貝鳥貝塚(花泉地域)

貝鳥貝塚ほかから出土した、獣骨などで作られた漁労の道具と装身具類

花泉町油島地区にある貝鳥貝塚は、別名「蝦島貝塚」とも呼ばれる縄文時代の遺跡で、畑から貝殻や骨角器が出土することが以前から知られていました。初めて本格的な調査が行われたのは昭和31年。その後4回にわたり本格的な発掘調査が行われました。
貝塚とは、古代人が食べた貝類の殻などを捨てたものが堆積したごみ捨て場のこと。貝殻に含まれるカルシウムが酸性の土壌を中和し、考古遺物が保護されるため、貝塚では貝殻とともに捨てられた獣骨や骨角器なども多く出土します。
貝鳥貝塚では、多数の埋葬人骨や埋葬犬、オオタニシ、ベンケイガイなどの貝類、イノシシやシカなど、縄文時代中期から弥生期にわたる土器、装身具類、骨角器など、当時の生活を知る上で貴重な資料が多数出土しました。
とりわけ、人骨の出土数は日本有数。これまでに89体が発見されています。特に昭和31年10月に発掘、確認された人骨は、手足を折り曲げた「屈葬」の形式で埋葬され、前歯が「抜歯」されていました。
屈葬の理由は諸説ありますが、死者の再生を祈る、あるいは死者の霊が生者へ災いを及ぼすのを防ぐため、また、抜歯は成人としての通過儀礼として行われていたものと考えられており、当時の習俗をうかがい知ることができます。さらに詳しく人骨を調査すると、縄文時代中期から後期に生活し、出産を経験した30歳前後の女性であることもわかりました。
この人骨は昭和60年、県立博物館で長期保存のために乾燥剤処理が施され、現在は地区内の満昌寺に所蔵されています。
貝鳥貝塚は昭和41年3月、県の史跡に指定されました。現在、土地の所有者の好意により見学が可能となっています。

(「岩手の遺跡」(岩手県埋蔵文化財センター編)から転載)

問い合わせ先
花泉支所教育文化課
電話0191-82-2909

 (広報いちのせき平成20年2月1日号)