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よくある質問

Q&A よくある質問

東北ILC推進協議会 東北ILC準備室において、皆様のILCに関する疑問にお答えするため、「ILC Q&A集」を作成しましたのでご覧ください。

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東北ILC推進協議会 東北ILC準備室より 「コチラをクリック」

目次

0 はじめに

1 ILCが目指すもの

2 加速器について

3 ILC建設・運用に関して

4 ILCの推進体制・研究所について

5 ILCの波及効果について

6 安全・環境への影響などについて

7 地域との関わりについて


はじめに

 International Linear Collider(ILC:国際リニアコライダー)とは、素粒子物理学の研究を目的とした世界最高・最先端の電子・陽電子衝突型線形加速器です。現在の計画では全長20キロメートルの地下トンネルに建設される大規模研究施設で、実験の進捗により、将来的には最大50キロメートル程度に拡張する可能性も想定されています。
 世界中の研究者が協力し、この研究施設を「世界に一つだけ」、日本に建設しようという計画が進んでいます。
本 Q&A 集は、講演会やシンポジウム、あるいは関係機関に直接寄せられるILCに関する疑問に答えることにより、ILCについてより理解を深めていただくために作成したものです。
 回答に当たりましては、一般社団法人先端加速器科学技術推進協議会のホームページなどを参考としたほか、関係する研究者の皆さまに御協力いただきました。ありがとうございました。

©Rey.Hori

1 ILCが目指すもの

1-1 ILCで何がわかるのですか?

 私たちの宇宙は、今からおよそ138億年前にビッグバンと呼ばれる「爆発」によって生まれたと考えられています。ILCは、電子とその反粒子を直線型の加速器で非常に高いエネルギーまで加速し正面衝突させて、ビッグバン直後の状態を再現しようというものです。それにより、宇宙がどのように生まれてどのように現在の姿になったのかという謎に迫ります。

 現在の素粒子理論※1は、その構築の過程で数十個のノーベル賞が生み出されたように、人類の英知の結晶と言ってよいものです。「素粒子の標準理論」と呼ばれるその理論では、すべての素粒子はもともと質量がゼロだったのですが、ビッグバン直後のある時点でヒッグス粒子と呼ばれる粒子が 宇宙全体をびっしり満たし、素粒子はそれと反応することで質量を得たとされています。今現在もヒッグス粒子は宇宙を満たしており、一様であるかぎり私たちには見えませんが、一様からの揺らぎ(波)が生じたとき、それは粒子として見えます。2012 年にそのヒッグス粒子が欧州原子核研究機構(CERN/セルン)にあるLHCという加速器でついに発見されました。

 ヒッグス粒子の発見により、標準理論のすべての粒子が出揃ったことになりますが、標準理論では 説明できない問題や謎がいくつも残されています。まず、どのようにしてヒッグス粒子が宇宙を満たすことになったのかがわかっていません。さらに、現在の理論のままでは、ヒッグス粒子の周りに他の粒子の雲がまとわりついてとてつもない重さになってしまいます。また、宇宙の全質量のうち標準理論の粒子で説明がつくのはほんの6分の1に過ぎないことがわかっており、残りは「暗黒 物質」と呼ばれていますが、それは、そのような未知の粒子を含む新しい理論があることを示しています。

 重要なのは、これらすべての謎に関してヒッグス粒子が鍵を握っているということです。例えば、最初の二つは直接ヒッグス粒子に関する謎ですが、それらを解決する新理論には「暗黒物質」の候補を含むものが多くあります。さらに、それらの新理論にも標準理論のヒッグス粒子に対応する粒子がありますが、その性質が現在の理論の予想からわずかにずれていて、そのずれ方のパターンが理論によって少しずつ違っています。

 ILCは、ヒッグス粒子を大量に生成して高感度で測定するために最適なエネルギー※2で電子とその反粒子を衝突させ、ヒッグス粒子の生成反応を精密に測定しヒッグス粒子の性質を解明します。それによって、どの新理論が正しいか、またはこれまで考えられたことのない理論ならばそれがどのような理論なのかがピンポイントでわかります。さらに、ILCの感度の高さゆえに、LHCで見つからなかった全く予想外の新粒子が見つかる可能性もあります。

 ヒッグス粒子の発見は、素粒子物理の完成を意味するのではありません。電子や原子核の発見が素粒子物理の幕開けとなったように、標準理論を超える素粒子物理の新時代の幕開けを意味しています。そして、ILCはその素粒子物理学の新時代を牽引する研究施設なのです。

※1現在知られているすべての素粒子と、それらの相互作用を記した理論。標準理論に現れる素粒子では全宇宙のおよそ5%しか説明できない

※2衝突エネルギー250GeV(ギガ電子ボルト)がヒッグス粒子の測定に最適だと言われています。そのため、ILC計画は「ILC250 ヒッグスファクトリー」とも呼ばれています。

1-2 セルンのLHC があるのに、ILCが必要なのですか?

