市は、東京電力福島第一原子力発電所の事故に伴う空間放射線量の測定を継続しています。
6月から学校、幼稚園、保育園で行っている一斉測定は、10月実施分で4回目。
測定箇所を増やしてきめ細かく測定し、測定結果に応じた低減対策を実施しています。
また、各公共施設、自治集会所などでも独自の測定を行い、測定結果に応じた低減対策を講じることにしています。

きめ細かな測定と低減対策で安心を

学校などにおける測定について

放射線による人体への影響、特にも子供の健康に対する不安が市民の間で高まっています。
市は、子供の被ばく線量のさらなる低減を目的に、8月まで実施してきた学校などにおける放射線量の測定とその結果に基づく低減対策の対象を拡大し、9月下旬から10月中旬にかけて4回目の測定を実施しました。

対象施設は、市立小・中学校、私立を含む幼稚園・保育園など(児童クラブ、無認可保育所、事業所内保育所を含む)の全138施設。
過去3回の測定結果を踏まえ、放射線量が局所的に高い値を示す(1)雨水が集まるところとその出口(雨どい、犬走り、側溝、集水ます、屋上やベランダの排水口まわり、雨だれが落ちる軒下など)(2)雨水、泥、土がたまりやすいところ(遊具の周辺など水たまりができやすい場所、コケが生えている箇所、縁石や塀際、コンクリートやアスファルトの割れ目など)―などを重点的に行ったほか、校(園)庭を面的に測定しました。
測定の高さは、中学校が地表面から1メートル、小学校・幼稚園・保育園などが50センチ。
さらに1センチの空間線量も測定しました。

また、低減対策の対象とする箇所については、局所的に測定した箇所は、「測定高に関わらず毎時1マイクロシーベルト以上となった箇所」と、校庭など面的に測定した箇所は、「毎時1マイクロシーベルト以上の箇所が複数あった場合」とそれぞれ定めました。

今回の測定の結果、測定した138施設(2174箇所)中、92施設(489箇所)で局所的に毎時1マイクロシーベルトを超える値が検出され、低減対策が必要になりました。

低減の方法は、(1)表層の土を除去(2)軒下などの砂利、土砂の入れ替え(3)除去した土砂の処理(天地返し、まとめて地下に埋める)(4)高圧洗浄機による表面の洗浄―などの選択肢があり、各施設・箇所ごとに放射線量が効率的・効果的に低減する方法を検討した上で実施しています。

公共施設などにおける測定について

市内における放射線量をより詳しく把握するため、これまで測定していなかった市立公民館や体育館などの公共施設と自治集会所の720施設の一斉測定を10月中旬から11月中旬にかけて実施しています。
これに合わせ、これまで施設内の1カ所を測定していた公園の測定箇所を砂場を含む5カ所に増やして測定しています。

測定箇所は、(1)屋内施設(屋内1カ所、玄関前・駐車場、雨どいの排水口など)(2)屋外施設(敷地中央と四方の5カ所)(3)屋内外施設(屋内1カ所、屋外5カ所、雨どいの排水口など7カ所)(4)自治集会所(玄関、駐車場、雨どいの排水口など3カ所)(5)公園(砂場を含む、主に使用される場所5カ所)―とし、自治集会所を持たない行政区や自治会では、行政区長・自治会長と協議の上、区域内の1カ所を測定します。

一方、測定高は、(1)屋内は50センチ(2)屋外は1メートル・50センチ・1センチの3段階(3)雨どいの排水口などは50センチ・1センチの2段階―と定めました。

測定結果は、まとまりしだい、市のホームページや回覧板などを活用して公表することにしています。

低減対策に協力を

現在、学校などにおける低減対策は、(1)土砂を除去する箇所が少なく、狭いなど手作業で可能(2)犬走りやたたきなどコンクリートやアスファルトの洗浄(3)側溝の土砂の除去(4)草地や芝生などを刈り取る―など普段の環境整備程度の作業の場合は、PTAの皆さんに協力をお願いしながら実施しています。

今後、自治集会所において毎時1マイクロシーベルトを超える値が検出され、低減対策の対象になった場合も、まずは行政区長・自治会長にその箇所へ近寄らないよう表示を依頼し、日程や方法を調整の上、周辺にお住まいの皆さんの協力をいただきながら作業したいと考えています。

