計画策定までの経緯

市は、東京電力福島第一原子力発電所事故発生による放射性物質の低減を目指し、環境省から承認を得て「一関市除染実施計画」を5月24日策定した。

計画は、市が行う除染作業に対し、国から財政支援を受けるために必要なもので▼ 11年度に実施した除染経費を国の負担にする▼12年度早々から学校などの除染を行うため、計画を12年3月末までに策定にする―として、環境省と協議を重ねてきた。

しかし、国の確認作業などに時間がかかり、同計画の承認が得られなかったことから、勝部修市長は5月7日、環境省を訪れ、除染実施計画の早期策定と除染作業の事前着手などの承認を要請した。

この計画の具体の取り組みとして、市は、5月22日から保育園など子供たちが長時間生活する施設の除染作業を進めている。

また、学校以外の公共施設も引き続き調査を実施し、除染を進めていく。
それ以外の施設や生活圏などについても早期低減の実現に向けて、市民、地域、事業所などと協議しながら取り組んでいく。

被ばく線量低減へ―。
除染作業に着手

市民が日常生活から受ける追加被ばく線量を13年8月末までに年間1ミリシーベルト以下とすることが計画の目標。
除染は、子供が長時間生活する学校などを優先して行う。
除染の進め方などの詳細は市民と相談しながら進めていく。

一関市除染実施計画の概要

除染計画を策定

市は、文部科学省が昨年11月11日に公表した「航空機モニタリング」( 11年9月14日から10月13日まで実施)で、追加被ばく線量(自然被ばく線量および医療被ばく線量を除いた被ばく線量)が年間1ミリシーベルト(毎時0・23マイクロシーベルトに相当)以上の地域があることを確認した。

市は、奥州市・平泉町と共に「汚染状況重点調査地域」の指定を受け、「一関市除染実施計画」を策定した。

除染の方針

計画では、市民が日常生活から受ける追加被ばく線量を13年8月末までに年間1ミリシーベルト以下になるように目標を設定。
追加被ばく線量は、自然被ばく線量と医療被ばく線量を除いた日常生活で受ける被ばく線量。
年間1ミリシーベルト以下は、国が示した「放射性物質汚染対処特別措置法に基づく基本方針」( 11年11月11日)に基づいた被ばく線量だ。

除染対象は、施設の利用状況と緊急に対処が必要とされる汚染の程度を勘案し、市民が日常生活で関わる場所とした(表1参照)。

図1 除染実施区域図

計画の対象区域

除染計画の対象区域(地区および施設)は、空間線量が年間1ミリシーベルト以上の区域。
「航空機モニタリング」結果と「除染関係ガイドライン」に準じ、市が測定した結果を踏まえ、決定した。
今後の調査測定結果で、新たに除染を要する区域が発生した場合は、速やかに対象区域に加えるなど計画を変更することにしている(表2参照)。

除染対象と実施主体

計画では、除染対象と除染作業を行う実施主体を次のように区分した。
(1)公共施設など…国、県、市、独立行政法人など
(2)住宅・宅地・商業施設・事業所…市、所有者
(3)道路…国、県、市、所有者
(4)その他▼農地・牧草地…市、所有者▼生活圏に隣接する森林…国、県、市、所有者

除染は、環境省が定める「除染関係ガイドライン」に基づいて行う。
そのほか▼具体的方法や作業内容▼着手から完了までの予定時期―などをまとめた。

除去土壌と廃棄物処理

除染に伴って生じた土砂などは原則、除染対象箇所内に埋設処理する。
やむを得ない事情により埋設できない場合は、仮置き場を設置することとし、埋設場所などを含め仮置き場の構造、所在地、安全管理や除去土壌などの記録・保存について、市民と協議しながら検討することとしている。

計画の見直しなど

今後の調査・測定の結果、新たに除染が必要な区域として確認された場所は、速やかに除染できるようこの計画を見直すことにしている。
また、除染状況の情報を公開することで、市民の不安を可能な限り解消できるよう努めることにしている。

表1 除染の優先順位

順位 対象 内訳
1 公共施設などのうち、学校など子供が長時間生活する場所 幼稚園、小学校、中学校、高等学校、高等専門学校、特別支援学校、保育所、児童館、認可外保育施設、へき地保育所、障がい児通所支援事業所、障がい児入所施設、地域子育て支援センター、放課後児童クラブ、放課後子ども教室利用施設、公園・広場 その他子供関連施設
2 上記以外の公共施設など 短期大学、公民館・図書館・博物館・文化会館・コミュニティセンター等の教育・文化施設、運動場・体育館・プールなどの体育施設、病院、保健センター、庁舎その他の建築物・工作物(付帯設備を含む)、その他公共施設に準ずる施設
3 生活圏

住宅、宅地、商業施設、工場、事業場、道路、その他同等の施設

4 その他 農地、牧草地、生活圏隣接の森林
*河川など
*河川の除染は今後、国から示される方針に基づき対応する

表2 除染計画対象区域

区分 地域 対象区域
地区 一関 真滝、萩荘(達古袋を含む)、舞川
花泉 花泉、金沢
千厩 千厩、小梨、清田、奥玉、磐清水
東山 長坂、田河津の一部(小田間、小沼、紙生里、袴腰、丸木、矢ノ森、束稲、黒森、田ノ萱)、松川
室根 折壁、矢越
川崎 薄衣、門崎
藤沢 八沢
施設 一関 山目小学校、赤荻小学校、一関第一高等学校、一関第二高等学校、弥栄小学校、弥栄幼稚園、一関幼稚園、八幡町保育園、山目保育園、一関藤保育園、一関南保育園、赤荻保育園、幸町保育園、たんぽぽ保育園、一関清明支援学校 山目校舎、関が丘第四児童公園、関が丘中央公園、台町公園、高崎児童公園、荻野公園、荻野西公園、松ノ木公園、幸町児童公園、十二神公園、寺前公園
花泉 老松小学校、花泉中学校、マルキの家ニコニコ託児室、紫舘公園
大東 大原小学校、渋民小学校、大原中学校、大東高等学校、砂鉄川大明神公園
東山 田河津小学校、田河津児童館
藤沢 藤沢小学校、藤沢中学校、藤沢まさぼう湖水辺公園、藤沢ほろわ湖水辺公園
※千厩、川崎は全施設が対象