 ヒッグス粒子を発見したLHCは陽子と陽子を衝突させる装置です。陽子はクォークとグルーオンからなる複雑な構造を持った粒子です。それに対して、ILCは内部構造のない電子とその反粒子を衝突させるので、雑音事象が格段に少なく、見たい反応を非常にクリーンに見ることが可能です。一般に、LHCでは大きな衝突エネルギーを作り出すことが出来ますが、複雑な構造を持った陽子同士を衝突させるので、目的とする新しい現象を探し出すことは容易ではありません。これに対し、ILCでは衝突によって引き起こされる新しい反応過程を同定しやすく、素粒子の性質のより精密な測定が可能で、また新粒子を高感度で捉えることができます。

 LHCは今後も高度化されて少なくとも2030年代後半まで運転される予定ですから、ILC はその高度化されたLHCと比較されなければなりません。ヒッグス粒子の精密測定に関しては、ILCの能力は高度化された究極のLHC数十基が同時に稼働していることに相当します。また、LHCでは約百万個のヒッグス粒子が生成されて初めて発見されましたが、ILCではほんの一握りのヒッグス粒子が生成されれば見つけることができます。もちろんヒッグス粒子は既に発見されましたが、ILCの新粒子発見の感度の高さを物語っています。

 高いエネルギーまで到達可能なLHCと、新しい反応を高精度で高感度に調べることのできるILCは互いに相補的な関係にあり、ともに補い合うことで、ヒッグス粒子の発見によって幕が開いた素粒子物理学の新時代をより実りあるものにすることができると考えられています。

1-3 もしLHCで、ILCでは届かないエネルギーに新粒子が見つかればどうするのですか?

 まず、ヒッグス粒子の精密測定によって、その新粒子がどのような新理論に属しているかがわかります。それによって、発見された新粒子以外の新粒子がどのエネルギー領域にあるかが示唆されます。それらの新粒子の中にはILCのエネルギーの範囲内に見つかるものがあるかもしれません。その場合はその粒子に焦点をあててILCで探索します。ILCの感度が高いため、LHCで見つかっていなくてもILC見つかる可能性があります。

 LHCで発見される新粒子、またはヒッグス粒子の精密測定によって確立される理論が予言する新粒子が、ILCのエネルギー超えたところにあれば、ILCのエネルギーを当初の計画より高度化することが考えられます。ILCは直線型であるために放射光によるエネルギー損失がなく(2−2参照)円 形の加速に比べてエネルギーの増強がはるかに容易です。

2 加速器について

2-1 加速器とは何ですか?

 加速器は、電場や磁場を使って電気を帯びた粒子を加速してエネルギーを与える装置です。素粒子物理学など基礎科学研究を進める実験をするのに欠かせないものですが、私たちの生活の中にある蛍光灯や電子レンジなども電気エネルギーによって粒子にエネルギーを与える加速器の仲間です。また、医療分野では、がんなどの早期発見に利用される陽電子放出断層撮影装置(PET)や、がん治療に用いられるX線や粒子線治療装置などに利用されています。加速器によって作られる大輝度の光による物質構造の極限計測から、新薬や高機能材料の開発も行われています。
 素粒子物理学の分野では、加速によって高エネルギー状態になった粒子を衝突させることで宇宙の始まりに近い状態を再現し、そこでの素粒子反応を調べます。

2-2 円形加速器と直線型加速器の違いは何ですか?

 従来の大型加速器は、そのほとんどが円形です(サイクロトロンやシンクロトロン)。円形の加速器なら粒子を何周も加速させることで大きなエネルギーをもたせられるからです。一方で、円形加速器で粒子を加速する場合、粒子を円形軌道に閉じ込めるために磁場で曲げる必要がありますが、その際に、粒子が光を放出して(この光を放射光といいます)エネルギーを失ってしまうため効率的な加速ができません。高エネルギー加速器では、この放射光によるエネルギー損失を抑えるために、陽子のような重い粒子を用います(重い粒子ほど放射光放出が少ない)。しかしながら陽子はクォークからなる複合粒子であり、高エネルギー陽子の衝突反応は複雑で、目的とする稀な反応事象の探索は容易ではありません。
 ILCのような加速器を直線状に配置した直線型加速器(線形加速器)は、放射光によるエネルギー損失の影響が無く、素粒子である電子や陽電子を効率的に加速、衝突させることができ、クリーンな素粒子反応が得られます。そのため、目的とする反応事象の検出感度が高いという優位性を持っています。一方で、円形加速器と違って、加速された粒子の衝突機会は一度だけであるため、粒子ビーム軌道の安定性やビーム粒子の密度を上げる必要があります。

3 ILC建設・運用に関して

3-1 ILCは日本に建設されるのですか?

