世界遺産を目指して 骨寺村荘園遺跡講座 その2
イコモス現地調査終了
平成20年の世界遺産登録を目指す「平泉―浄土思想を基調とする文化的景観」に対する国際記念物遺跡会議(イコモス)の現地調査は8月27日から3日間、行われました。スリランカイコモス国内委員会委員のジャガス・ウィーラシンハ氏(52)を調査員に迎え、当市をはじめ平泉町、奥州市にまたがるコアゾーン(核心地域)の9つの構成資産を巡りました。当市の骨寺村荘園遺跡には28日午前に訪れ、市博物館での説明の後、慈恵塚や水田などを調査しました。
30日には文化庁などによる合同記者会見が市役所で行われ、同庁の内藤敏也記念物課長は「一定の理解を得たと感じる。遺産の価値を一般の方にわかりやすく伝えることの大切さを(ウィーラシンハ氏から)話された」と述べました。
イコモスは20年5月ごろに現地調査報告などを基に評価リポートをユネスコの世界遺産委員会に提出。同年7月カナダのケベックで行われる世界遺産委員会で登録の可否が審議される予定です。
ビオトープフォーラム2007inいわて 農業の継続が景観守る
ビオトープ(自然復元)フォーラムinいわて2007(同実行委員会主催、市など共催)は9月1日、本寺中体育館で行われました。地元住民をはじめ日本ビオトープ協会員、関係団体などから約400人が参加し、「一関骨寺荘園に見る自然との共生」をテーマに、講演やパネルディスカッションで活発な意見が交わされました。
本寺中生徒の鶏舞に続き、達増拓也知事が「世界に誇れる岩手の環境を目指して」と題し特別講演。吉田敏弘国学院大学教授らの基調講演の後は平塚明岩手県立大学教授をコーディネーターに、5人によるパネルディスカッションが行われました。
地元本寺の佐藤勲本寺地区地域づくり推進協議会事務局長は「水田農業の継続こそ歴史的な景観を守る手立て。課題は多いが誇りを持って暮らせる地域にしたい」と述べ、長谷川明子環境省環境カウンセラーは「本寺での水田や景観を守る取り組みが成功すれば、ほかの地域でもうまくいく」と期待を寄せていました。
骨寺村荘園遺跡講座その2 中尊寺文書と中尊寺経
中尊寺文書は、中尊寺に伝来する古文書で、中世東北における代表的な寺院文書です。国の重要文化財に指定され、その半数近くが骨寺関係文書です。
なかでも有名なのは、天治3(1126)年に書かれた「中尊寺経蔵別当職補任状案」です。藤原清衡が、紺紙金銀字交書一切経を8年かけて完成させた自在房蓮光の功をねぎらい、中尊寺経蔵の初代別当職と骨寺村の管理を任せるという内容の文書です。補任状案とは任命書の写しという意味です。
そのほかに、経蔵別当職の相伝を記した譲状や、当時の在家(※)の様子を詳しく伝えた「骨寺村所出物日記」「骨寺村在家日記」などの文書があり、中尊寺と骨寺村の深いつながりを今に伝えています。
また中尊寺には中尊寺経と呼ばれる経巻が2739巻伝わっています。すべて国宝に指定され、うち15巻が、清衡の発願で自在房蓮光が完成させた「紺紙金銀字交書一切経」です(前述)。
紺色に染められた紙に銀で線を引き、金字と銀字で一行ごとに交書された装飾経です。もともとは5300巻ほど存在したのですが、近世初頭の豊臣秀吉の時代に、そのほとんどが高野山などに持ち出されてしまいました。
そのほかの中尊寺経2724巻は、紺紙に金字のみの経巻で、二代基衡、三代秀衡の時代のものとされています。
これら中尊寺経は写経史上の白眉とされ、当時の藤原氏の経済力と平泉文化の水準の高さを物語っています。
※在家=年貢負担の対象となる屋敷と付属耕地。またはその負担者
(広報いちのせき平成19年9月15日号)