皆さんの理解と協力をよろしくお願いします。

除去した土砂を埋めるための穴掘り作業
除去した土砂を埋めるための穴掘り作業

除去した土砂をまとめて埋める低減対策
除去した土砂をまとめて埋める低減対策

放射線対策部会設置

福島原発事故により放出された放射性物質は、市民生活のいろいろな分野に影響を及ぼしています。
市は、より迅速な対応と、各分野で連携した取り組みを図るため、10月24日、災害対策本部に「放射線対策部会」とその作業チームである「放射線対策調整班」を設置しました。

部会は、市民環境部長を本部長とし、関係する保健福祉、農林、教育、水道の各部長と一関地方広域行政事務組合事務局長らにより構成。市民環境部の政策推進監が事務局長となります。
主な担当事務は、放射線対策の基本的な方針に係る素案を策定し、災害対策本部に報告すること。
この他、▼測定結果の取りまとめや公表▼除染対策、汚染物の仮置きや処分に関すること▼情報提供に関すること▼風評被害への対応―なども担当します。

調整班は、関連する各部局の課長、政策推進監らで構成され、情報収集や具体的な対策の検討、調整などに当たります。

同日午前に行われた記者会見の席上、勝部修市長は「放射線対策は、いずれも最優先課題。危機感を持って、全庁的に放射線対策を推進する体制を整えた」と述べ、今後もしっかり対応していく決意を示しました。

汚染稲わらなどの一時保管について

7月8日に福島県の畜産農家が出荷した牛から食品衛生法上の暫定規制値を超える放射性セシウムが検出されました。
これを受け、原発事故後に収集された平成22年産稲わら(事故後稲わら)は現在、使用禁止の措置が取られおり、約400トンもの利用できない事故後稲わらが、市内の畜産農家に保管されています。

放射性セシウム測定値8000ベクレル/kg以下の事故後稲わらについては、国から▼焼却▼埋却▼すき込み―などの処分手法が示されていますが、いずれの方法も実行するにはさまざまな課題があり、容易には処理を進められない状況です。

一方、放射性セシウム測定値が8000ベクレル/kgを超える事故後稲わらの具体的な処分方法はいまだに示されていません。

これらを踏まえ市は、畜産経営の安定や農家の健康被害を防止する観点から、早急な対応が必要な事故後稲わらについて、隔離して一時保管する計画を進めていくことにしました。

計画には、▼保管場所を市内に複数箇所選定。分散して一時保管すること▼保管の期間は、国が仮置き場として予定する3年程度とすること▼運搬は、飛散防止や防水などの安全対策を講じること▼保管は、雨水の侵入や漏水の防止、放射線の遮へいなど、十分な安全を確保できるように行うこと▼放射線の影響が出ない距離で周囲を有刺鉄線で囲うなどして、保管地内にむやみに人が立ち入らないような対策を講じること▼保管場所周辺の空間放射線量を定期的に測定し、安全確認を行うこと―などの方針や対策が盛り込まれています。

さらに、市内を走る国道の側溝内の土砂から放射性物質が検出されており、市道側溝の清掃などで発生する土砂などからも放射性物質が検出される可能性があります。
これらについても事故後稲わらに準じた安全対策を講じた上での一時保管を計画しています。

これらの一時保管計画を進めるため市は、候補地の関係住民などを対象に説明会を順次開催しています。
この説明会で出された意見や要望を踏まえ現在、保管場所に対するご理解をいただくための条件整備に努めています。

牧草の試験焼却について

6月9日に市内で採取された牧草から1010ベクレル/kgの放射性セシウムが検出されたことを受け、市内の畜産農家は、県から牧草の利用を自粛するよう要請されています。

調査が進むにつれ、徐々に自粛が解除される区域が増えてきたものの、今なお市内6つのエリアで自粛は継続されています。
市のまとめによると、利用できない牧草約1000トンが、酪農家や肥育農家に保管されていることがわかりました。

また、環境省からの通知によれば、「廃棄物焼却施設での焼却処分は、ダイオキシン対策などの廃棄物処理システムが放射性セシウムに対しても有効に機能する」ことが確認されており、「焼却施設の積極的な活用を行うことが、拡散した放射性セシウムの分離濃縮管理に有効な手段である」とされています。