 ILCは巨大な加速器で、建設コストも大きいため、2004年に国際的研究者コミュニティのICFA(国 際将来加速器委員会)では、世界にひとつだけ建設することを合意しました。
 2012年に日本の研究者から日本がホストすることを提案し、欧米から支持されました。
 2013年に国内の研究者によるILC立地評価会議がILCの国内候補地として岩手県南部から宮城県北部の北上山地(北上サイト)を最適とする評価結果を公表しました。
 2017年11月、ICFAは、素粒子物理学の最重要課題であるヒッグス粒子の精密測定を第一の目的とした加速器長20km、重心系エネルギー250ギガ電子ボルトでのILC 計画を承認しました。これにより、建設コストは従来より最大40%削減されることとなりました。
 文部科学省では、2014年にILC建設に伴う諸課題を検討する有識者会議を設置し必要性などの検証を行っていましたが、この計画見直しに伴い、さらに検討を行い報告がまとめられました。それを踏まえ、文部科学省では、建設場所も含め、ILC計画について「慎重に検討していくことが必要」としています。
 なお、欧州では、素粒子物理の次期5か年計画の検討が2019年から始まるとされており、この時期までに日本政府からILC誘致に関する具体的な方針が表明されなければ、欧州はもちろん、他の地域も含めた国際的な支持が得られなくなる可能性もあるとされています。

3-2 ILCはどこに建設されるのですか?

 ILCは巨大な加速器で、建設コストも大きいため、世界にひとつだけ建設することになっています。これまでに、日本を含む世界各地(米国のシカゴ、スイスのジュネーブ、ロシアのデュブナなど) でILC建設が検討されてきましたが、現在では、世界の研究者コミュニティの建設候補地は日本の北上山地のみとなっています。
 文部科学省では、ILCに関する有識者会議を設置して日本誘致について本格的に検討を行っています。また、欧米の研究者コミュニティからも日本でのILC建設をサポートするとの公式声明が出されています。ILCを建設するには、しっかりとした固い岩盤があることが理想的であり、日本国内では、研究者による評価で北上山地(北上サイト/岩手県・宮城県)が最適な場所だと発表されています。
 北上山地には約50キロメートルにもおよぶ固く安定した花崗岩帯があり、活断層も見つかっていません。日本で地盤の常微振動が最も小さな地域です。国際的な研究組織では北上サイトに限って検討を進めております。

3-3 建設スケジュールはどうなっていますか?

 現在、国はILCの誘致について様々な角度から慎重に検討しています。その結果を受けて、2018年までに日本へのILC誘致可否について最終決定がなされる可能性が高いとされています。その後、建設のための準備が行われ、2020年代前半から約10年かけて建設され、2030年代初めに運用が開始される予定です。

3-4 建設費はいくらですか?

 2017年11月、ICFA(国際将来加速器委員会)は、これまでの約30キロメートルの計画を見直し、加速器建設コストを約8,300億円から最大40%削減できる20キロメートルのILC計画を承認しました。これによりILC 加速器本体の建設費は5500億円程度となる見込みです。
 このほか、世界各国の研究機関が費用分担する測定器関係は約1000億円と見積もられています。ILCは世界中の国が参加する国際共同プロジェクトですので、費用も参加する各国が分担することになります。研究者の想定では、ILC本体のうち、トンネル・設備などの土木・設備工事費は日本が負担し、加速器などはアジア、北米、欧州の三極がそれぞれ三分の一ずつ負担することとしています。また、測定器関係はそれぞれの研究グループが資金を分担し負担することを想定しています。これらホスト国を含む各国の分担については、国際協議によって決定されることになります。

3-5 なぜ岩手・宮城なのですか?

 ILCの建設には、活断層のない固い安定した岩盤が必要で、その条件を満たすのが北上山地です。岩手県奥州市・一関市から宮城県気仙沼市にまたがるエリアは、強固で安定な岩盤である花崗岩が分布しており(工事リスクが小さい)、電子・陽電子ビームの高精度制御に対する地盤の常微振動や人工振動の影響も少なくILC建設に最適な場所となっています。また、ILC最寄りの市街地へは東京からも新幹線で2時間程度であり、東北の中核都市・仙台や盛岡、大船渡港などの重要港湾からのアクセスもよいことから、建設候補地となっています。

3-6 ILCのトンネルは、どれくらいの深さの場所に掘るのですか?

 現在の計画では「海抜高約110メートル位の山腹」を想定しています。建設候補地はなだらかな丘陵地帯が多く、場所によって「地上からどれくらいの深さの場所にトンネルがあるのか」が異なります。例えば、海抜500メートルの山の場合では地面から約400メートル掘り進んだ場所になりますが、川などが流れている海抜 150 メートルぐらいの場所であれば、地面から約 50 メートル下の位置になります。
 奥州市や一関市の中心市街地がある北上川周辺の標高はおよそ30メートルから50メートル程度(奥州市役所は標高52.7メートル、一関市役所は標高30.9メートル)ですから、ILCのトンネルはそれよりも高い場所に掘られることになります。

※北上山地の地質断面図

3-7 事業負担として、地方自治体への影響はあるのですか?

