【特集】農業を体験しよう 『迎』
農業体験を通した都会と田舎の交流で、生命・自然・環境などを大切にする心を養う。
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ふれあいとゆとりの旅
グリーン・ツーリズム
仕事や勉強に追われ、多くの人でごった返す都会の喧騒(けんそう)から離れ、樹木が茂る緑の中で澄んだ空気を大きく吸い込む。
雄大な田舎の自然は、訪れる人の心にゆとりと癒やしを与えてくれる。
グリーン・ツーリズムは、長期バカンスを楽しむことの多いヨーロッパ諸国で普及した旅のスタイル。
都市部の人が農山漁村地域で、その自然、文化、人との交流を楽しむ滞在型の余暇活動のことをいう。
ひとつの場所に長く滞在し、さまざまな田舎暮らし体験をするため、単なる観光旅行とは異なり、手に入れる感動もより深く、大きなものになるのが最大の魅力だ。
市内各地域で農家民泊と体験学習
市内各地の交流実践団体が2011年3月に立ち上げた「いちのせきニューツーリズム協議会」(後藤定幸会長)は、都市部から訪れる農業体験者の受け入れを行っている。
プログラムは大きく2つに分けられる。
一つは、泊まりで農村の暮らしを丸ごと体験できる「農家民泊」。
もう一つは、日帰りで四季折々のメニューを楽しめる「体験学習」だ。
厳美町「骨寺村荘園遺跡」ののコメ作り体験や川崎町「農家レストランぬくもり」のかにばっと作りなど、いずれも地域の特色を生かした農林業体験や文化体験を提供している。
高まる需要
小中高で農業体験を
学校教育法の改正によって、社会奉仕体験活動などの「体験学習活動」が制度化され、農業学習への関心が高まっている。
農村での生活や体験を通して食の重要性を認識したり、生命・自然・環境などを大切にする心を培ったり、大きな効果が期待されている。
農村には高齢者が多い。
器用で何でも知っている祖父母の知恵と技は地域の資源であり文化だ。
世代を超えた交流から学べることは計り知れない。
地域と連携した教育は、協調性、社会性や自立する精神を養うことができる。
これらを農業体験学習と融合すれば、古くて新しい独自の展開が見えてくる。
農家と生徒の対面
刺激的な旅が始まる
花泉町グリーン・ツーリズム推進協議会(後藤定幸会長)は、いちのせきニューツーリズム協議会の構成団体の一つだ。
同協議会は、都会の児童生徒などを受け入れ、花泉地域の魅力を再認識しながら農業農村の活性化を図っている。
東京都多摩市の市立諏訪中学校(宮寺清校長、生徒338人)はその代表格。
同校の修学旅行は05年から花泉地域の農家に民泊して農業体験をしている。
諏訪地域は、都内でも緑が多い地域だという。
体験学習を重んじる宮寺校長は「中学生活一番の思い出が修学旅行という生徒は少なくありません。生徒たちには生産の苦労を知って、食べて、たくさん考えてほしいです。毎年受け入れてくださる花泉の皆さんは親切で温かい。本当にありがたいです」と感謝する。
今年も5月16日から2泊3日の日程で、3年生112人が訪れた。
初日の正午、花泉入りした生徒を迎えた受け入れ農家の皆さんは、諏訪中の校歌を歌って歓迎した。
サプライズに驚く生徒たち。
不安と緊張から解放され、一緒に校歌を歌い出す。
「緊張をほぐしたかった」と後藤会長。
してやったりのパフォーマンスに白い歯を見せる。
早速、数人ずつのグループに分かれ、38軒の受け入れ農家に散らばる。
彼らにとって生涯の思い出となる刺激的な2泊3日がスタートした。
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1)5月16日、対面式であいさつする会長の後藤定幸さん
2.3)事前に諏訪中校歌を練習した受け入れ農家の皆さん。生徒と一緒に歌った
いちのせきニューツーリズム協議会
〒021-8501 岩手県一関市竹山町7-2
一関市役所本庁農政課内
TEL0191-21-8426 / FAX0191-21-4221
事務局 たびれっじ推進協議会
TEL0191-31-6007 / FAX0191-31-6008
- 受け付けからの流れ
1 お客さま ⇒ いちのせきニューツーリズム協議会 希望プラグラムの選定、手配依頼 2 いちのせきニューツーリズム協議会内 現地受け入れ先の確認・調整 3 いちのせきニューツーリズム協議会 ⇒ お客さま 手配結果の回答とスケジュールの連絡 4 お客さま ⇔ いちのせきニューツーリズム協議会 途中連絡、受け入れ実施 5 いちのせきニューツーリズム協議会 ⇔ お客さま 精算
- 構成団体
地域 団体名 体験プログラム 一関 たっこたい民泊プロジェクト 農作業、紙すき、餅つき、家畜の世話、山菜採り、りんご狩り、里山の保全、野菜収穫、ピザ作り、郷土芸能、栗ひろい、そば打ち―など 一関 本寺地区地域づくり推進協議会 一関 南沢部落自治会 地域活性化部会 花泉 花泉町グリーン・ツーリズム推進協議会 大東 京津畑自治会 千厩 千厩町農村体験推進事業実行委員会 東山 農家民宿 三澤 室根 室根14 区グリーン・ツーリズム研究会 川崎 農家レストラン ぬくもり
*民泊体験の場合は、受け入れ先の「家業おまかせプラン」です
*季節や天候によって体験内容を変更することもあります
広報いちのせき「I-style」11月1日号