これを受け一関広域行政事務組合は、焼却施設における牧草の焼却処分の可能性を検証するため、廃棄物焼却施設での試験焼却を行うことにしました。

ダイオキシン対策でハイレベルの能力を有し、ばいじんに放射性物質の飛散がほとんどない大東清掃センターで10月18日・20日・21日・24日・25日の5日間、牧草の試験焼却を実施しました。
焼却に当たっては、焼却する汚染牧草の量、作業上の安全に加え、焼却によって発生する灰の放射性セシウム濃度が埋め立て処分が可能なレベルまで抑えられるよう十分配慮しました。

現在、専門機関において、この焼却灰に含まれる放射性物質の量などについて詳しい検査測定が行われています。

これまでの学校などにおける測定と対策

  • 第1回一斉測定…6月に実施。市立小・中学校、私立を含む幼稚園・保育園の全111施設の校園庭の中央部1カ所の放射線量を測定(測定高1メートル、50センチ)。
  • 継続測定…7月から実施。市消防本部内の各消防署では毎日、各地域1校(園)・公園2施設・体育施設1施設を毎週測定。
  • 第2回一斉測定…7月に実施。対象施設は第1回と同じ111施設。雨水の集まる軒下や雨どいの排水口などを測定(測定高1メートル、50センチ)。
  • 低減対策…第2回一斉測定の結果、測定高さ50センチにおいて毎時1マイクロシーベルトを超える値が検出された4施設について、表土の入れ替えなどの低減対策を実施。
  • 第3回一斉測定…8月に実施。対象施設は第1回と同じ111施設。より詳細な状況を把握するため、屋外5カ所(測定高1メートル、50センチ、5センチ)、屋内1カ所(測定高50センチ)と、測定箇所や測定高さを増やして測定。

東京電力(株)担当者、市当局に現状と賠償の概要を説明

東京電力の担当者が10月24日、市役所本庁を訪れ、市災害対策本部員に福島第一原子力発電所の事故の収束に向けた道筋、進捗の状況と賠償の概要を説明しました。

初めに担当者は、「事故の収束に向けたステップ1の目標『放射線量が着実に減少傾向となっている』ことについては7月19日に達成を確認している。
現在は、ステップ2の目標である『放射性物質の放出が管理され、放射線量が大幅に抑えられている』ことの年内達成に向け、全力を挙げている」と資料を示しながら説明。
続いて、農業者、加工・流通業者に対する農作物の出荷制限などに伴う損害への賠償についての概要を説明しました。

市からは、「被害を受けた住民に対する説明会を開催してほしい」「賠償の請求がなされた場合は一日も早く賠償金の支払いが行われるようにしてほしい」などを要望したほか、「市が今後進めようとしている汚染稲わらなどの一時保管や処理にかかる経費は賠償対象になるか」などの質問が出されました。
これに対し東京電力の担当者は、「今後現状を把握し、市当局と協議しながら進めていきたい」と回答しました。

東京電力(株)担当者、市当局に現状と賠償の概要を説明

農畜産物における放射性物質の調査状況
品目

放射性セシウム

単位:Bq/kg

放射性ヨウ素

単位:Bq/kg

採取日
トマト 不検出 不検出 8月3日
キュウリ 不検出 不検出 8月3日
ピーマン 不検出 不検出 8月3日
ナス 不検出 不検出 8月3日
小麦 10 不検出 8月5日
リンゴ 不検出 不検出 8月24日
ネギ 不検出 不検出 8月31日
菌床シイタケ 不検出 不検出 8月30日
原木シイタケ 287 不検出 10月18日
シャカシメジ 31 不検出 9月28日
不検出 不検出 9月19日
アイガモ 55 不検出 9月16日
原乳 9 不検出 10月17日

▲調査団体は全て岩手県
▲野菜・穀類の食品衛生法上暫定規制値…【放射性セシウム】500Bq/kg以下、【放射性ヨウ素】2000Bq/kg以下
▲原乳の食品衛生法上暫定規制値…【放射性セシウム】200Bq/kg以下、【放射性ヨウ素】300(100)Bq/kg以下※( )内は、食品衛生法に基づく乳児の飲用に関する暫定的な指標値