 ILCは国際プロジェクトで各国の協力、負担で整備されます。北上サイトに整備される場合、日本政府が各国に協力を呼びかけます。地方の負担の有無は関係してきません。ただし、取り付道路や上下水道整備などの基礎的インフラ整備が地域住民など広範に及ぶ場合や、周辺環境を整備してILCを活用した独自の地域振興を進める場合には地方負担も発生すると考えられます。
 また、文部科学省のILCに関する有識者会議の報告書※4では、具体的な生活環境要件及び社会基盤要件の中には、公共施設や公共サービス等が必要となるものもあるため、ILCサイトの立地及び周辺自治体等による支援が不可欠であるとし、経費分担に関しても、ILC研究所と国・自治体の国内分担、参加国の国際分担の可能性とともに整理する必要がある、とされています。
 このことから、生活環境や周辺社会環境等の地方負担については、今後、ILC計画が具体化する中で検討されていくものと考えられます。

※4:国際リニアコライダー(ILC)に関する有識者会議「体制及びマネジメントの在り方の検証に関する報告書(平成29年7月28日)」

3-8 ILCの建設に必要となる費用を震災復興に充てた方が良いのではないでしょうか?

 震災復興財源は国の復興期間の10年間に特別に措置され、震災復興に直接的に結びつくものに措置されます。
 ILCは、東北に留まらず全国に波及効果が及び、震災から立ち直り、世界に開かれた地方のモデルとして、地方創生や、真の震災からの復興、新しい東北の実現にもつながると考えられ、国として検討の上、別に用意されるものと考えています。
 なお、岩手県では ILC は東日本大震災からの復興に資するとして、震災直後の国の復興構想会議な どで「TOHOKU 国際科学技術研究特区構想」として、その実現を訴えてきたものです。

3-9 ILCはどのくらいの電力を使うのですか?

 ILCの電力使用量は、第一期(約20キロメートル加速器)の運転で12万キロワット、30キロメートル延伸時で16万キロワットとなっており、現状の電力供給で十分まかなうことができると確認されています。(東北電力の電力最大供給量約1,500万キロワットに対して約 1%)
 また、ILCは、電力供給が多い夏期や厳冬期は稼働を停止(メンテナンス期間を兼ねる)する予定 であり、これ以外の時期でも、電力不足が予想される場合には、随時運転を停止するなど、地域の電力が不足するようなことが無いように計画されています。

4 ILCの推進体制・研究所について

4-1 どのような体制でILCの研究開発を推進しているのですか?

 2012年末まで、加速器の開発に関しては、国際将来加速器委員会(ICFA)の下で、国際共同設計チーム(Global Design Effort: GDE)が中心となって、また、測定器と物理研究は ILC物理実験管理組織(RD: Research Directorate)が中心となって研究開発が進められてきました。
 2013年2月に、ICFAの下に世界のリニアコライダー研究に関する全ての活動をカバーする新組織 リニアコライダー・コラボレーション(LCC)が発足し、GDEとRDの活動を引き継ぎました。このように、ILC は、国際チームがその建設や運転を管理・運営していきます。

4-2 研究はいつまで行われるのですか?

 ILCは第一期(約20キロメートルの加速器)で約20年間運転する予定です。その研究を進めていく中で、新たな発見や新しい疑問が発生したときは、さらに実験が継続していくことになり、長期にわたり研究所は維持されていくと考えられています。
 例えば、セルン研究所は運用開始から約60余年がたった現在でも稼動し、さらにこの先の長期的な実験も計画されています。他にも世界には大きな加速器を持つ素粒子物理学の研究所があり、いずれも数10年以上研究が続けられています。
 ILCも日本はもちろん、世界の国々から集められたお金で作る施設ですから、長年にわたって大事に使われていくことになります。

4-3 ILCができるとどういう人が集まってくるのですか?

 ILCに直接関係する研究者・技術者や家族が集まるのは当然ですが、その他にもILCで行う研究や実験の成果を利用して、さまざまなものに応用しようとする研究所や会社が、周辺地域に進出することが予想されます。また、ILCの施設をメンテナンスする会社、外国人の研究者家族のためのサービスを提供する会社など、いろいろな会社やそこで働く人たちが集まってくることも考えられます。もちろん、外国人だけでなく岩手県や東北以外の日本各地からも多くの人が集まると見込まれています。

5 ILCの波及効果について

5-1 ILCの推進は科学技術分野にどのような影響がありますか?

 ILCで用いられる加速器は、最先端技術が結集した精密な装置です。ILCを実現することで、関連する技術が進歩し、それにより、加速器に関わる多くの科学・産業分野(医療・生命分野、新機能 材料の創出、情報・通信、計測、環境・エネルギー分野など)に発展をもたらすことが期待されます。

※加速器関連分野への波及効果

(一般社団法人東北経済連合会パンフレット「国際リニアコライダーが日本を変える」より)

5-2 ILCの波及効果はどのように見込まれていますか?

