I(あい)な人 いちのせきを愛する人
3世代が連携し、農業スタイルを確立
こだわり抜いて生まれる米は絶品
先代から伝わる地力と深耕を守り続ける農業一家
須藤和弘さん 誠さん 俊さん
Suto Kazuhiro 52 Makoto 72 Shun 28 農業 花泉町日形
花泉町日形の須藤和弘さん方は代々続く米農家。
父・誠さん、息子・俊さんと共に、ツヤ、粘りと甘みが特徴の自慢の米「ひとめぼれ」を生産する。
この米を主体に和牛繁殖や育苗土などを組み合わせた複合経営を大規模に展開している。
昨年11月、大阪府で開かれた「大阪府民のいっちゃんうまい米コンテスト」。
(有)松勘商店(赤荻)からこれまでの目利きを踏まえた上で勧められ、出品を決めた。
これを機に、地質・地力・水・環境の全ての条件を満たして生産した良質な米を厳選。
ブランド化。
伝統を絶やさないという意味を込めて「須藤家秘伝米」と名付けた。
同コンテストは玄米出荷価格ごとに3クラスに分けられ、玄米、精米、炊飯の厳しい食味審査を経て行われた。
「須藤家秘伝米」はCクラス(17,000円未満)に出品。
見事、優良賞(全国2位)に輝き、その名を全国に知らしめた。
須藤家には、先代から受け継ぐ知恵がある。
秋の収穫後には、失われた地力を補うため、家畜の完熟堆肥で地力を保持。
化学肥料を抑える。
最大のこだわりは、稲の根の張りだ。
根の張りが良いと、気象変動に左右されない安定した品質・食味が維持できる。
そのために、15センチ以上の深耕を欠かさない。
水にもこだわる。
沼エビやドジョウが生息する花泉地域の溜池から取水。
自然の恩恵を受けながら「須藤家秘伝米」ができあがる。
誠さんは「香りから違う。まずは食べてほしい」と胸を張る。
東日本大震災で3ヘクタールが被災。
作付けできなかったり、作業時期が遅れたりした。
さらに、放射能による風評被害が追い打ちをかける。
「取り引きしている関東地域の米屋からは、個別に検査するように指摘された。コンテストで入賞しても、被災地の米と敬遠される。何度も放射能検査をした。自信を持って安全な米だと言える。今は、自らPRするしかない」と俊さん。
作った米は自分で売るという、絶対にぶれない経営哲学を持つ。
3代が一度に携わる農業。
時にはぶつかることもある。
だが、話し合い、役割を分担することで今までにない農業スタイルが生まれた。
和弘さんは「昔ながらの経験と若い人のアイデアが連携している」と、実情を分析。
俊さんが加わったことで、どんぶり勘定から、企業的なやり方に変わったという。
今では、生産を主に和弘さん、誠さんが担当。
俊さんは資材の仕入れや販売に力を入れている。
須藤家の農業の基本は昔から変わらない。
消費者に「安心しておいしく食べてもらいたい」一心で、土と向き合う。
間もなく田植えの季節。
須藤家の米作りが加速する。
Profile
須藤育苗センター。
代表須藤和弘。
15代に渡り受け継がれる米農家。
小作地、作業受託を含め、40ヘクタールで作米。
乾燥機や色彩選別機を導入し、一連の作業体系を充実させている。
花泉町日形。
須藤家秘伝米ホームページhttp://www.sutoke.com/
水稲育苗のための床土にもこだわる。
自作・販売する「須藤の土」は、町内の赤土をベースに盛岡市玉山の黒土を混合。
7ミリ網でふるい、バーナーで消毒する。
透水性と保水性のバランスが調和され、生育が良好になるのが特徴だ。
広報いちのせき「I-style」4月1日号