「森は海の恋人」上流と下流が共に植林 

大漁旗がはためく中行われる「森は海の恋人」植樹祭。14年間で延べ8800人が参加し、初期に植えた苗木は枝葉を広げ「森」に育った

 室根地域の中央部に位置する矢越山(やごしやま)(標高520メートル)。その矢越山を望む場所に位置する第12区自治会(小岩邦彦会長・101世帯)は、平成5年から「森は海の恋人」植樹祭に取り組んでいます。

 この植樹祭は、カキ養殖が盛んな宮城県気仙沼市の漁業者などで組織された「牡蠣(かき)の森を慕う会」の活動に賛同したもの。矢越山と室根山(標高895メートル)を源流とする大川(おおかわ)は、室根の中心部を東に流れ、気仙沼市から太平洋に注いでいます。“森を健全な状態に保つことが、海の生き物を育てる”森の豊富な栄養分が、川の水を通じて海のプランクトンを育て、豊かな海をつくることが、近年わかってきました。植樹は、大川の上流と下流をつなぐ、環境保全のための取り組みなのです。

 同会は矢越山山ろくを木の切り株から出た芽を意味する「ひこばえの森」と名付け、植樹の場として提供。毎年6月に催される植樹祭では、ブナ、ミズナラ、カエデなど広葉樹の苗木が、これまで2万8100本植えられました。近年は下草刈りなど、苗木を育てる“育樹”にも力を入れています。

 中学校の社会科の教科書に載るなど、全国的に知られるようになった「森は海の恋人」植樹祭。当初300人ほどだった参加者は、現在は首都圏など遠くからの参加者も増え、800人にもなりました。小岩会長は「植樹に参加した人たちが、環境の大切さを考える機会になってくれれば。地域の高齢化が進む今後は、矢越山にこだわらず広域的な活動に広げていきたい」と語ります。

 幅広い活動を展開する同会。6年には手作りの水車小屋「こっとんこ」を建設、今では地域のシンボルとなりました。15年には地元産木材を使った「ひこばえの森交流センター」が完成し、植樹や下草刈りなど体験活動の拠点となっています。そのほか、ほとんど栽培が途絶えていた「矢越カブ」の復活、気仙沼の海産物と地元産野菜が好評な「こっとんこ市」の開催など、多岐に渡ります。

 「食の安全、安全な食を支える豊かな環境、そして自治会の枠を越えた協力が生まれるつながりの大切さ」。今後目指す地域づくりの方向性について、小岩会長は熱く語ります。

活動メモ

「森は海の恋人」植樹祭

  • 開催日…毎年6月の第1日曜

こっとんこ市

  • 開催日…毎月第1日曜
  • 場所…ひこばえの森交流センター

 (広報いちのせき 平成19年3月1日号)