 科学技術立国としての日本の存在意義を示すことができる、日本から世界的成果を生み出すことで国民の誇りや世界から尊敬される国となり得る、ものづくり日本の再生、次世代人材の育成等々、大きなメリットがあるものと考えます。
 また、直接的な波及効果としては、施設整備の土木・建設工事、施設周りの機械、給水排、空調等の工事をはじめ、観測・監視システムや各種制御関連の事業や大型施設、機器の輸送等による物流関連にも効果がおよびます。
 研究では、その成果が世界の科学の進歩に大きく貢献するほか、関連技術で医療や生命科学、新機 能材料、通信、計算機分野等で新たな技術開発や製品開発が期待されます。
 将来を担う子どもたちにとっても、世界中の優れた研究者が国籍や宗教、人種を超えて集結しますので、岩手に居ながらにして世界と直接触れられる、最先端の研究を体感できるなど他地域にはない環境ができますので、多くの刺激を受けること、視野が広くなること等が期待されます。

5-3 ILCの経済波及効果はどの程度ですか?

 文部科学省によると、約20キロメートルのILCを建設した場合(加速器建設費5,200~5,800億円、測定器建設費1,000億円)の日本負担額は2,800~3,200億円と試算されています。また、建設10年・運用10年の20年間の最終需要(直接支出)は約7,000~7,600億円で、これに技術開発による経済波及 効果(付加ビジネス)が約5,200~5,800億円発生することから、直接効果は約1兆2,200~1兆3,300億円と試算されています。
これにより生産誘発額(経済波及効果)は、約2兆3,800~2兆6,100億円と見込まれています。
出典元:「国際リニアコライダー(ILC)計画に関する経済的波及効果の再計算結果報告書」(平成30年5月、 株式会社野村総合研究所(受託者))
 さらに、わが国全体には加速器関連技術の発展・利用による産業の波及効果が、ILC近傍地域では住宅・オフィス・商業施設・ホテル等建設による商圏ビジネスの民間投資と研究者等の日常消費と観光・学会支出など多くの効果が見込まれます。

※経済波及効果 俯瞰図

5-4 一極集中の開発になるのではないですか?

 研究施設は実験エリア周辺に整備されますが、付帯施設はオールジャパンで計画されるとともに、産業支援施設や関連産業の立地は広範囲になると想定されます。
 また、研究者等の居住エリアは、研究者のライフスタイルにより広範囲に及ぶと考えられます。このように、ILC立地の効果は、東北のみならず日本全体に広がると考えられています。

6 安全・環境への影響などについて

6-1 2013年にJ-PARCの加速器施設で事故が発生しましたが、ILCでも事故が起きる可能性があるのですか?

 茨城県東海村のJ-PARC(大強度陽子加速器施設)では、内部構造を持つ比較的質量の大きな「複合粒子」である陽子を金でできた標的に衝突させ、そこで生成される粒子を用いた実験を行っています。衝突させるもの同士が、比較的大きな質量を持つと、その衝突によって標的の中には原子核の同位体が生成され、その中には多くの放射性同位体(放射性物質)も含まれます。
 J-PARCの事故では装置の誤作動により過大なビーム電流が流れ、金の標的一部溶融したものと考えられています。さらに、標的が容器で密閉されていなかったため、放射性物質が実験室に拡散しました。重大事象と認識されず、フィルターがない排気ファンをまわすという操作により外部にも漏洩しました。
 ILCにおいて、直接ビーム照射を受けるものには陽電子標的とビームダンプがあります。陽電子生成の方法として、アンジュレーターという装置で発生させた光を標的に照射する方法と、直接電子ビームを照射する方法が検討されています。いずれも過度な熱負荷とならないように設計され、異常がある場合はビームが停止します。さらに陽電子標的は真空容器内に密閉された構造となっており、万が一に標的が溶融するような想定においても放射性物質が外部に拡散することはありません。ビームダンプも同様の構造としています。
 このように、ILCではJ-PARCと同様の事故が発生する可能性は非常に低いと考えていますが、あらゆる事態を想定し検討を重ね、どのような場合でも確実に対処できるように世界の研究者と協力して最大限の注意を注ぎます。
 ILCの国際共同設計チームは、2008年に基準設計報告書を発表しましたが、報告書の作成にあたっては、世界のどの国に建設されるか未定であることから、こうした考えを盛り込み、建設可能性のある全ての国の規制/法令に基づいて設計が行われました。
 万が一事故が起こったときに備えて、放射性物質の外部への放出を最小限にするように、設備、管理体制を構築します。管理・連絡体制の構築、運用方法の確立、事故時の対処等については、準備段階からあらゆる方面の理解と合意を得ながら検討を進めることになります。

6-2 ILCの運転中には放射線が発生するのですか?

 ILCの加速器トンネル内は、加速器の運転中にビームが加速器を構成する物質などと衝突したときに放射線や、放射能が発生する場合があります。したがってトンネル内は放射線管理区域として厳重に管理されます。ただし、放射能の新たな発生は、加速器の運転停止とともに停止します。
 また、ILCの衝突点では「電子」と「陽電子」が衝突しますが、その衝突反応の結果、新たな素粒子が発生します。ただし、測定器及び地下の実験室を取り囲むコンクリートや岩盤で止まってしまい、外(地上)に出ることはありません。陽電子標的とビームダンプは最も放射線が多く発生する場所ですが、専用の遮へい体をおいて周囲への影響を抑えます。ILC加速器の大部分を占める主加速器では、ビームの衝突が無いので、これによる放射線が発生することは少ないです。

6-3 発生した放射性物質が外に漏れ出すことは無いのですか?