利用自粛中の牧草の放射性物質の調査状況
エリア 地区名 採取月日

放射性セシウム

単位:Bq/kg

測定団体
一関西部 萩荘 8月8日 3270 岩手県
下宇津野 7月12日 1170
一関東部 三関 8月26日 694 岩手県
花泉 涌津 7月15日 570 岩手県
室根 室根高原 7月13日 2070 岩手県
藤沢西部 下中山 7月8日 1844 岩手県

▲大東・川崎地域は、6月11日の調査で暫定許容値を下回っていたため、利用自粛は解除されています。
▲一関地域の厳美町・舞川・滝沢地区、花泉地域の北小茂・南小茂地区、千厩地域の千厩・小梨・奥玉地区、東山地域の長坂・田河津・松川地区、室根地域の矢越・津谷川地区、藤沢地域の山谷・熊舘・増沢・上峯・秋内・大籠地区の利用自粛は解除されました(各地区において3回連続して暫定許容値を下回った場合に解除されます)。
▲粗飼料中の放射性物質暫定許容値…(1)放射性セシウム【乳用牛・肥育牛】300Bq/kg以下、【その他の牛】3000Bq/kg以下(2)放射性ヨウ素【乳用牛】70Bq/kg以下
▲放射性ヨウ素は、いずれの地点でも検出されませんでした。

各消防署における放射線量(10月30日現在)
施設名 測定時間

測定値

μsv/時

備考
一関西消防署(一関) 9時00分

1.0メートル:0.21

0.5メートル:0.23

 
一関南消防署(花泉) 9時00分

1.0メートル:0.20

0.5メートル:0.22

 
一関東消防署(千厩) 9時00分

1.0メートル:0.28

0.5メートル:0.29

 
一関北消防署(大東) 9時00分

1.0メートル:0.20

0.5メートル:0.22

 
水道水の測定値(10月27日採水)
採水時間

放射性セシウム測定値

単位:Bq/kg

放射性ヨウ素測定値

単位:Bq/kg

測定団体
9時30分 不検出 不検出 岩手県

▲採水地:萩荘字脇田郷37(市脇田郷浄水場)
▲原子力安全委員会が定めた飲食物制限に関する指標値(飲料水):放射性ヨウ素300Bq/kg、放射性セシウム200Bq/kg(Bqは、放射能の量を表します)
▲水道水の基準のうち、放射性ヨウ素について100Bq/kgを超えるものは、乳児用調整粉乳や直接飲用に供する乳に使用しないよう指導することとされています。
▲測定は、毎週1回実施しています。

稲わらの放射性物質の調査状況

調査地点 採取月日

放射性ヨウ素

単位:Bq/kg

放射性セシウム

単位:Bq/kg

測定値 換算値(水分80%)
中里 10月5日 不検出 15.4 3.8
舞川 10月5日 不検出 不検出 不検出
弥栄 10月7日 不検出 不検出 不検出
日形 10月7日 不検出 不検出 不検出
老松 10月7日 不検出 不検出 不検出
永井 10月7日 不検出 不検出 不検出
薄衣 10月7日 不検出 30.5 21.7
門崎 10月7日 不検出 不検出 不検出

▲測定団体は全て岩手県
▲飼料中の放射性物質暫定許容値…放射性セシウム300Bq/kg以下
▲調査対象…台風15号により冠水した水田から収集された稲わら
▲放射性セシウム濃度が飼料の暫定許容値以下であったため、利用自粛要請は解除されました。

◎問い合わせ先

一関市災害対策本部 電話0191-21-2111

環境放射能に関する情報はこちらから

●市のホームページ 「環境放射能に関する情報(福島第一原子力発電所事故関係)」
 http//www.city.ichinoseki.iwate.jp/index.cfm/1,0,157,html
●岩手県のホームぺージ http//www.pref.iwate.jp/
 「環境放射能に関する情報(福島第一・第二原子力発電所事故関係)」
 「一関市における水道水の核種別放射能濃度の測定結果について」
 「地表付近の放射線量の測定結果について」 など

(広報いちのせき 平成23年11月15日号)