会長に平泉・藤沢の両町長、委員と監事にいわて南・いわい東の両JA関係者を選出。信頼される産地を目指そうと生産者、JA、行政の関係者が誓い合いました。同協会相談役でもある東京食肉市場㈱深石勝専務取締役は、同総会に併せ行われた祝賀会で「岩手県の肥育牛の中でも最高品質のいわて南牛は、昨年の上物率も80パーセント以上と高く、有望銘柄」と期待を込めました。
初出荷の出発式が行われた2月28日には、浅井会長と監事の佐藤憲一JAいわて南組合長が「手塩にかけて育てた牛が東京市場で高値をつけ、名実ともに全国に広がることを期待する」「前沢牛を追い越して全国に名をとどろかせるブランドになることを願う」とあいさつ。東京市場に向けてトラックに積み込まれた36頭を見送りました。
初出荷の牛が出品された第1回いわて南牛枝肉共励会は3月3日、東京都食肉市場で行われ、最高賞の名誉賞に平泉町の千葉文男さんが輝いたのをはじめ、優秀賞と優良賞に6人が入賞。上物率(4・5等級)は86.1パーセントと上々で、関係者は今後に向けて決意を新たにしていました。
地域内での一貫生産が強み
これまで、全国規模の共励会で多くの入賞歴を誇り、高い評価を受けている一関地方の肉牛。どのように牛が育てられているか、先の共励会で出品牛が優秀賞に輝いた佐藤清孝さん(60)=花泉町油島=を訪ねました。
「一番大切なのは観察力」と言い切る佐藤さん。「牛にも性格があり、おっとりとおとなしい牛の方が体重も増えやすく、サシも入りやすい。神経質な牛は太りにくい。人と同じ」と説明します。25歳から和牛肥育に本格的に取り組み、徐々に規模を拡大して現在は年間約25頭を出荷。たい肥は自家の水田と草地に施すとともに、近隣の農家に供給しています。一緒に経営に携わる長男の良さん(33)には「何より牛を見る目を養ってほしい」と期待を寄せます。
ブランド統一については「東磐井の仲間は以前からのライバル。これがいい意味での競争につながり、産地として伸びていければ」と願っています。
いわて南、いわい東両JAの肥育部会は以前から交流があり、すでに飼料も統一したものを使用。肥育農家の多くが一関地方内で育った素牛を購入し育てる、地域内一貫生産が行われてきました。JAいわい東畜産課の藤隆一課長代理は「地域内一貫生産は、安全安心が求められている中、この産地の大きな強み」と強調。「消費者に求められる肉はどんなものか、出荷時に得る市場関係者や仲買人らの声を農家に伝えることで、消費者と生産者の信頼関係が築いていけるはず」と前を見据えます。
消費者から信頼されるために
牛肉以外にも、食味ランキング特Aのひとめぼれ、ナス、干しシイタケ、小菊をはじめ、トマト、ミニトマト、キュウリ、ピーマン、曲がりねぎのエコファーマー野菜など、優れた農産物がある当市。市は「一関のめぐみブランド化推進事業」などで、消費者に信頼される産地づくりを目指しています。
これまで、二つのJA合同の首都圏でのエコ野菜フェア、いわいの花フェアなどによるPR促進活動を支援。21年度は「一関のめぐみブランド」販売協力店の設置、ブランドコンセプトを明確にするための基本戦略の策定なども行っていきます。
ナス
花泉町を中心にJAいわて南管内で栽培が盛んで、エコファーマーに認定された生産者たちにより生産額、出荷額ともに東北一の産地。光沢に優れ、朝取り100パーセントの実施で日本一の鮮度を目指しています。
干しシイタケ
県内一の生産量を誇り、全国品評会では毎年多数の上位入賞を果たすなど、品質では全国屈指。大東町を中心にすべて原木栽培で、春と秋に収穫します。「どんこ」「こうしん」などが有名です。
小菊
千厩町や室根町を中心に市内全域で栽培され、北海道から沖縄まで全国に出荷されるなど東北一の出荷額と生産量を誇ります。寒暖の差を生かし、鮮やかな色で持ちのよい花を消費者に届けています。
(広報いちのせき 平成21年4月1日号)