 加速したビームが金属や水に衝突する陽電子標的とビームダンプでは放射性物質が生成しますが、ILC加速器の大部分を占める主加速器では、放射性物質が生成されることは少ないです。ILCでは 放射性物質が外に漏れ出すことが無いように設計・管理・運用されます。ビームダンプでは、実験で使い終わった電子や陽電子のビームを水で止めますが、この水の中にトリチウムが生成します。このビームダンプの水は地下のビームダンプ室内の配管中に閉じ込められ、二次冷却水(非放射化 水)とは熱交換器を挟んで分離します。このビームダンプ室内の水や空気は特に厳重に管理されます。ビームダンプ容器は金属製でその部分も放射化が生じますが、固体なので放射性物質が外に出ることはありません。
 主加速器では、ビームの衝突が無いので、トンネルの空気は放射性物質を含みませんが、念のために、地下からの長いアクセストンネルまたは排気ダクトを経由し、放射性の塵埃を捕集できる排気フィルターを通して排気します。排気中の放射能濃度は空気モニターにより監視されます。一方、周辺の放射線量は放射線モニターにより常に監視されます。このような対策によりILCから放射性物質を外に漏れ出さないように運用していきます。

※検討されているILC施設の換気システム

6-4 ILCで起こる可能性がある事故には、どのようなものがあるのですか?

ヘリウムの漏洩
 ILCの高圧ガスに関する安全設計では、最悪事態として、ビームの制御機器の誤作動等による電子ビーム直射によって、加速空洞または冷却用液体ヘリウム容器部分に孔があき、液体ヘリウムが漏洩することが心配されます。この液体ヘリウム容器部分へのビーム直射を防ぐ基本対策として、コリメーターと呼ばれる障壁をビームライン上流の各所に設け、空洞および液体ヘリウム容器に直接ビームが当たることを防ぐ設計になっています。ただし万が一、なんらかの要因で容器からの液体ヘリウムの漏洩が起きた場合には、容器の外に出た−271°Cの冷たいヘリウム液が 蒸発して気体となり容積が膨張します。これによって気体の圧力が上昇すると、安全用のバルブ(蓋) が自動的に作動し、専用排気ラインまたはトンネル内に排出されます。このため、加速空洞を収納するクライオモジュール(兼真空容器)が大気圧を大きく超えて加圧されることはありません。ヘリウムは水素に次いで軽い原子なので、トンネル上部の排気経路およびダクトを通して安全に地上に排気されます。地上に排気されたヘリウムは、すぐに上空から宇宙に向けて上昇します。またヘリウムは不燃性ガスであるため、発火による爆発の心配もありません。
人の誤侵入
 また、最も気をつけなければならないことは、加速器の運転中に誤って加速器トンネルの中に人が取り残されたり、入ってしまうことです。加速器の運転中には、放射線が放出されるため、加速器トンネルは放射線管理区域として厳しく管理されます。
 現在稼働している加速器でも、教育訓練を徹底し、トンネルの出入りには加速器の稼働を不可とする個人鍵(パーソナルキー)を採用し、トンネル内には非常停止ボタンを複数設置するなど冗長性の高い安全管理(インターロック)システムを採用し、運転開始前には区域全体の無人点検を行い、安全に関するマニュアル・手順を詳細に定め、定期的に確認する等管理を徹底します。

6-5 ILCの排水処理はどのように行っているのですか

 通常の地下トンネルでは湧水が予想されます。ILCの場合、トンネルの壁は防水層に覆われて湧水はその外側を流れて直接トンネルに入り込めませんが、トンネルの下部でしみ込んでくる湧水については排水口に集め、地表まで汲み上げ、重金属が含まれていないか、放射能が含まれていないかなど必要な水質管理を行い、一部は冷却水として利用し、残りは安全を確認したうえで河川等に放流されます。
 これまでのボーリング調査では、重金属の含有量は一般的な花崗岩と同じであり、北上サイトのILC加速器トンネルが特別という兆候は見られません。実際にILC加速器トンネルが施工され、運転された場合には、前述のように検査を行い、必要な場合には、確立された方法により処理されます。また、ILCの中央キャンパス内の排水については、通常の研究施設と同様に定められた排水基準を満たしているかどうか常に検査され、必要に応じ処理等を行い、有害物質が外部に出ることがないようにします。

6-6 ILC建設による土木工事で発生する土砂処理についてどのような検討がされているのですか?

 ILCでは、加速器トンネルや地下空洞の掘削、中央キャンパスの造成により数百万立米の土砂が発生すると考えられています。これらの土砂処理については、一時的に仮置き場に集め公共事業などへの再利用を行い、それ以外のものは「ずり処理場」に埋めたてます。これらの場所については、防災面、輸送コスト、搬入出に伴う地域住民への影響、景観等の観点から、産・学・地元自治体が連携して検討を進めています。

6-7 ILCでは強力な電場や磁場をつかうということですが、危険ではないのですか?

