I(あい)な人 いちのせきを愛する人 File_18
「地域から食中毒をなくそう」 合言葉に食品衛生の向上に奔走
阿部興紀さん 74 桜木町
東京・中央区の「明治座」で10月23日開かれた「食品衛生全国大会」の席上、食品衛生功労者として厚生労働大臣表彰を受けた。
長年にわたって食品衛生の向上に尽力した功績が高く評価されたもので、同時に日本食衛生協会会長表彰も受賞。ダブル受賞は全国的にも例がない。
「歴代の保健所長や職員の皆さんの指導のおかげ。共に頑張った協会の皆さんの活動と活躍があってこその受賞」と静かに感謝する。
1982年に食品衛生指導員に委嘱された。以来31年間にわたり支会指導員として食品営業の衛生水準の向上に努めた。
「地域から食中毒をなくそう」を合言葉に、地道な巡回指導を重ねたほか、一関支会の前支会長として各種事業を積極果敢に企画、実施した。
1890年の東北本線一ノ関駅開業と同時に構内で立売販売を始めた、そばや駅弁で知られる「あべちう」の三代目社長を経て現会長。
NHK大河ドラマ「義経」放映を記念して販売した「平泉義経弁当」、地元の食材にこだわった「三陸あわびうに弁当」や「いわいとりめし」などが人気を博し、市内はもとより全国にファンを持つ。一ノ関駅のほか東京・大宮・仙台・盛岡の各駅で販売している。
2011年には、平泉の世界文化遺産登録を記念して記念弁当「平泉」を発売、話題を呼んだ。創業123年の味と伝統を守りながら、常に新しい企画に挑戦する情熱家。
一方で、自社施設の衛生向上にも力を注ぎ、06年には自らの施設も優良施設として厚生労働大臣表彰を受賞した。
経営者として多忙の中、現在は、相談役として食品衛生指導の普及推進と食品衛生協会の発展に貢献している。
「衛生の基本は、手洗い、検便の徹底、ごみ箱にふたをするなど当たり前のことばかり。きちんとできれば食中毒は防ぐことができる」と言い切る。
自らを「合唱バカ」と称するほどの合唱好き。
「一関を合唱のまちに」という強い信念で39年前、本県初の本格的な「第九」演奏会を開催。
実行委員長として奔走しながら、自らもステージに立つ。来年25回を迎える東日本合唱祭では初代実行委員長を、一関合唱連合会では顧問を歴任。
一関グリークラブでは、バリバリの現役団員として活躍する。
Profile
1939年一関市生まれ。
(有)あべちう代表取締役会長。食品衛生の向上などに尽力し08年岩手県知事表彰受賞。
前一関観光協会会長、前一関食品衛生支会長。プライベートでは、2013年度一関文化賞を受賞したミュージカル「平泉」上演実行委員会委員長。
70を過ぎてもなお、忙しさは変わらない。
広報いちのせき「I-Style」 平成25年12月15日号