問い合わせ先
放射線対策室 TEL0191-21-8331

農林産物の放射性物質濃度測定
山菜などで基準値超えるも野菜は全て不検出

2月から行っている農林産物の放射性物質濃度測定
5月までに測定した92 品目中、11検体で基準値を超えた
うち7品目に出荷制限の指示や
出荷・採取などの自粛要請が出されている

市は、2月から産直組織や生産者などの依頼を受け、農林産物の放射性物質濃度の測定(簡易測定)を行っている。

5月末までに測定した92品目1147検体のうち、一般食品の基準値(放射性セシウムの合計が100ベクレル/キログラム)を超えたものは、山菜やキノコなど11品目222検体。
その大半は出荷自粛要請などが出されている。
野菜類14品目280検体は全て不検出だった。

販売者などは、基準値の2分の1を超えた販売用検体の精密測定を県に依頼。
基準値を超えた品目には、出荷自粛などが出された。

一関産の農林産物には、5月末現在、次の要請などが出されている。 
▶国からの出荷制限の指示…露地栽培の原木生シイタケ(4月25日付)、ゼンマイ(5月16日付)、野生のセリ(5月30日付)、タケノコ(5月31日付、ネマガリタケを除く) 
▶県からの出荷・採取などの自粛要請…露地栽培の原木乾シイタケ(11年産・2月14日付、12年産・5月24日付)、野生タラノメ(5月11日付)、野生ミズ(5月16日付)

放射性セシウム134と137の合計値の結果区分ごとの検体数
品目

基準値(100 ベクレル/ kg)

以下の検体数。

( )内は、「不検出」(注1)検体数

基準値(100 ベクレル/kg)

超過の検体数

備考

穀類 40(39) 0  
大豆 27(17) 0  
青大豆  5(4) 0  
黒大豆  5(5) 0  
野菜 ネギ 43(43) 0  
ホウレンソウ 43(43) 0  
ニラ 37(37) 0  
ジャガイモ  32(32) 0  
大根 29(29) 0  
アスパラガス  22(22) 0  
キャベツ  16(16) 0  
白菜  14(14) 0  
ニンジン  9(9) 0  
タマネギ  9(9) 0  
レタス  8(8) 0  
ナバナ  7(7) 0  
ツボミナ  6(6) 0  
ミョウガ  5(5) 0  
山菜 タケノコ   101(37) 44 出荷制限の指示
フキ  94(91) 0  
ワラビ  80(76) 1  
タラノメ   32(14) 18 出荷など自粛要請
ウド  23(23) 0  
シドケ  22(21) 0  
葉ワサビ  19(16) 2  
ヨモギ  17(17) 1  
フキノトウ  14(12) 1  
コゴミ  11(4) 2  
行者ニンニク  13(13) 0  
ゼンマイ  1(1) 10 出荷制限の指示
セリ    8(4) 1

出荷制限の指示

(野生のもの)

ミズ   3(0) 2 出荷など自粛要請
ウルイ  6(6) 0  
果実 ブルーベリー  8(7) 0  
リンゴ  4(4) 0  
きのこ 生シイタケ(原木)   14(2) 140

出荷制限の指示

(露地栽培)

生シイタケ(菌床) 5(5) 0  

● 4月からの基準値(一般食品100ベクレル/ kg)に基づき区分
 (大豆類は新基準値移行に伴う経過措置で暫定規制値500 ベクレル/ kg)
●測定件数がおおむね5 検体以上の品目を一覧
 (注1)「不検出」は、検出下限値未満を示す。核種ごとに3月までは30ベクレル/ kg(20 分測定)、4月からは25ベクレル/ kg(40分測定)。
◇測定場所:南部農業技術開発センター(花泉町金沢)、北部農業技術開発センター(大東町摺沢)
◇測定機器:トライアスラーベクレルファインダー(シンチレーション放射線核種測定器による簡易測定)

農林産物の放射性物質濃度測定
申し込みは事前予約が必要

市内で生産(採取)された農林産物の放射性物質濃度の測定を無料で行っています。

測定を希望する人や団体は、電話などで事前に申し込んでください。

測定には、約1リットル(1キログラム)の測定物が必要です。
申し込み後、農政課から▶提出方法▶提出日時▶場所―などを連絡します。

測定依頼書と測定物を、指定された日時に測定場所に直接持ち込んでください。

測定結果は、農政課または支所産業経済課から通知します。

出荷自粛などが要請されている品目の測定は行っていません。
申し込みの際に確認してください。

問い合わせ先
農政課農産物流通係tel0191-21-8427、各支所産業経済課

放射線測定情報はこちらから

●市ホームページ「環境放射能に関する情報(福島第一原子力発電所事故関係)」http://www.city.ichinoseki.iwate.jp/index.cfm/1,0,157,html
●岩手県ホームページhttp://www.pref.iwate.jp/
「環境放射能に関する情報(福島第一・第二原子力発電所事故関係)」など

広報いちのせき「I-Style」 平成24年6月15日号