 粒子の加速や反応よって生成した粒子の測定には強力な電場や磁場が使われますが、加速器や測定器の内部の限られた場所のみで、外部に影響をおよぼすものではありません。

6-8 ILCでは「ビッグバンを再現」すると言っていますが、危険ではないのですか?

 ILCの実験の例えとしてよく使われている「ビッグバンの再現」という言葉は「ビッグバンの少し後に起こっていた素粒子の反応を再現する」という意味です。ILCによって「ビッグバンを再び起こす」ことは不可能です。実験では、ビッグバン直後の状態での素粒子反応の痕跡を測定器で捉え、データを集めて解析を行います。

6-9 ILCでの研究でブラックホールが出来ることはありますか?もし出来てしまった場合どうなるのでしょうか?

 現在提案されているいくつかの理論によれば、加速器実験によって「ブラックホール」と同様の現象を観測できる可能性があります。しかし、その「ブラックホール」は宇宙の大きなブラックホールとは異なり、ヒッグス粒子などと同じように極めて小さく、同じように瞬時に消えてなくなるものです。
 また、高エネルギー加速器で創り出す高エネルギーの素粒子反応は、人工的につくり出すことのできる最高のエネルギーですが、このような反応は、地球の大気上でも、宇宙の至る所でも、宇宙の創成期より、数え切れないほどたくさん起こっています。ILCでブラックホールができても全く無害なことは、私たちの宇宙、地球の存在が証明しています。

6-10 ILCの運用期間(実験期間)が終わったら、ILCのトンネルは、核廃棄物の最終処分場に使われるのではないですか?

 「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律」では、原子力発電で発生する使用済核燃料に起因する高レベル放射性廃棄物の最終処分は地下300メートルよりも深い地層に埋設処分(地層処分といいます )することとなっており、海抜約110メートルの深さに設置されるILCのトンネルは、深度50~100メートルが多いなど地表に近いこと、施設の形状も埋設に適したものでないことなどから、地層処分に転用されることはありえません。
 また、法律においては、候補地選定の調査に当たり、事前に地元自治体の意見を聞き、十分に尊重しなければならないと規定され、国は、地元自治体が反対の場合には手続きを進めないとしています。これに関して、岩手県や建設候補地の自治体も核廃棄物の最終処分場への転用を認めないと明言しています。
 何より、ILCは世界の国々が協力し、費用を負担して建設・運用する国際プロジェクトで進める実験施設であり、日本が独自にその利用方法を決めることができるものではありません。なお、他の加速器研究施設の例を見ると、初期の研究目的が達成された後も新たな物理研究の目的が掲げられ施設は継続して利用されています。ヨーロッパのセルンも、建設から60年を経過した現在も新たな研究が行われています。

※地層処分施設のイメージ

(原子力発電環境整備機構ホームページより)

※地層処分による地下深部の特徴(隔離機能と閉じ込め機能)

(原子力発電環境整備機構パンフレット「知ってほしい地層処分」より)

6-11 核廃棄物地層処分の科学的特性マップからもILCのトンネルが核廃棄物の最終処分場に適しているとされるのではないですか?

 高レベル放射性廃棄物の最終処分を推進するため、経済産業省では、地域の地下環境等の科学的特性を全国地図の形で「科学的特性マップ」として提示しました。
 このマップの「地層処分に好ましい適性が確認できる可能性が相対的に高い地域」にILC建設候補地も含まれますが、このような地域は多くの都道府県にわたり広範囲に示されており、この地域が候補地となっているものではありません。

※地層処分に関する科学的特性マップ

(経済産業省資源エネルギー庁ホームページより)

6-12 ILCの技術が核廃棄物処理(ADS)の技術に利用できると聞きましたが、ILCを使った放 射性廃棄物処理が行われるのではないでしょうか?

 原子力発電所から出る使用済核燃料の半減期が長い放射性核種を半減期が短い又は非放射性核種に変換するADS(ADS:Accelerator-Driven System:加速器駆動システム)技術に関する基礎研究が、世界の様々な国で行われています。
 ILCの超伝導加速器技術はADSに応用できますが、ILCの装置をそのままADSとして利用することはできず、ADSに特化した全く異なった装置でなければなりません。また、ADSは、ILCで加速する「電子」ではなく、「陽子」を加速する全く別の施設により行われるものですので、ILCを使ってADSの実験を行うことはできません。

※ADSの仕組み

(文部科学省 原子力科学技術委員会 群分離・核変換技術評価作業部会(第2回)配布資料より)

6-13 地震が起きても大丈夫なのですか?

 常時の地震発生時には、加速器はそれを検知して直ちに停止し、その後、速やかに運転が再開される仕組みになっています。なお、現在大型加速器が稼働している茨城県も地震頻度が高い地域ですが、問題なく大型加速器を運転しています。
 超巨大地震に関して、地下施設の場合、地震の振幅は地上に比べ地下では1/2~1/4になることがわかっており、影響はきわめて小さいと考えられています。また地上施設は、震度7(阪神淡路大震災の震度)に充分耐えうる耐震設計がなされます。

6-14 落雷や地震などによって停電が発生した場合、加速器が制御不能になり想定外の放射線が発生したり、大きな事故につながったりすることはないのですか?

