防災から減災への転換と 備えの日常化を急げ

絶対を崩壊した想定外

群馬大大学院教授の片田敏孝氏は「『防災』は『想定』することだ」と話している。

例えば、震度7の大地震が発生したとか過去最大の津波が襲来したなどだ。
それに基づきハザードマップを作る。
シミュレーションする。
訓練を繰り返す。
これが防災だ。

だが、東日本大震災では、どんなに高い堤防も、頑丈な建物も、巨大地震と大津波には太刀打ちできなかった。
「絶対」と言われた世界最先端の技術を駆使した日本の防災対策は、連続して起こった「想定外」の事象になすすべもなく打ち砕かれた。

防災から減災へ

2012年は、大きな災害にも揺るがない安全で強い自治体をマネジメントすることが最大のテーマになる。

しかし、人間の想定を遥かに超えた自然の猛威は止められない。
どうしても防ぐことのできない災害があるとするならば、私たちは従来の防災とは違う視点から災害と向き合わなければならない。
つまり、災害が起きることを前提に、できるだけ被害を減らす「減災」こそ、災害に強い安全安心のまちづくりを進める大前提になる。
危機管理はリスクを回避するためにある。
災害が起きてからではなく、日頃から備えを習慣化することが大事だ。

まちは人と人とのつながりによって生まれたコミュニティーである。
人あってのまちであり、人あっての経済である。
まずは、人々の心が強い絆で結ばれた真のコミュニティー形成が急務だ。  

一関市防災フォーラム
日常の「備え」再認識

「一関市防災フォーラム」は、川崎町の川崎公民館で開かれ、市民や消防・防災関係者など約250人が「備え」の重要性を再認識した。

あいさつに立った平野和彦消防長は「大規模災害時の行動や活動を日頃から再確認することが大事。フォーラムを役立ててほしい」と述べた。

盛岡地方気象台の岩渕佳文気象情報官が「岩手県の気象災害と防災気象情報」と題して、畠山康憲地震津波防災官が「地震災害について」と題して、それぞれ講演。
岩渕氏は「一関の災害の多くは洪水。危機管理体制や能力の甘さが被害の大小に影響する」と指摘。
畠山氏は「津波の速さは陸でも数十キロ。素早い避難で自分で身を守る」と訴えた。

続いて、山目地区7-南・北区自主防災会の阿部孝行会長と藤沢第24区自治会総務防災部指導者の佐藤幸生さんの2人が事例を紹介した。
阿部会長は防災訓練、合同パトロールや防災広報紙の発行など日頃の活動を紹介したほか、一人暮らしの安否確認、給水活動支援など組織力を生かした震災時の活動を発表。
佐藤さんは「自らの手(自手)で主体的に(自主)自ら守る(自守)が自主防災組織」と語り、シナリオのない訓練の実施や企業や行政との連携など、災害時に機能する自主防災活動を紹介した。

小野寺喜與男さん 69 藤沢町西口

小野寺喜與男さん
大切なことに気付かされた。
藤沢24区のような組織が理想だ。
まずはリーダーを育て、地域を一つにまとめていきたい。

鈴木徳雄さん 64 川崎町門崎

鈴木徳雄さん
自主防災組織のあり方や意義を考えさせられた。
家庭も地域も、日頃の備えがいかに重要であるかを、あらためて認識させられた。

あいさつする平野和彦消防長
あいさつする平野和彦消防長

講演する岩渕佳文気象情報官講演する畠山康憲地震津波防災官
講演する岩渕佳文気象情報官と畠山康憲地震津波防災官

事例を発表する阿部孝行会長事例を発表する佐藤幸生指導者
事例を発表する阿部孝行会長と佐藤幸生指導者

フォーラムに先立ち参加者全員で黙とうを捧げた
フォーラムに先立ち参加者全員で黙とうを捧げた

凧揚げ震災等復興プロジェクト
日豪同じ空の下で復興を願う

藤沢町国際交流協会(高橋義太郎会長)は、国際姉妹都市オーストラリア・セントラルハイランズ市と同時刻にたこを揚げる「凧揚げ震災等復興プロジェクト」を開いた。

藤沢運動広場で3月11日、日本時間10時から行われたプロジェクトには、藤沢町の小中学生や保護者ら約100人が参加。
洪水被害を受けたセ市と震災被害を受けた当市の復興を願って、大空にたこを揚げた。

セ市は2010年末から降り続いた豪雨で11年1月、記録史上最悪の大規模洪水に見舞われた。
クィーンズランド州では、日本の2.4倍にもあたる90万平方キロメートル以上が冠水、住宅、鉄道、道路などに甚大な被害を受けた。
その2カ月後、東日本大震災が発生した。

たこ揚げプロジェクトは、両市の災害復興を願うとともに、さらに絆を深めようと同協会が企画。
それぞれ100枚ずつを揚げた。
セ市で揚げたたこには藤沢中生徒が、藤沢で揚げたたこにはセ市の生徒が復興を願って文字や絵を書いた。
セ市から贈られたたこの足には、参加者が「がんばろう日本」「希望」「夢」など、それぞれの願いや思いを書き込んだ。

「FRIENDSHIP」(友情)と書かれたたこを選び、足に「頑張ろう日本」と書き足した藤沢中3年の佐藤正樹君(写真手前左)は「原発事故などで復興が進まず、不安は多い。
でも、贈られたたこを見たら、同じ空の下、世界はつながっていると思った」と胸の内を明かす。
「Happiness」(幸福)と書かれたたこを揚げた同2年の佐藤雄真君(写真手前右)は「1日も早く(震災から)立ち直って、元気な日本を取り戻したい」ときっぱり。

高橋会長は「昨年は、両国・両市で大きな災害が発生し、互いに復興に向けて頑張っている。昨年12月、セ市の高校生が来日した際、たこにメッセージを書き込んでくれた。それがきっかけになった。復興を願って、日豪をつなぐ大空にたこを揚げた。来年は全市に呼びかけ、千人規模の凧揚げプロジェクトを行いたい」と力を込めた。

凧揚げ震災等復興プロジェクト

広報いちのせき「I-style」4月1日号