小梨駅

国鉄と農協が同居した駅

シリーズ駅大船渡線も4回目。
小梨駅を訪れた。
まだ芽が固いサクラの古木が、かわいらしい駅舎を囲む。

昭和3年の開業から77年間にわたり風雪に耐えてきたかつての駅舎は、平成18年に取り壊され、新しい駅舎に建て替えられた。

小梨公民館で指導員として勤務する千葉秀一さん(62)が今回の案内人。
「この駅には、ほかの駅とは違う歴史がある」と語る千葉さん。
聞けば、無人化された昭和47年から平成17年6月までの33年間、旧千厩農協清田支所が窓口業務を受託。
「農協小梨駅」と呼ばれ、看板も掛けられていた。

当初の建設計画にはなかった小梨駅。
当時の小梨村の住民らによる熱心で粘り強い運動により建設にこぎつけた。
千葉さんは「かつては貨物の取り扱いもあって葉タバコやコメなどが運ばれた。最も印象に残っているのは金の卵がもてはやされた時代の集団就職列車を見送ったこと」とも話してくれた。

時が経ち、駅舎が建て替えられても変わらず花を咲かせるサクラの古木。
どれほどの旅立ちを見送り、どれほどの帰郷を迎えてきたことか。

もうすぐ、花咲く春。
小梨駅を出ると上り列車は、千厩駅に向かう。

懐かしい駅名標が迎える駅

千厩へ向かう車窓から。積もった雪も溶けはじめた

大船渡線を走る車両の内部。大きな窓で景色が楽しめる

千葉秀一さん案内人
千葉秀一さん 小梨公民館指導員

駅近くの自宅には昔、駅員さんが下宿していたことも。
日常生活の中に駅があり、大船渡線があります。
PALPAL交流でもよく鉄道を利用しています。

広報いちのせき「I-style」4月1日号