シリーズ駅大船渡線「Local Station」vol.11
水害を乗り越えてきた駅
10月上旬、JR大船渡線「陸中門崎駅」を訪ねた。
同駅は大正14(1925)年7月26日、摺沢駅、陸中松川駅と同時に開業した同線の中で最も歴史ある駅の一つ。
一関通運、日本通運の事務員として長年、同駅構内で働いていた金野百合子さん(86)が今回の案内人。
薄衣、弥栄、千厩、藤沢などの人たちが利用する陸中門崎駅は、川崎村の玄関といわれ、当時は通勤・通学だけで毎日400人以上が利用したという。
駅の近くにはいくつもの製材所があり、引き込み線が引かれていた。
本線と引き込み線を行き交う貨車は1日10両以上。
地域の人たちが人力で動かした。
木材、まき、炭、生石灰、消灰石、花こう岩、米麦、葉タバコや家畜など、あらゆる「モノ」が入出荷された。
「駅前には長屋や旅館もあり、にぎやかでした」と百合子さん。
北上川と砂鉄川が合流する川崎地域は、大雨のたびに川が氾濫した。
中でも昭和23年のアイオン台風の時は、同駅待合室まで浸水したという。
「駅前の家々が流される様を目の当たりにした。怖かった」と振り返る。
平成18年に砂鉄川堤防が完成。
人々はようやく水の脅威から解放された。
住民と共に水害を乗り越えてきた陸中門崎駅。
同駅を発車した上り列車は東北一の大河北上川を越え、真滝駅へと向かう。
案内人
金野百合子さん
元日本通運職員 川崎町門崎字渡戸
かつて川崎村の玄関といわれたこの駅は街の中心。
今もなお多くの人が利用しています。
朝は、通勤・通学の人たちの送迎で車が60台以上連なることもあります。
左_陸中門崎駅前の風景。水の脅威から解放されたのどかな街並みが広がる
右_駅の外観。駅の看板は建て替え前のもの
左_北上川にかかる北上川橋りょう。車内から撮影
中_ホームには猫の姿も
右_通勤・通学で多くの人が利用する陸中門崎駅。早朝は混み合う
広報いちのせき「I-style」11月1日号