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ILCとは

国際リニアコライダーとは…

国際リニアコライダー(ILC)


 国際リニアコライダー(ILC)は、全長30kmを超える直線の地下トンネルの中に設置される線形加速器で、トンネルの中央で電子と陽電子を衝突させる実験装置です。
 この装置で行う実験により、ビッグバン(宇宙誕生直後)の状態を再現させ、宇宙創生の謎、時間と空間の謎、質量の謎の解明などにつながることが期待されています。

北上高地がILCに適している理由


 50キロメートルにわたる強固な花崗岩が分布。活断層も無い。
 実験に使う電子や陽電子は、目には見えない非常に小さな粒子です。それらを正確に衝突させる必要があるため振動が少ない固い地盤が必要です。しかも、30キロメートル から50キロメートルもの距離を確保する必要があります。ILCは、「どこにでも作れる」という実験施設ではありません。
 そんな中、岩手の北上山地はILCを作るうえで、とても良い条件がそろっている世界屈指の場所です。奥州市から一関市にかけての北上山地の地下には、とても丈夫な「花崗岩」の岩盤が、南北にヒョウタン形に延び、南側は「千厩岩体」、北側は「人首岩体」と呼ばれています。2つの岩体のつなぎ目部分が、ヒョウタンのくびれの部分に当たります。平成24年1月までに岩手県が実施した調査により、2つの岩体はしっかりとつながっていることが確認されました。さらに、平成24年12月から平成25年の春に掛けて、東北大学と共同で詳細な地質調査が実施され、いずれの調査結果も北上山地がILC建設の適地であることが確認されました。
 また、東北地方は「東日本大震災」で大きな被害を受けましたが、地中に関しては非常に安定していることが分かっています。北上山地の地下には国立天文台の「江刺地球潮汐観測施設」がありますが、この施設の装置は震災による影響を全く受けませんでした。

良好な立地環境
  1. 道路、鉄道、空港、港湾からILC衝突点、キャンパス候補地への良好なアクセス
  2. 近隣都市、既存の町などへ分散居住可能
  3. 既設インフラと民間資金を生かし、公的負担を最小化
  4. 新幹線、高速道路等陸路による東京、つくば(KEK)との良好な連携
  5. 仙台・花巻空港と成田・羽田国際空港を活用し世界中へアクセス
  6. 仙台の都市機能の活用、東北大学等多くの大学、研究機関との連携
  7. 医療、教育も十分なポテンシャル
  8. 冷涼な気候、三陸復興国立公園、スキー場、温泉、マリンスポーツ等による良好な居住環境を提供
  9. 平泉の世界文化遺産、白神山地の世界自然遺産等、歴史と文化、豊かな自然環境
  10. 安全・安心な生活環境、公害のない清涼な環境

用語集

国際リニアコライダー

 International Linear Colliderという次世代の衝突型加速器で、ILCの略称で呼ばれることが多い。次世代型のいわれは、衝突時のエネルギーを高めるため、円形型の限界を超えるため直線型にしたことによる。 円形の加速器の場合は、電子の軌道を円形に曲げる時のエネルギー損失が大きく、目標とするエネルギーに達することが出来ないので、初めて大型の直線型加速器を建設することになった。ILCは直線型加速器である。

CERN

 欧州原子核研究機構のことでスイスのジュネーブ郊外にあり、フランス国境近くにある世界最大規模の素粒子物理の研究所である。 ここにはLHC加速器があり、CERNの略称は設立準備組織のConseil Européen pour la Recherche Nucléaireの頭文字に由来する。

陽電子

 電子の反粒子のこと。陽電子は電子と逆のプラスの電荷を持っている。

ビッグバン

 宇宙の初めに起きたとされる大爆発のこと。ビッグバン理論は今から約137億年前に起こった爆発(ビッグバン)によってこの宇宙が始まり、引き続く宇宙膨張の中で、素粒子や原子、分子、星、銀河が創られたという理論。

衝突型加速器

 加速器は、電磁波などを使って粒子にエネルギーを加え、粒子を加速する装置のこと。衝突型加速器は、加速した粒子同士をぶつけるタイプの加速器で、衝突した粒子がつくり出すエネルギーのかたまりから噴出する様々な粒子を観測する。加速器で加速された粒子が速ければ速いほど、より大きなエネルギーを作り出すことができ、より珍しい粒子が生成される。

