【特集】一関のもちベーション_2
懐かしくて新しい一関のもち料理
2011年から始まった「もちを取り入れた学校給食」は、古くから伝わる郷土料理や地元産食材を教材に、地域の歴史や文化まで学ぼうという画期的な取り組みです。
勝部市長ともち給食を楽しむ南小の児童
さて、「和食」とは何でしょうか―
すしやそばといった特定の料理を指しているわけではありません。
政府は、「和食 日本人の伝統的な食文化」の提案書の中で、和食の特色に「正月や田植えなど年中行事との密接な関わり」「四季や地理的多様性による新鮮な山海の幸」「自然をあらわした美しい盛り付け」などを挙げ、食に関係する「社会的習慣」と位置付けています。
四季折々の季節感を演出したり、旬の食材を生かした美しい盛り付けをしたりする文化性、芸術性の高さも和食ならではです。
和食が世界の代表的な料理と肩を並べ、文化遺産に登録されるのは喜ばしいことですが、私たちは、食を取り巻く現状にも目を向けなくてはいけません。
日本の食料自給率は40%を切っており、先進国では最低レベル。一方で、食べられるのに廃棄される食品は年間約500~800万トンにも上っています。
米の年間収穫量が約850万トンですから、どれほど「食品ロス」が多いかが分かります。
食の欧米化が進み、家庭の食卓風景は大きく様変わりしました。
日本特有の食文化は崩れつつあります。今こそ、健康で過ごすための食習慣を身に付けたり、食の大切さを伝えたりする「食育」の充実が必要です。
ユネスコの無形文化遺産登録を機に、伝統ある古里の食文化の素晴らしさをみんなで見直しましょう。
一関地方は「日本一のもち文化圏」といわれています。
市内には、もちに関係する団体が多数あり、それぞれがもちをPRしようとさまざまな活動を展開しています。
こうした「もち食文化」を深く理解して、広く普及させようと2010年8月、一関もち食推進会議(佐藤晄僖会長)が発足しました。
主な活動は「学校給食へのもち食の提供」「冷凍もちの推進」「もち米の増産」―などで、関係団体と連携しながらさまざまな取り組みを行っています。
同会議は本年度も、市教育委員会と連携して市内小中学校の学校給食に「もち食」を提供しました。
全国学校給食週間(1月24―30日)に合わせて行われた「もち給食」は、児童・生徒の食育を推進し、郷土料理のもち食文化を継承しようという取り組みです。
このうち南小学校(沼倉祐子校長、児童531人)では1月28日の給食にもちが出され、4年A組の児童32人と同校を訪れた勝部修市長が一緒に雑煮などを味わいました。
初めに同校の菅原靖子栄養主査が「一関では、昔からお客さまをもてなすときやお祝いの席でもち本膳を出してきました。もち本膳は食べる順番も決まっています」と説明。
児童たちはうなずきながら聴いていました。
この日のメニューは雑煮、厚焼き卵、豆もやし炒め、ご飯、みかん、牛乳の6品。
勝部市長は児童と団らんしながら「もちは、いろいろな食べ方ができます。おわんにも、お皿にも、どんぶりにも合います。たくさん食べて、一関のもちを好きになってください」と語りました。
もち給食を楽しみにしていた横井眞望(まなみ)さんは「おもちが大好きです。一番好きなのはあんこです」とにっこり。
沼倉校長は「郷土料理のもちを知ることは、地域を知ることでもあり、もち給食は欠かせない体験学習です」と話していました。
このように、「食を考える習慣」「食に関する知識」「食を選択する判断力」を身に付ける学習が「食育」です。
食育基本法では、日本人の健康な心身を育んできた「食文化の継承」が、食育目標の一つに掲げられています。
食育は、古くから伝わる郷土料理や地元の食材を教材に、地域の歴史や文化まで学ぼうという画期的な取り組みでもあるのです。
真っ白いもちに箸を延ばし、残さず平らげる子供たち。
学校給食から伝えていきたい古里の味は、一関が後世に伝えたい伝統の味でもあります。
教室には、おいしさとやさしさが広がっていました。
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1_勝部市長ともち給食を楽しむ南小の児童
2_もち本膳について説明する菅原靖子栄養主査
3_盛り付けをする給食当番
4_もち給食を楽しみにしていた横井眞望さん
もちは一関の食文化暮らしと共にあります
勝部修市長
一関地方では、昔からおめでたい時にも、悲しい時にも、もちを食べてきました。
もちは一関の食文化であり、私たちの暮らしと共にある世界に誇る郷土料理です。
焼いても、揚げても、凍らせてもおいしいもちの食べ方は300種類以上。
皆さんも、多彩なもち料理を楽しんでください。
もち給食の実施状況
- 1.15_中里小(ゆかりごはん・お雑煮・松風焼き・切干大根の酢の物・牛乳)
- 1.17_ 滝沢小、弥栄小、川崎小、一関中、一関東中、桜町中、舞川中、川崎中(ごはん・お雑煮・ぶりの照り焼き・紅白なます・黒豆・牛乳)
- 1.20_ 赤荻小(ごはん・お雑煮・さわらの柚子みそ焼き・すき昆布の炒め煮・りんご・牛乳)、大原小、大東小、興田小、猿沢小、長坂小、田河津小、松川小、大原中、大東中、興田中、猿沢中、東山中(麦ごはん・ひきな餅・さんまのみぞれ煮・きのこなます・牛乳)
- 1.24_ 本寺小、本寺中(古代米ごはん・お雑煮・鰆の曲りねぎ焼き・すき昆布の煮物・花みかん・牛乳)、永井小、涌津小、油島小、花泉小、老松小、日形小、金沢小、黄海小、花泉中(減量ご飯・ひきな餅・みぞれ汁・りんごゼリー・牛乳)、千厩小、小梨小、清田小、奥玉小、磐清水小、室根東小、室根西小、藤沢小、新沼小、千厩中、室根中、藤沢中(減量麦ごはん・お雑煮・ぶりの照り焼き・みぞれ和え・牛乳)
- 1.27_ 一関小(ごはん・お雑煮・鶏肉の甘辛焼き・五目ひじき・牛乳)
- 1.28_南小(ごはん・お雑煮・厚焼き卵・豆もやし炒め・みかん・牛乳)
広報いちのせき「I-Style」 平成26年3月15日号