地域の思いが形になった駅

岩ノ下駅

残暑厳しい9月上旬、JR大船渡線「岩ノ下駅」を訪ねた。
東山町内にある4駅のうち最も一ノ関に近い同駅は、陸中松川駅と陸中門崎駅のちょうど中間にある。

今回の案内人は石川勝雄さん(83)。
同駅待合室の塗装を手掛けた左官技能士だ。
「地元の駅を造る仕事に携われて光栄だ。誇りに思っている」と勝雄さん。
同駅が開設された当時の様子を次のように振り返る。

「岩ノ下駅は請願駅。当時の村議や有権者を中心に地域を挙げて運動した。しかし、簡単には実現できず、次第に焦りが出てきた。そんな矢先、同じ請願駅の柴宿駅が開業。この吉報が不安を払拭し、地域住民を奮い立たせた」

岩ノ下に駅を―。要望活動は加速。こうして地域の願いは現実となった。

昭和41年12月1日、大船渡線「岩ノ下駅」が開設。
雪の中で行われた開通式には約200人が集まって開通を祝った。

「朝は列車を待つ人でホームがいっぱいだった。駐輪場には自転車が入りきれなかった」と当時を振り返る勝雄さん。
さらに「岩ノ下駅は地域の願いが形になった住民活動のシンボル。住民の生活の足として、これからもずっと守りたい」と胸を張る。

岩ノ下駅を出ると、上り列車は陸中門崎駅を目指す。

案内人 石川勝雄さん
元左官技能士 東山町松川字岩ノ下 

石川勝雄さん
天井の塗装が大変でした。
1時間おきに通る貨物列車の振動で作業が全然進みませんでした。
駅と待合室はいつまでもそのまま残ってほしいです。

岩ノ下駅前の風景駐輪場
左_岩ノ下駅前の風景。市が新設した公衆トイレは、8月1日から供用を開始
右_ホームの下は開業当初から駐輪場として利用されている

駅を出た上り列車プランター手入れ車窓から望む田園風景
左_岩ノ下駅を出た上り列車は大きく弧を描きながら陸中門崎駅へと向かう
中_ホームに彩りを添えるプランターの手入れは、地元老人クラブが交代で行っている
右_車窓から望む田園風景。稲刈りが始まった

広報いちのせき「I-style」10月1日号