復興への道程「寄り添う勇気とコミュニティーの力」
あなたの小さな気配りや思いやりが、曇り空を晴れにします
私にできることが、あなたにできることが、きっとあるはず。
ゆっくりと、一歩ずつ、共に歩いていこう。
復興は元気な心と体から
被災者の心情は一人一人違う。
必要とする支援やその内容も千差万別だ。
全ての人に完全・完璧な支援をすることは難しい。
むしろ、支援に満足しなかったり、困難を感じたりする方が多いかもしれない。
一方、被災者自身の中で「できないことはやらない」「見たくないことにはふたをする」状態が続くと、自然に回復するチャンスを逃してしまうこともある。
私たちは、日常はもとより非常時にこそ考えるべき心のつながりを知り、被災した人たちの心の支えになっていくことが大切だ。
被災者のこころのケアには、地域コミュニティーの維持回復・再構築が効果的。
人と人との出会いやつながりが孤立感を解消することで、疲れた精神や傷ついた心が回復に向かうことも少なくない。
特に、復興期にはコミュニティーの力を活用して、できるだけ多くの被災者が互いに「つながっている」ことを実感できる仕組みが不可欠だ。
地域や行政は、災害でダメージを受けたコミュニティーを再生させたり、災害で新たに誕生したコミュニティーを育成したりするなど、被災者が自ら進んで社会参加できるコミュニティーを再構築しなければならない。
「お茶っこ交流会」など被災者が集う場所、ほっとできる居心地の良い場所をつくることが急務だ。
不安と不満を解消する情報
家族を亡くしたり、自宅を失ったりした人は、不安と不満でいっぱいだ。
我慢すればするほどストレスがたまり、心や体の不調を招いてしまう。
不安と不満を解消するために情報は欠かせない。
市は、市内で避難生活を送る宮城県の被災者に、同県のテレビ放送が視聴できるようにした。
千厩・室根両町の仮設住宅と藤沢町の雇用促進住宅には多くの被災者が入居しており、「宮城県のテレビ放送を見たい」という要望を受けて取り組んだものだ。
ほかにも、広報いちのせき「FMあすも」「公民館だより」などを活用して、被災者が必要とする情報を随時発信している。
心寄り添えるコミュニティー
被災者は人と交流する機会を求めている。
実際、過去の災害事例からも、「地域コミュニティーのつながりが被災者の生活復興感の改善に大きく影響し、こころの健康を保つために役立っている」と報告されている。
高岡昂太特任助教は「被災者がそれぞれの能力に応じてコミュニティーに参加できる支援が必要。
コミュニティーは生活の場、職場、学校など多層的に広がっている。
孤立を防ぎ、自立を促す取り組みを、あらゆるコミュニティーのさまざまなシーンで実践していくことが大事」と強調する。
被災者が元気や活力を取り戻して本来の能力を発揮できる生活を実現するためには、心を寄り添える場所が不可欠だ。
こころとからだをリセットしましょう
リラクゼーション法を紹介します
筋肉の力を抜こう
(1)5秒間、あえて肩に力を入れてみる
(2)深呼吸しながら
(3)70%くらいの力でOK。痛い場合は無理しない
(4)一気に力を抜いて、息を吐く。同じように次の順番でやってみましょう
つま先→ふくらはぎ→太もも→おしり→お腹
手→手首→二の腕→肩→胸→背中→首→顔 「昼寝している猫」のように力が抜けていくのをイメージしながらやってみましょう
腹式呼吸
(1)息を吸います。鼻からゆっくりおなかいっぱいに、口は閉じて
(2)おなかいっぱいにきれいな空気をためる気持ちで。この時おなかに手を当てて、おなかが膨らむことを確認してください
(3)口をすぼめて細く長ーく息を吐きます
(4)吐くことに意識を集中。おなかをへこませます(3秒吸って、6秒吐くイメージ)
(5)吐き切ったら、また鼻から吸います。数回(自分のリズムで)続けます
楽しい活動していますか?
(1)自分にとって楽しい活動を紙に書き出してみましょう。たとえば、「震災以前までやっていたこと」「いつもしたいと思っていたこと」など
(2)難易度を下げてみましょう
釣り→釣具店に行く→釣り番組を見る
温泉旅行→旅行パンフレットを見る→温泉風入浴剤を使う など
(3)カレンダーに楽しい活動の予定を書き込んでみましょう
(4)実際にやってみましょう
地域の皆さんに支えられ、癒やされ、安心して暮らしています。
赤坂幸吉さん明子さん(室根町折壁)
気仙沼市字鹿折(ししおり)に住んでいました。
震災後、2011 年4月11日から室根町で生活しています。
地域の皆さんは、私たちを行事に誘ってくれたり、農作業などの手伝いに声を掛けてくれたり、常に気に掛けてくれます。
おかげで安心して暮らしています。
ありがたいです。
最近、「むろね山野草の会」に入れていただき、趣味の盆栽を始めました。
毎日、「今日が最良の日」という思いで、前を向いて歩いています。
時々、訪ねてくる仙台と気仙沼の孫たちと、ここで過ごす時間も楽しみの一つです。
「こころの健康チェック」自分でできる仕組みをつくります
地域医療推進担当
鈴木久仁子健康づくり課長補佐
「市内避難者家庭訪問事業」(全数訪問)で「こころの健康調査」などを実施しました。
抽出した課題解決に向け、市関係課、市民活動支援センターや社会福祉協議会などが連携して取り組みました。
避難者のさまざまなニーズに対応する「お茶っこサロン」などはケア・サポートの成功事例の一つです。
また、精神科医や臨床心理士のスーパーバイズやワークショップの協力を得て、現場の支援従事者は二次受傷を予防しながらスキルアップすることができました。
「寄り添いは、かたつむりが目を出してくれるのをじっと待つイメージ」と話された新津先生の言葉がとても心に残りました。
今後は▼血圧測定のように自分でこころの健康チェックを行い、数値化する▼自覚したストレスのレベルによって対応を選択できるよう啓発する―など、自助・共助・公助が連携して一人一人の健康な心づくりを目指します。
※スーパーバイズ…カウンセラーが自分より経験豊富なカウンセラーに指導などを受けるためのカウンセリング
※二次受傷…外傷体験を負った人の話に耳を傾けることで生じる被害者と同様の外傷性ストレス反応
広報いちのせき「I-Style」 平成24年8月15日号