 ILCでは、電子と陽電子をそれぞれ極限速度である光速近くまで加速して、宇宙初期に迫る超高エネルギーの世界に到達する。

超伝導加速

 ある種の物質を極低温に冷やすと、電気抵抗がゼロになる「超伝導」状態が生じる。これを利用して粒子を加速するのがILCで採用されている超伝導加速方式だ。

 超伝導素材のレアメタル「ニオブ」でつくられた空洞にマイクロ波を送り込んで電場をつくり、電子や陽電子のビームを加速する。-264度C(ILCでは-271度Cで運転される)まで冷却されると空洞の内表面が超伝導状態になり電気抵抗がなくなる。電力損失や加熱が起こらないため、小さな電力・短い距離で大きなエネルギーを粒子に与えることができるのだ。

素粒子とヒッグス粒子

 現在の科学では、素粒子が世界をつくるもっとも基本的なものと考えられている。これ以上割ることができない最小の物質のことだ。標準理論に登場する素粒子は17種類。物質をつくる粒子、力を伝える粒子、そして、質量を与えるヒッグス粒子だ。

 ものに質量(重さ)があることは実はとても不思議なこと。私たちの重さは、私たちを形作る原子の中で素粒子クォークが光速で飛び回っている「運動エネルギー」だ。ところが、私たちが日頃お世話になっている電子にも質量があることがわかっている。でも、電子は素粒子、つまり中身が無い。その中に運動エネルギーを持っていないのだ。

 ではなぜ電子は質量があるのか?そこで考え出されたのが、真空の中のヒッグスによって電子が邪魔をされて動きにくくなった、と考える理論なのである。ヒッグスが本当に真空に存在するのであれば、大きなエネルギーを投入して、ヒッグス粒子をたたき出すことができる。

 これがまさにILCが目指している実験だ。

 ヒッグスは他の粒子とは全く異なる粒子だ。その特徴のひとつが「スピン」という性質を持たないこと。どうしてこんな粒子なのか? 仲間はいないのか? ヒッグスの秘密を探るためには、超高性能の加速器ILCが必要なのだ。

標準理論を超える理論

 現在、素粒子物理学で広く受け入れられている理論の枠組みが「標準理論」だ。この理論で予言されながら唯一見つかっていない最後のピースが 「ヒッグス粒子」。2012年7月4日、このヒッグス粒子らしき新しい粒子を発見した、というビッグニュースが欧州合同原子核研究機関(CERN:セルン)から飛び込んできた。

 「最後のピースが見つかったの? じゃあ、これで素粒子のことは全部わかっちゃったの?」

 いや、そうではない。標準理論はとてもよく今の宇宙を表しているけれども、理論的には多くの矛盾を持っているのである。宇宙の物理現象をきちんと理解するためには、標準理論を超える新しい理論を創らなければならないのだ。

 「超対称性理論」「複合粒子理論」「余剰次元理論」など数々の有力候補理論がある。そのうちのどの理論が正しいのか? その謎を突き止める最適な実験道具として期待されているものがILCなのだ。

ナノビームの生成・制御

 ILCのビームは、非常に薄いリボンのような形をしている。その中に電子や陽電子が100億個も入っているのだ。ビームのサイズは、衝突点付近で高さ5ナノメートル(100万分の5mm)。水素原子わずか100個程度という小ささだ。こんなに小さくするのは、ビームの中の電子や陽電子の密度を高くして、衝突の頻度を上げるため。電子や陽電子は大きさが無いくらい小さいので、100億個といってもビームの中はスカスカなのだ。

 ILCでは、このような極小ビームをつくる技術、さらにビームの衝突位置のズレをナノメートル精度に制御するという超絶技術が駆使される。

LHC

 LHCLarge Hadron Colliderの略称。ハドロンとは内部構造を持つ粒子のことで、円周27kmという大型の衝突加速器である。 LHCでは、3つのクオークの結合により成り立っている「陽子」同士を衝突させて実験を行っている。