林ノ沢観音堂 (千厩地域)

滋賀県に由来し起源は平安時代

起源を平安時代までさかのぼることのできる林ノ沢観音堂

 林ノ沢観音堂(千厩町奥玉)の歴史は、伝来する「奥州磐井郡奥玉村長勝寺観音略縁起」(宝永5(1708)年)や、堂内に安置されている仏像により、平安時代までさかのぼることができます。
 「中奥玉村風土記御用書出」(安永4(1775)年)によれば、大同2(807)年の勧請、前出の略縁起では、延暦21(802)年、石山寺(いしやまでら)(滋賀県大津市)から観音像を移し奉ったとあります。数年の差がありますが、平安時代からの歴史がうかがわれます。観音堂の脇に玉林山長勝寺の旧跡ありと安永風土記に記されています。
 この観音堂は、享保9(1725)年の火災により全焼し、現在のものは翌享保10(1726)年ごろ再興されたものです。天保2(1831)年にも破損し、再興したと墨書が残ります。どの程度の破損であるかは不明です。
 観音堂は方一間半四面の宝形造り(ほうぎょうづくり)で、屋根は昭和28年にかやぶきから瓦ぶきに、平成7年には銅板ぶきに替わっています。小壁の内外に絵模様の装飾が見られます。
 中奥玉村は天和元(1681)年、一関藩領となりました。一関藩第三代藩主村顕公の疱瘡(ほうそう)平癒祈祷のため寺を建立しようと、元文4(1739)年に廃寺となっていた長勝寺の寺跡を鬼死骸村(おにしがいむら)(一関市真柴)に移し、法花宗(日蓮宗)の寺院、長勝庵として再興しています。堂内には、第四代藩主村隆公揮毫の扁額「圓通(えんつう)」が掲げられ、一関藩と深いかかわりの歴史を持つ観音堂です。
 観音堂の御本尊は、木造十一面観音立像です。全体が焼損していますが、中央の様式を受け継いだ11世紀ごろの作と見られています。堂内には、平安仏が2体あります。木造阿弥陀如来坐像と木造菩薩立像です。木造阿弥陀如来坐像は12世紀の作と見られ、11世紀末からの北東北の阿弥陀信仰を知る顕著な例として貴重であるとされています。
 観音堂の境内には、樹齢二、三百年と推定されるモミジが大きく枝を広げています。寺跡を鬼死骸村に移転した時植えられたものと伝わっています。観音堂、扁額、仏像が市指定文化財となっています。

   

問い合わせ先
一関市役所千厩支所教育文化課 TEL 0191-53-3981
一関市博物館案内 
館長講座第2回「縄文時代終末論と大原下川原出土品―いわゆる『ミネルヴァ論争』―」

 戦前に雑誌「ミネルヴァ」誌上で展開された縄文時代終末の時期をめぐる論争です。

  • 講師…伊藤玄三(当館館長)
  • 日時…11月5日(日)13時30分~15時30分
  • 会場…博物館研修室
  • 定員…50人(電話申し込み、先着順)
北緯39度の文化学第3回「葛西氏研究の現状と課題」

 中世の400年当地を支配した葛西氏について、最先端の研究成果を紹介します。

  • 講師…大石直正さん(東北学院大学名誉教授)
  • 日時…11月18日(土)13時30分~15時30分
  • 会場…博物館研修室
  • 定員…50人(電話申し込み、先着順)
数楽エンターテイメント「和算が教えてくれる魅惑の数学世界」
  • 講師…桜井進さん(サイエンスナビゲーター)
  • 日時…12月10日(日)13時30分~15時
  • 会場…一関文化センター中ホール
  • 定員…中学生以上400人(事前申し込み不要)
臨時休館のお知らせ

11月14・15日の両日は、企画展撤去作業のため臨時休館します。

  

 

問い合わせ先
一関市博物館 TEL 0191-29-3180

 

 

(広報いちのせき 平成18年11月1日号)