 加速器は、電気で稼働するため、原理的に停電になると運転が停止します。ビームが停止することで新たな放射化は起こりません。また、原子炉のように冷却し続けなければならない放射性物質はありません。したがって、原子炉事故のように制御不能となることはありません。
 一時的な停電が発生した場合には加速器が停止するのみですが、停電が数10時間におよぶ場合には、超伝導状態を得るために用いている液体ヘリウムが蒸発しないようにするための温度管理やトンネル湧水の排水ポンプ運転のための電力確保が必要となります。それらに対しては、電力供給ルートを複数にする受電システムの構築、コジェネレーション(熱併給発電)発電機の使用、自然排水トンネルの設置などの対策が考えられています。

6-15 ILC建設による地下水への影響はないのですか?

 ILCが建設される花崗岩帯は、地下水への影響は極めて少ないと言われていますが、ILC候補地に おいても、トンネル坑内湧水量の予測に有益な知見を得ることを目的とした調査を実施しています。また、着工前にあらためてトンネル掘削工事による地下水への影響を予測・評価し、必要な対策を充分に講じることとしています。

6-16 ILC建設による貴重な動植物への影響はないのですか?

 動植物への影響については、これまで基礎的な調査を実施していますが、建設準備段階において環境アセスメント調査などにより十分な調査を行い、その影響を最小限にするよう、また、重大な影響があると認められた場合には、設計の変更や具体的な対策を行うなど、環境への影響を最小にするようにします。

6-17 ILC建設による景観への影響はないのですか?

 ILCは地下トンネルを中心に建設される施設ですが、地上施設については景観に配慮することが必要となります。
 まず、地上部から数カ所のアクセストンネルの入り口が設置され、その部分の敷地には、クライストロンやマグネット、ヘリウム圧縮機の冷却水の冷却塔や液体ヘリウムの再液化装置などが設置されます。冷却水の冷却塔は水冷のため、寒い時期には水蒸気が立ち上ることとなります。これら部 分の景観への配慮については、スイス・ジュネーブ近郊のセルンの大型円形加速器LHCの例が参考になります。セルンでは、冷却塔を林間に設置したり、植樹などで目立たないように工夫しています。また、建物についても、周囲の景観に配慮した高さや配色としています。
 また、ILC研究所の中央キャンパスについては、数十ヘクタール規模が想定されていますが、開発に際しては、防災面、景観面等から十分に配慮し行われます。特に景観については、北上山地周辺の歴史・文化を大切にし、里山風景を生かしたキャンパスとすべきであるという専門家の意見が寄 せられており、国際研究所の建設に当たっては、地域からもこのような声を届けることとしています。

6-18 ILCができると送電用の鉄塔が新設されると思いますが、景観への影響や健康への影響はないのですか?

景観への影響について
 送電用鉄塔の建設は、電力会社(東北電力)が行うものですが、法及び条例を順守し、景観への影響を評価しながら計画を進めることとなります。
 具体的には、「電気設備に関する技術基準を定める省令」に適合するよう、他工作物や樹木などとの所要離隔を確保できる高さを設定し、景観法および関係市町村が定める景観条例に基づき東北電力と協議を行い、景観への影響を評価しながら計画を進めることとなります。
健康への影響について
 電力設備から生じる電磁界による健康影響については、世界保健機関(WHO)の公的見解や経済産業省(電力設備電磁界対策ワーキンググループ)の報告書などから、人の健康に有害な影響を与えることはないとされています。

(※電磁界に関する情報は東北電力のホームページをご参照ください)
http://www.tohoku-epco.co.jp/denjikai/faq/index.html

7 地域との関わりについて

7-1 ILCの建設・運用時に地元の人は何をすれば良いのですか?

 まず、ILCの価値や意義について正しく理解していただくことをお願いしたいと考えています。ILCが建設されると、多くの外国人研究者が訪れ、居住することが考えられますが、文化習慣の違う人々と同じ地域の住民として日常的にふれあいながら一緒に暮らしていくことになりますので、ぜひ温かく迎えていただければと思います。

7-2 我々一般市民の協力とは何があるのですか?

 まずは、ILC は人類が解明できていない宇宙の謎を突き止める最先端の科学の施設で あり、世界が注目する研究拠点が地元にできることを広く地域の皆さんと共に理解を深めていくこ とが大切と考えます。
そこでは、

等について、地域のみなさんと一緒になって検討を進めることが必要となります。それにより、国が安心してILC誘致に動き、施設整備後も多くの方々が来訪する、世界に誇れるエリアにすることができると考えています。
 ILCが建設されると、多くの外国人研究者がこの地を訪れ、居住することが考えられます。私たちが地域にあるおいしいものや美しい景色、伝統芸能などを再認識し、その上で世界各国からの様々な文化や歴史、習慣を持った方々を同じ地域の住民として、温かく迎える気持ちを持っていただければと思います。